短期と長期、どっちがお得?ワンルームマンション売却時の税金「譲渡所得」とは

(写真=Sasun Bughdaryan/Shutterstock.com)
(写真=Sasun Bughdaryan/Shutterstock.com)

不動産投資を始める前に、明確化しておきたいのは「投資戦略」です。なぜなら、投資戦略が固まっていないと、確固たる資産を築くことはできないからです。たとえば、キャピタルゲインを目標として「短期保有」で売却するのか、インカムゲインを目標として「長期保有」で家賃収入を得ていくのかを、最初に設定することは基本中の基本です。

「サラリーマン」と呼ばれる会社員・公務員の方を中心に人気を博している「ワンルームマンション投資」一つをとっても、各人の目的に応じた戦略がいくつかあります。具体的には、どのくらい自己資金を投入するのか、老後の不労所得をいつから得たいのか、保有中物件のローンに付帯される団体信用生命保険からどのくらい恩恵が得られるのか、所得税・住民税・相続税に関してどのくらいの節税額を狙うのかといった点を詰めていく必要があります。

そうすることで、どのような立地・タイプの物件を購入・所有し、どのような会社をパートナーに選ぶべきなのか、適切な投資方法が見えてきます。

(本記事は2018/11/02配信のものを2021/9/27に更新しております)

▼目次

  1. まずは不動産投資のメリットを整理しよう
  2. 短期?長期?売却時の税金を加味した不動産投資戦略
  3. 不動産売却における「譲渡所得」とは?
  4. 万が一の場合を想定した不動産投資戦略
  5. 長期保有を軸に、柔軟に対応できる戦略を立てよう

まずは不動産投資のメリットを整理しよう

では、どのようにして短期投資と長期投資を見極めていけばいいのでしょうか。大切なのは、不動産投資特有のメリットをきちんと把握したうえで、総合的に判断することです。具体的には、不動産投資には次のようなメリットがあります。

  • 長期にわたって安定した家賃収入が得られる(インカムゲイン)
  • 株式投資・FX投資・仮想通貨などキャピタルゲインを目指す投資と異なり、つねに値動きに着目しないで済む
  • 会社員や公務員など、本職が忙しい方でも取り組みやすい。
  • 団体信用生命保険の恩恵が受けられる。所有している間はずっと続くため、長期で保有するほうが団信の恩恵は大きい
  • 所得税・住民税の節税効果が得られるケースがある。購入時の諸費用や減価償却費、リフォーム費用などを経費として確定申告するが、特に購入した年は経費が大きく計上できる。そのため、給与所得の金額によっては損益通算による節税効果が大きく期待できる
  • 相続税評価額が圧縮される(約3分の1)。現金化せず保有し相続したほうが、次世代へ多くの資産を残せる可能性が高い

こうしたメリットを踏まえたうえで、短期か長期かを考えることが大切です。

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短期?長期?売却時の税金を加味した不動産投資戦略

不動産投資のメリットについて概観したうえで、売却時の税金について考えてみましょう。投資戦略を設定するうえで注意すべきポイントの一つは、売却した時の利益を表す「譲渡所得」に対して、所得税や住民税が発生することです。

・ワンルームマンション売却に関する失敗例

税金面に限らず、ワンルームマンションなどの投資用不動産売却に関する失敗例は様々です。「売却益が得られそうだから」と一見オトクに感じる高リスク物件を購入してしまった、長期保有を想定していたのに「今なら高く売れそうだ」と安易に資産を手放してしまったという方も意外に多くいらっしゃいます。このような方々は、「本来であれば達成可能だったはずの資産規模を実現できない」「将来的により多くの収益を得られるはずたったのに、その可能性を早くに捨ててしまう」という意味で「不動産投資に失敗している」といえます。

では「売却時の税金」に関する失敗例にはどのようなものがあるでしょうか。たとえば、売却時に税金が発生することを考慮せずに、ワンルームマンションなど投資用不動産を売却してしまったために、あとから支払うべき税金の額に愕然とする方が後を絶ちません。

特に多い失敗例としては、一見すると売却益が出ていないのに、確定申告時に計算してみると「譲渡所得」が発生していたというケースです。「譲渡所得」に関して正しい理解をしていなければ、所得税・住民税を支払うための資金が手元になくて困るという事態にもなりかねません。

もっとも、一定期間経過後の売却を前提として不動産投資戦略を考えた場合に、税金の面で「短期保有」にはデメリットがあります。この点は「短期譲渡所得」と「長期譲渡所得」を比較してみると明らかです。ちなみに税制上の「短期」とは、所有期間が5年以内の土地や建物を売った場合のことを意味しています。

・短期譲渡所得の税額(保有5年以下)

不動産を売却した際、譲渡した年の1月1日現在の所有期間が5年以下の場合には「短期譲渡所得」として、下記の税率が課されます。

税額=課税短期譲渡所得金額×30%(住民税9%)

