意外と知らない「専有部分or共用部分」の境目とは?区分所有マンションの基礎知識

(写真=Cinematographer/Shutterstock.com)
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不動産投資の中でも「東京の区分所有ワンルームマンション」に人気が集まっています。その理由としてはさまざまな要因が考えられますが、「少額の自己資金で(ケースによっては自己資金ゼロからでも)スタート可能」「東京への単身者の人口流入(一極集中)が続き賃貸需要が堅調」「東京の各所で相次ぐ大規模再開発」「不正融資案件多発による一棟物件に対する融資の縮小傾向」などが挙げられるでしょう。

2020年以降のコロナ禍においても、オフィスビル、飲食店・物販店、ホテル・民泊といった事業用不動産は、社会経済情勢の影響を大きく受けたものの、ワンルームマンションをはじめとする賃貸住宅においては影響が少なく、継続して家賃収入が得られるという「資産の安定性」が証明されたと言えます。これらを考慮すると、区分所有ワンルームマンションへの人気は一時的なトレンドに終始せず、今後もさらに続くと予想されます。

ただし、区分所有マンションへの投資を検討しているものの、マンションを「区分所有」することのイメージがわかないという方もいるかもしれません。また、築年数の古い物件を購入して大規模なリフォーム・リノベーションを行おうと検討している場合には、区分所有がどのようなものか知っておかないと、思わぬトラブルが生じてしまう可能性もあります。そこで、あらためて「区分所有」について、区分所有法や専有部分・共用部分といったポイントに注目しながら、理解を深めておきましょう。

(本記事は2018/10/26配信のものを2023/01/30に更新しております)

▼目次

  1. そもそも「区分所有」とは?
  2. 意外と知らない「専有部分」と「共用部分」
  3. 一般的な「専有部分」と「共用部分」の境目
  4. 専有部分と共用部分の管理
  5. リフォームやリノベーションを行う場合の注意点
  6. 「区分所有」の考え方を知っておけば、有利に不動産投資を進められる

1. そもそも「区分所有」とは?

そもそも「区分所有」とは何でしょうか。区分所有とは区分された建物(主にマンション)の一部分を所有することを指します。区分所有マンションの場合、マンションやアパート、あるいは一戸建てなどの建物を丸ごと所有する一棟物件とは異なる点があります。

1-1. 区分の定義と独立性という概念

ちなみに、この場合の“区分”とは、かなり厳密に定義されており、ふすまや障子、あるいは間仕切りのようなもので遮断されているだけでは足りないと判断されています。つまり、建物の各部が他の部分と壁などで完全に遮断されている必要があるということです。

また、区分についてさらに掘り下げてみると、“利用上の独立性”という概念も見逃せません。利用上の独立性とは、建物の各部分が完全に独立しており、かつ必要な用途を果たしていることをいいます。これらの条件を満たしている場合、その建物は「区分所有建物」と呼ぶことができるのです。

1-2. 区分所有法での「区分所有」「所有権」の規定

実際に、区分所有に関する規定を定めている「区分所有法」について見てみましょう。たとえば、区分所有法の第一条では、建物の区分所有およびその所有権について次のように規定しています。

第一条 
一棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるものがあるときは、その各部分は、この法律の定めるところにより、それぞれ所有権の目的とすることができる。


引用元:電子政府の総合窓口e-Gov(イーガブ)「建物の区分所有等に関する法律」より

2. 意外と知らない「専有部分」と「共用部分」

2-1. 法における「専有部分」「共用部分」の定義とは

次に、区分所有法で定められている「専有部分」と「共用部分」について、詳しく掘り下げていきましょう。すでに区分マンションを所有している方はもちろん、これから購入を検討されている方の多くは、専有部分と共用部分が存在することを理解しているでしょう。ただ、厳密な違いを説明できるかとなると、心もとないかもしれません。まずは、区分所有法でどのように定義されているのかを確認してみましょう。次の通りです。

第二条 
3 この法律において「専有部分」とは、区分所有権の目的たる建物の部分をいう。
4 この法律において「共用部分」とは、専有部分以外の建物の部分、専有部分に属しない建物の附属物及び第四条第二項の規定により共用部分とされた附属の建物をいう。


引用元:電子政府の総合窓口e-Gov(イーガブ)「建物の区分所有等に関する法律」より

2-2. 専有部分とは

条文の内容から読み取れるのは、専有部分とは区分所有権の目的となる建物そのもの(主に居住空間)を指していることです。ここでのポイントは“区分所有権の目的となる(区分所有権がある)”という点です。つまり、平たくいうと、単独で所有権がある建物部分を専有部分と呼び、具体的には壁や床、天井で囲われた住空間がその対象となります。

2-3. 共用部分とは

一方で共用部分はどうでしょうか。まず、共用部分とは専有部分以外の建物の部分であるのが前提です。たとえば、共用廊下やエントランス、エレベーター、屋上、電気や給排水などの共用設備はすべて共用部分となります。専有部分と比較した場合、共用部分は“区分所有権の目的とはならない(区分所有権がない)”部分で、基本的には各区分所有者が共有するものです。

よくあるのは、ベランダやバルコニー、あるいは1階部分に住んでいる人の専用庭などに対して、その使用者が自らだけに所有権があると誤解しているケースです。しかし、それらのスペースは、あくまでも共用部分となっており、特定の居住者が専用に使うものとして認められている(専用使用権がある)に過ぎません。自分だけのものではないと認識したうえで、使用する場合には注意が必要です。

