最近の賃貸物件の設備は、入居者のニーズを反映して多様化し、設備のレベルも上がっています。過去に最新設備として人気を博したものも、今やすっかり定番化し、むしろその設備なしでは入居者が決まらないといわれているものもあります。
流行に乗り遅れないために入居者に人気の設備を定期的に確認することは、これからマンション経営を始める方にも、すでにマンション経営を行っている方にとっても必須であり、空室対策としてとても有効であるともと言えるでしょう。今回は特に単身者向け賃貸住宅の人気設備を紹介します。
(本記事は2018/01/26配信のものを2020/08/20に更新しております)
現代生活において、インターネットは欠かせないインフラです。総務省が実施した「通信利用動向調査」によると、平成30年ではインターネット利用は13歳~59歳の年齢層で9割を超えている状況です。また、昨今の新型コロナウイルスの影響によって、外出機会が減ったりリモートワークが働き方のひとつとして当たり前となりつつある中、自宅内でのインターネット環境の重要性はますます高まる一方です。
そんな中、インターネット利用料の分を家賃に上乗せできると考えて「インターネット無料」を導入している賃貸物件も多く見受けられるようになっています。
また近年はスマートフォンを所有している人が増えています。先ほど述べた総務省の「通信利用動向調査」ではパソコンの保有率は平成26年81.7%から平成30年74.0%と減少傾向の一方、スマートフォンの保有率は上昇傾向を保ちつつ平成30年には79.2%に到達しています。今後は屋内外関わらず持ち運び(ウェアラブル)を前提としたインターネット環境が中心となってくるでしょう。
さらには注目されつつあるIoT(Internet of Things:モノのインターネット)の普及が進むことも予想されます。
昨今のネットショッピング利用の増加に伴い、急速にニーズが高まっているのが宅配ボックスです。単身者にとって、不在時でも荷物の受け取りが可能な宅配ボックスの利便性は高く、需要は今後も増え続けるでしょう。
以前は「あるとうれしい設備」という位置づけでしたが、全国賃貸住宅新聞の「入居者に人気の設備ランキング」では2017年から順位が急上昇していて、「必須設備」の位置づけとなりつつあります。また、荷物の再配達にかかるコストが軽減されるという社会的なメリットもあります。
セキュリティ関連設備で依然人気が高いのが、エントランスのオートロックです。特に単身女性にとっては必須で、子供の安全を重視するファミリー世帯にも重視される設備です。マンション内に居住者や関係者以外が入れないので、治安が保たれて安心です。さらにTVカメラ付きのオートロックであれば室内のモニターで訪問者の姿や顔を確認でき、より一層安心感が高まるため人気が高い設備です。
なおセキュリティ関連では共用廊下やエレベーター内の防犯カメラ、ディンプルキーなどピッキング対策のカギ、ダブルロックなども人気があります。分譲タイプのマンションでは、オートロックに加えこのようなセキュリティ設備が整っていることが多く、安心感があるため入居者から人気が高いです。
分譲マンションなどに設けられることが多い建物内ごみ置場も、単身者に人気の高い設備です。室内に長時間ごみを保管するのは場所を取りますし、衛生面でも好ましくありません。ごみの収集日や時間帯は決まっていますが、単身者が決まった時間帯にごみを出すことは難しい場合もあるでしょう。分別ルールは守らなければいけませんが、建物内にごみ置場があれば24時間ゴミ出し可能なことも多く、収集日前日の夜に出しておくことができるなど利便性が高まります。
2017年の全国賃貸住宅新聞「入居者に人気の設備ランキング」で、「この設備がないと入居者が決まらない(単身者)」部門の1位となった設備が「室内洗濯機置き場」です。単身者は仕事や外出から帰ってきて洗濯することもありますし、また防犯面を気にする方は室内や浴室で洗濯物を干すことも多いため、室内洗濯機置き場は「必須設備」と考えられているようです。
築年数の古い物件ではバルコニーや廊下など、部屋の外に洗濯機置き場がある物件もありますが、洗濯機が雨ざらしになってしまい壊れやすくなるなどの理由から敬遠されやすくなっています。そのため近年建てられた物件は室内洗濯機置き場となっていることがほとんどで、室内に洗濯機置き場がない物件はリフォームで増設しているケースもよく見受けられます。
お風呂(バス)とトイレは必須設備と考える方がほとんどだと思いますが、部屋探しで多くの方が気にしているのが「バス・トイレ別」なのか「3点ユニットバス」なのかという点です。「バス・トイレ別」とはお風呂とトイレが別々の空間になっていること、「3点ユニットバス」とは浴槽・洗面台・トイレが一体となっており同じ空間にあることをいいます。
バス・トイレ別であれば浴室の洗い場が確保できること、3点ユニットバスだとトイレ部分に湿気が入ってしまう点や衛生面が気になる点などから、バス・トイレ別が選ばれやすい傾向があります。2000年以前に建てられた単身向けの物件では3点ユニットバスも多くみられますが、近年はバス・トイレ別がスタンダードになってきています。
一方で3点ユニットバスには居室スペースを広く確保できるというメリットがありますし、海外の方にはなじみがある形態です。都心部など立地の良いエリアであれば3点ユニットバスでも十分に賃貸需要が見込めます。
雨の日でも洗濯物が乾くだけでなく、浴室を乾燥させてカビの発生も防いでくれます。暖房機能付きなら、寒い日の一番風呂でもお風呂場に入った瞬間から快適に過ごすことができます。女性の単身者のなかには防犯面に配慮してバルコニーに洗濯物を干さないことも多く、そのような方に浴室換気乾燥機はとても魅力的な設備です。
「ウォシュレット」「シャワートイレ」などが有名な温水洗浄便座は、温水洗浄機能と暖房機能がついており便利な設備です。内閣府の消費動向調査(2017年)によると、温水洗浄便座の普及率は全世帯で71.9%、単身世帯でも55.8%となっており、「あって当たり前」と考える入居者も多いと考えられます。取り付け工事も容易で、数万円で設置可能なことから、費用対効果の高いリフォーム工事の一つです。設備のグレードアップを検討するなら押さえておきたい設備です。
朝の身支度をする際に活躍するのが独立洗面化粧台です。収納棚が多いとドライヤーや化粧道具などの小物を整理して置いておくことができます。また、シャワーつきの洗面台であれば寝癖の髪を整えることもできます。女性のお化粧スペースとしてはもちろん、男性の単身者にも便利な設備として人気があります。
収納ではコートやスーツ、ドレスなどをそのまま掛けられるクローゼットの人気が高いです。クローゼットがあれば生活スペースを確保することができますし、その分の収納用品を買う必要がありません。また室内の見栄えをすっきりさせることができるため、友人が遊びに来る時のことを考えるとうれしい設備です。押し入れタイプの収納をクローゼットに改修して入居者への魅力付けを行っている例も多く見受けられます。
空室リスクを減らすためには、入居者のニーズを満たす必要があります。入居者に選ばれるために最も重要なのは「立地」ですが、立地条件で差がない場合には「設備」が重要なポイントになってきます。
ここで紹介した設備のなかには少額の投資で実現できるものもありますし、物件情報の設備欄に記載できることを考えれば、広告費と捉えることもできます。
また、毎日住宅を使う入居者の立場になって考えて、購入する物件を選ぶことが大切です。もし所有している物件に今回紹介した設備がない場合には、設備投資を検討してみてはいかがでしょうか。
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