「短期譲渡所得の税額の計算」国税庁

・長期譲渡所得の税額(保有5年超)

不動産を売却した際、譲渡した年の1月1日現在の所有期間が5年を超える場合には「長期譲渡所得」として、下記の税率が課されます。

税額=課税長期譲渡所得金額×15%(住民税5%)

「長期譲渡所得の税額の計算」国税庁

(注) 平成25年から令和19年(2037年)までは、復興特別所得税として各年分の基準所得税額の2.1%を所得税と併せて申告・納付することになります。

それぞれの税額を見てみると明らかなように、税額が倍くらい異なっているのがわかります。これだけ税額の差があるため、どちらが有利なのかは明確です。

不動産売却における「譲渡所得」とは?

そもそも不動産売却における譲渡所得とはどのようなものでしょうか。税制上は「分離課税」の対象として、特殊な扱いとなっているため注意が必要です。

・「分離課税」となり損益通算できない

不動産投資で得られた家賃収入は「不動産所得」として「総合課税」の対象となります。不動産所得では、購入した年の諸経費や毎年の減価償却費などを「経費」として確定申告することにより、帳簿上赤字となるケースがあります。この赤字を給与所得などと「損益通算」を行うことにより、節税となる場合があります。

一方、ワンルームマンションなどの投資用不動産を売却した際、売却益を示す「譲渡所得」は「分離課税」の対象となり、給与所得との損益通算はできません(他の不動産を売却した際の利益・損失との間では損益通算が可能)。売却時に「帳簿上の売却益」が出る場合には、譲渡所得に関する所得税および住民税の納付義務が発生します。この点には注意が必要です。

・「譲渡所得」の計算方法

譲渡所得は、譲渡収入(土地や建物といった不動産を売却して得られた金額)から「取得費」「譲渡費用」を差し引いて計算します。

譲渡所得=譲渡収入-(取得費+譲渡費用)

・「取得費」の算出方法に注意

取得費とは、不動産を購入するときの代金はもちろん、購入時の手数料や諸費用、リフォームやリノベーション等における改良費や設備費も含まれます。相続などで取得に関する費用がわからない場合、取得費が5%に満たない場合には、譲渡価額の5%を取得費(概算取得費)として計算します。

ここで注意したいのは、建物に関して所有期間中の減価償却費相当額(すでに減価償却が済んでいる金額)を取得費から除かなければならないことです。その理由として、売却した不動産のうち建物は、実際の資産価値や使用可能年数に関係なく、購入した価額から「税制上の」耐用年数(たとえばRC造は47年)で「モノの価値」が目減りすると便宜上考えているためです。

・「譲渡費用」に含まれる費用

譲渡費用には、仲介手数料、測量費、売買契約書に貼る印紙代、売却に際して借家人などに支払った立退料、建物取壊し費用など、不動産を売却するための支出が該当します。

「譲渡所得の計算のしかた(分離課税)」国税庁

万が一の場合を想定した不動産投資戦略

さらに掘り下げて、より具体的な不動産投資戦略を探っていきましょう。長期保有を前提としたうえで万が一の場合を想定すると、ポイントとなるのは「流動性の高さ」「将来の相続」についてです。

・流動性の高い(売却しやすい)立地・物件を選ぶ

長期で保有することが有利とは言え、環境の変化により売却する必要が出てくるかもしれません。その可能性を考えれば、不動産の価値を左右する要素として「流動性」が重要なのは間違いありません。つまり、売却しやすい立地・物件を選ぶのがポイントです。具体的には、地方よりも東京都心、一棟物件よりも区分所有マンションが狙い目となります。そのような不動産を積極的に狙うようにしましょう。

・将来の相続を想定する

また、長期保有を前提とする場合には「将来の相続」についても考慮に入れておくことが大切です。相続時のトラブルを未然に防ぐために、分けやすく、売却しやすく、将来的に安定した収益が見込めるものを選ぶのがオススメです。そして、そのような条件に該当する物件と言えば、区分所有形態のマンション、なかでも東京都心のワンルームマンションです。このような理由から、相続を想定しておくべき長期保有の不動産投資では「東京都心の区分所有ワンルームマンション」が戦略的に有利といえます。

【参考記事】家族・親族のためにまずは知っておこう!相続が「争族」になる原因

長期保有を軸に、柔軟に対応できる戦略を立てよう

不動産投資のメリット、そして譲渡所得という不動産にまつわる税金を前提として考えると、より戦略的に最適な物件の条件が見えてきます。

あとは、そのような条件から具体的な物件を絞り込んでいくことが重要です。その際には、投資する資金と物件価格のバランスはもちろん、ぜひ長期保有を前提とした計画を構築してみてください。その結果、自分に合った戦略的な不動産投資が実現できることでしょう。

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