家賃収入がなければ不動産投資であるマンション経営は成り立ちません。しかし、だからといって、家賃ばかりに注目してしまうのも考えものです。なぜなら、マンション経営における最終的な利益は、得られた家賃から諸経費を差し引いたうえで求められるためです。それがいわゆる「実質利回り」と言われるものになります。
家賃収入だけで計算される「表面利回り」では、物件の本来的な実力を推し量ることはできません。表面利回りはあくまでも基準でしかないのです。確かな判断が求められる不動産投資において、瞬時に良し悪しを判断できる基準は便利なものではありますが、それだけで最終的な意思決定を行うことはできません。
マンション経営といった不動産投資における諸経費の中でも、特に注目しておきたいのが「管理費」です。この管理費を見落としてしまうと、家賃や入居率のわりに、得られる利益が少ないということにもなりかねませんので、管理費というものの性質をよく理解し、適切に判断できるようにしておきましょう。その際には、本来あるべき「オーナー側の視点」ではなく「入居者(借主)側の視点」になっていないか、考えてみることが大切です。
(本記事は2018/04/02配信のものを2020/07/02に更新しております)
実は、オーナーと入居者(借主)では、「管理費」と聞いてイメージするものが異なっています。まずは管理費とは何か考えてみます。
まず、オーナーにとって管理費とはどのような性質をもつものなのでしょうか。つまるところ物件を管理するために必要な費用のことです。オーナーにとっての管理費は、大きく分けると二種類あります。一つ目は共用部分に関するもので、分譲マンションの場合、管理組合や建物管理会社に管理費を毎月納めます。二つ目は専有部分に関するもので、一般的には家賃の3%~5%を管理代行手数料として支払い、賃貸管理会社に委託します。つまり、オーナーにとって管理費は、管理会社等への「委託料」と考えることができます。
一方、入居者(借主)にとっての管理費とは何でしょうか。多くの物件は、月々の家賃とともに管理費(共益費)を徴収しています(家賃と分けて記載してある場合もあれば、家賃に含まれている場合もあります)。物件の維持・管理に使われ、住まいの環境を整えるために必要なものではありますが、家賃と一緒にオーナーに支払っていることもあり、「家賃プラスアルファ」というイメージがあると思われます。
そのように考えてみると、オーナーと入居者における管理費の違いが明確になります。オーナーとしては「マンション経営における必要経費」、入居者としては「家賃の延長」というのが特徴です。特にオーナーとしてこれからマンション経営を実践する方の場合、入居者(借主)の感覚ではなく、あくまでも経営者としての感覚を身につけておくことが大切といえます。
賃貸物件を借りたことがある人は、管理費と聞くと「家賃の延長」をイメージするかもしれません。入居者(借主)の感覚では、何にどれだけの費用がかかっているのか詳しくわからないこともあり、管理費をできるだけ支払いたくないという気持ちになることもあるでしょう。
しかし、オーナーとして物件を中長期的に維持・管理していくことを考えると、意識は変わってきます。専有部分に関する賃貸管理業務としては、入居者の確保から賃貸借契約の締結、突発的な設備不良など入居中の対応、退去手続きに至るまで、専門的な業務が多く、範囲も多岐にわたります。また、共用部分に関しては定期的な清掃や長期的な修繕計画など、責任が大きく自分ひとりは対処しきれないことも出てきます。
そのような事項に対し、賃貸管理会社や管理組合(建物管理会社へ委託するケースが多い)に任せることで、本業のサラリーマン等に支障をきたすことなく不動産投資としてのマンション経営を行うことができます。
このように考えると、管理費を支払うことに抵抗がなくなるばかりか、委託料として管理費を支払うことのメリットを理解することができるのではないでしょうか。
もう一つ別の視点で考えてみましょう。あらかじめ管理費を必要経費ととらえていれば、対応も明確になります。必要経費はマンション経営が“事業”であることからも、単純な支出ではなく、課税収入を小さくしてくれる働きがあるということです。そもそもマンション経営における税金は、課税収入(収入-諸経費)によって決まります。そのため税金を抑えたいのなら、経費を多くすることは有効な方法といえます。
管理費をあらかじめ収入を調整するバッファとして考えておけば、無駄に感じることはなくなるでしょう。さらには管理費に加え、リフォーム費用や設備交換費用などを必要経費としてうまく組み込むことができれば、柔軟な対応が可能となるはずです。不動産投資におけるリスクをできるだけ少なくするためには、そのような柔軟性が役に立つこともあるでしょう。
ちなみに、賃貸管理会社の中には、サブリース(家賃保証)のサービスを提供しているところもあります。サブリース契約とすることで通常の管理委託より月々の手取りが減ることもありますが、その減少分は空室期間リスクを受け持ってもらうための費用であり、広義の意味では管理費と同分類といえるでしょう。物件の状況および適正な金額設定においては、そういったサービスの活用も検討してみてはいかがでしょうか。
マンションオーナーになったときに管理費の捻出を嫌がるあまり、保有物件を自分で管理しようとする人もいて、そのケースなら確かに管理費を業者に支出する必要はありません。しかし、手間や労力が必要となるうえに、サービス内容が不十分となりかねません。よほどの場合を除いて、管理業者に委託するのが不動産投資においては基本であると覚えておきましょう。
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