初心者の知るべきメリット(6)

不動産投資が節税になる仕組みとは?所得の高い人ほど効果大?!

(写真=Jirsak/Shutterstock.com)
(写真=Jirsak/Shutterstock.com)

毎月納める所得税と住民税の額をみて、うんざりしたことはありませんか。日本の所得税および住民税は累進課税になっており、所得が増えるほど税負担が大きくなります。

ここで、「不動産投資は節税になる」という話を聞いたことがある人もいるかもしれませんが、それはマンション経営といった不動産投資を行うと赤字が出た際に総所得において損益通算でき、確定申告することによってサラリーマンなら所得税の税金還付が可能となる場合があるからです。それはどのような仕組みなのでしょうか。初心者こそ知っておきたいその大きなメリットや発生する税金についてみていきましょう。

(本記事は2017/10/22配信のものを2022/12/27に更新しております)

▼目次

  1. 日本では年収800~1200万円なら手取りが大きく増えない?
  2. 不動産投資は初年度が赤字になりがち、かつそこで一気に還付される
  3. ちょっと深堀り:不動産投資で発生する税金の時期と種類とは
  4. 「購入」したときの税金は大きく4つ
  5. 「保有」している時にかかる税金は2つ
  6. 「売却」したときの税金
  7. 税金は必要経費として考える
  8. もし年収800万円のサラリーマンが2,000万円のマンションを購入したら
  9. 2年目以降は効果が薄れるが持続させるためには

1. 日本では年収800~1200万円なら手取りが大きく増えない?

1-1. 手取りの増えない年収ゾーンの存在

日本の税制度は、前述した累進課税制度により、給料がアップしても社会保険や税金を含めた天引きされる控除金額が増えるだけで一向に手取りが増えない、という現象が起こることがあります。特に、仕事をがんばって年収800万円~1200万円前後になった場合に、この状態に陥りやすいのです。

1-2. 不動産投資が節税に有効な一番の理由

だからこそなんとかして節税する方法はないかと考えたくなります。そこで一つの方法として「不動産投資」があります。まず、不動産投資は事業であることから当然確定申告を行うことを前提としています。不動産投資で扱われる所得は不動産所得となることから、給与所得と不動産所得は確定申告の税務上、損益通算することが可能です。

1-3. 税金還付を受けるための所得税の確定申告スケジュール

つまり、本業で多大なる所得税を納めている場合、不動産投資で(手出しの支出の有無関係なく)赤字がでたら、その分を損益通算し確定申告することで、給与所得で納めた税金が還付されるのです。

通常は、給与所得と不動産所得があった年の翌年3月15日までに所得税の確定申告し、指定の口座に税金を還付してもらうことができます。もちろん、土日休日が重なる場合もあることから、期限は3月15~17日のどこかになることが通例です。よって、確定申告するよりもかなり早い段階から毎年期限を確認するようにしておきましょう。
(※令和1年(2019年分)の確定申告の提出期限は新型コロナウイルスの影響のため2020年4月16日まで延長、かつ国税庁から「個別に期限延⻑の取扱いを⾏う」「4月17日以降も柔軟に確定申告書を受け付ける」との追加発表が行われています。)

2. 不動産投資は初年度が赤字になりがち、かつそこで一気に還付される

不動産投資は、初年度は赤字になりがちです。物件購入費用に加えて、諸費用がかかるからです。仲介手数料、司法書士費用、そしていくつかの税金などがかかります。

2-1. 仲介手数料で掛かる金額の目安

またここでは、仲介手数料の目安についてご紹介します。まず仲介不動産会社を介して不動産を購入する際、仲介手数料が発生します。この仲介手数料は不動産会社に動いてもらうためのもので、売主と買主の橋渡し役としての手数料のようなものです。

主に、不動産の契約手続き(書類の作成、日時の段取り)、金融機関のローンの斡旋、決済手続き、登記手続きのための司法書士の段取り等、その他交渉役としての手数料となります。

仲介不動産会社は通常自社が所有していない不動産を取扱うので手数料が発生します。一方で、不動産会社が売主の場合には仲介手数料は不要となり、費用を抑えて不動産を購入できる可能性があります。仲介手数料は物件価格の3%+6万円に消費税を加えた金額となります。(400万円以上の物件の場合)参考までに2,000万円の物件ですと約70万円です。

2-2. 多くを経費として初年度で計上し税金の還付が可能に

仲介手数料以外のものは、実は経費として不動産所得から引くことができるのです。つまり、初期の費用が大きく膨らむことから、初年度はとくに赤字になりがちなのです。

このような理由から、たとえ空室期間が全くなく毎月しっかりと家賃が入っていても、初年度の収支計算をすると赤字になる傾向が強いのです。そして、給料から源泉徴収されていた所得税が還付されるなら、こんなにうれしいことはないでしょう。しかも、住民税は所得金額によって決まりますので、損益通算で所得が下がれば住民税も下がっていきます。

3. ちょっと深堀り:不動産投資で発生する税金の時期と種類とは

さて、上記の「いくつかの税金」についてもっと理解されたい方もいらっしゃるでしょうから、ここではその税金について深堀して解説します。まず、不動産投資の税金は、「購入」「保有」「売却」の3つの時期にそれぞれ発生し、各時期によってその種類があります。

4.「購入」したときの税金は大きく4つ

1)印紙税

契約した金額に応じて、契約書等に印紙を貼付して納税する形となります。これを貼付していないと納税していないことになりますので注意が必要です。

2)消費税

例えば不動産会社から購入をする場合は、購入代金を課税標準として消費税がかかります。土地は非課税なので、マンションを購入した場合でも土地に消費税はかからず、建物が課税対象となります。

3)登録免許税

土地建物等に関連する登記をする際に登録免許税が必要となります。所有権に関する登記を行う際に、その固定資産税評価額に、所定の税率を乗じて税額を算出することとなります。所有権の移転登記は土地が1.5%(2021年3月31日まで ※通常は2%)、建物が2%で、固定資産税評価額に対して課せられます。この登録免許税の納税は登記を申請するときに行います。

4)不動産取得税

不動産取得税とは、不動産を取得したときに支払う税金です。原則として固定資産税評価額に税率4%を乗じた金額が税額となります。新築でまだ固定資産税評価額がつけられていない建物の場合には、都道府県知事が固定資産税評価額を算出する基準に基づいて、建物の評価額を計算することになっています。

・購入時の税金への軽減処置は要チェック

上記の登録免許税のように購入時の税金に関しては、購入時期により軽減措置が適用される場合がありますので、しっかりとチェックしていくことが重要となります。軽減措置があるにもかかわらず、その恩恵を享受しないのは大変惜しいので見逃さないようにしましょう。

参照:国税庁 登録免許税の税額表 不動産等の登記

5.「保有」している時にかかる税金は2つ

晴れて不動産を取得して、不動産投資を行っている最中にも税金が必要となります。保有時の税金の第一は、固定資産税、都市計画税です。

1)固定資産税

固定資産税とは、1月1日現在で土地、家屋、償却資産を所有している人が納める税金です。原則として、3年に1度評価替えされる固定資産税評価額に対して所定の税率を乗じて計算されます。標準税率は1.4%ですが、これは市町村が独自に1.4%以外の税率を定めることができるため、地域によって異なる税率となっている場合があります。

2)都市計画税

都市計画税とは、1月1日現在の土地・家屋の所有者に、課税される税金です。税率は0.3%を上限として、市町村ごとに定められます。

・売買時は買い主が日割り分を負担

固定資産税、都市計画税については、上記のとおり1月1日現在の土地・家屋の所有者に納税義務が発生します。しかし、通常不動産売買等取引は、年の中途で行うことがほとんどであるため、固定資産税、都市計画税の日割り部分を買主が負担し売主に対して支払うということが一般化されています。また、先述した固定資産税、都市計画税は、購入時の税金でもあるともいえます。

6.「売却」したときの税金

不動産投資を行ってきたが、現金化したい、次の投資に回したいという場合などの不動産売却時には譲渡所得税がかかります。売却した金額と購入した金額の差額、その他経費を差し引いた規定に沿って税額が決定します。

不動産は保有期間が5年を基準に短期か長期かで売却時の適用税率が以下のように変わってきます。売却して譲渡益が出るようならば、特に保有期間には注意が必要となります。

・保有期間5年超(長期譲渡)

保有期間5年超の長期譲渡所得の際の税率は20.315%

・保有期間5年以下(短期譲渡)

保有期間5年以下の短期譲渡所得の際の税率は39.63%

7. 税金は必要経費として考える

不動産投資と税金は切っても切れないものですので、大前提としてこれらの金額を踏まえたうえで、投資を考えていく必要があります。不動産物件について、何を購入するかを検討する場合には、不動産会社の提示する表面利回りだけに惑わされず、必要経費として税金も考慮しておく必要があります。税金の知識を付け、マネジメントしていくことが不動産投資においては重要でしょう。

8. もし年収800万円のサラリーマンが2,000万円のマンションを購入したら

さてここまでは、不動産投資での不動産所得がサラリーマンとしての給与所得と損益通算できるメリットや、購入から売却までに発生する税金についてご理解いただけたことでしょう。それでは、例えば実際に、年収800万円のサラリーマンが2,000万円の区分所有マンションを購入したケースを見てみましょう。

8-1. 購入しない場合の税額

まずは購入しない場合の税額を計算してみます。

所得税を計算するにあたり、給与収入からまずは給与所得控除が引かれます。さらに所得控除として、基礎控除や扶養控除、社会保険料控除、生命保険料控除などが引かれます。控除後の金額が課税所得となります。配偶者や子供がいることを想定して課税所得が400万円だった場合、税率は20.42%、税額控除を差し引くと所得税は約38万円となります。

住民税は均等割と所得割に分かれています。所得控除できる金額は多少変わり、180万円ほど控除できたとすると住民税は約43万円となります。

8-2. 2,000万円の投資物件を購入した場合の税額

ここで2000万円の投資物件を購入した場合の税額を計算します。収入としては家賃があります。初年度の支出として先ほど述べた購入時の諸費用が経費となります。さらに年間の費用として減価償却費、利息負担、固定資産税、都市計画税、火災保険料、管理費、修繕積立金などが経費に加わるため、100万円の赤字となったとします。

この場合に損益通算をすると、課税所得が300万円となり、税率が10.21%に軽減されます。税額控除を差し引くと所得税は約21万円となりますので、約17万円の所得税が軽減される計算となります。住民税も同様に計算していくと、約33万円となり約10万円の軽減となります。

このケースはあくまで一例ですが、損益通算をすることにより課税所得が減るため、結果として税額が軽減される場合があります。特に所得が大きい方は所得税率も高いため、節税効果が高くなる傾向があります。

9. 2年目以降は効果が薄れるが持続させるためには

この節税効果は、おもに購入時の諸費用を経費に参入したことによるものです。そのため2年目以降は節税効果が薄れますが、2件目、3件目を購入した年も同様に効果がある場合があります。また、減価償却の仕組みにより、さらに節税となる場合もあります。詳細については信頼できる税理士など専門家に相談しながら、マンション経営といった不動産投資を自分にとって一番うまく活用していけると良いでしょう。

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