ちなみに、共用部分に関しては「管理規約」で規定されている場合もあります。たとえば管理室や集会室、ゲストルームなどのように、あらかじめ管理規約で定めておけば、通常は専有部分として利用できる部屋を共用部分とすることも可能となります。物件ごとに共用部分が異なると認識し、必要に応じて管理規約の内容をチェックしておくと良いでしょう。

3. 一般的な「専有部分」と「共用部分」の境目

とくにあいまいなイメージが強いスペースなどを軸に、専有部分と共用部分の境目について考えていきましょう。ここでは「建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)」に加えて、マンションの管理規約を作成・変更する際の参考となるよう国土交通省が作成した「マンション標準管理規約」の条文を考え方のベースとしていきます。

3-1. ベランダ、バルコニー、専用庭

すでに述べているように、ベランダやバルコニー、専用庭などは、専有部分ではなく共用部分となります。特定の専有部分に接していて、他の居住者は日常的に使用しないため、専有部分でも良いように思われるかもしれません。ですが、外観に影響する部分であるうえに、非常時には避難通路として利用されることから、あくまでも共用部分とされています。

なお、これらの箇所に対して専用使用権のある区分所有者、および賃借人などの占有者には、清掃や草刈りなどの善管注意義務が生じることも認識しておきましょう。

3-2. 窓ガラスや窓枠(サッシ)

窓ガラスや窓枠(サッシ)などはどうでしょうか。これらも専有部分に付属していることから、専有部分であると思うかもしれません。「マンション標準管理規約(単棟型)」第7条では、「窓枠及び窓ガラスは、専有部分に含まれないものとする。」とされていて、一般的には窓ガラスも窓枠も共用部分と考えられています。ただし、物件ごとの管理規約で異なる規定となっている場合もありますので、確認しておくと良いでしょう。

3-3. 玄関ドア、シリンダー(錠前)

玄関のドアやシリンダーに関して、「マンション標準管理規約(単棟型)」第7条では、「玄関扉は、錠及び内部塗装部分を専有部分とする。」とされています。このことから、一般的に内部塗装部分とシリンダーは専有部分、外側や側面(厚みの部分)は共用部分と考えることができます。たとえば、勝手にドア自体を交換したり、ドアの外側を塗装したり、玄関扉に穴を開けて新たに錠を設置したりすることは共用部分の変更とみなされる可能性が高いため、注意しておきましょう。

なお、物件によっては既設のシリンダー交換についても、管理組合に申請して交換する規約となっている場合があります。その理由としては、オートロックと共通の鍵で開けられるタイプに限定していること、災害時の緊急対応を考慮していることなどが挙げられます。

3-4. 壁、柱、床、天井

住戸にあたる部分については、基本的に専有部分と認識して良いのですが、マンション全体を支える“構造部分”に関しては共用部分です。具体的には、マンション全体を支えている壁、柱、床、天井などに関しては共用部分となります。専有部分に該当するのは、壁紙クロスやボードなどの“内側部分”です。

分譲マンションを購入した方の中には、壁や天井に穴を開けている方もいるでしょう。壁紙クロスやボードなどの専有部分に関しては、そのような造作を加えても問題ありませんが、それが共用部分にまで達してしまうと問題です。基本的に、マンションの構造体を傷つけるような造作は、マンション全体に影響を及ぼす可能性があると理解しておきましょう。

3-5. 給排水管

給排水管についても見ていきましょう。一般的に、縦に伸びる管は共用部分、横に枝分かれしている管は専有部分と考えられることが多いようです。「マンション標準管理規約(単棟型)」別表第2においては、共用部分の範囲は「給水管については、本管から各住戸メーターを含む部分、雑排水管及び汚水管については、配管継手及び立て管」とされています。

各住戸だけが専用で使う横管・枝管は専有部分とみなされることが多い一方で、個々の区分所有者だけでは工事の実施が難しい位置にあるなど、排水管の構造や設置場所によっては横管・枝管であっても共用部分とする判例もあります。また、物件によっては標準管理規約と異なる条文となっている管理規約もあります。そのため、専有部分か共用部分かについて一概には言えないのが実情です。

実務的には、管理組合が実施する排水管清掃、大規模修繕における給水管更新工事などでも、横管・枝管を含めて実施されることが多くあります。リノベーションなどで給排水管の工事を行う場合には、事前に管理規約を確認し、管理組合の理事長や建物管理会社と打ち合わせておくと良いでしょう。

4. 専有部分と共用部分の管理

4-1. 専有部分の管理は「賃貸管理」

専有部分と共用部分の概要について理解したうえで、それぞれの管理について見ていきましょう。まず、専有部分の管理としては一般的な「賃貸管理」が基本です。具体的には、入居者の募集から契約者管理、さらには家賃管理やクレーム処理など幅広い業務を担う仕事が賃貸管理に該当します。主に、副業オーナーの場合、専門の賃貸管理会社に委託するのが一般的です。

4-2. 共用部分の管理内容

一方で、共用部分の管理にはどのようなものがあるでしょうか。たとえば、エントランスや廊下などの日常的な清掃業務はもちろん、エレベーターの保守・点検など共用設備のメンテナンス、定期的に行う大規模修繕の計画と実施など、マンション全体に関わる“ハード面”の管理があります。また、管理組合を運営し、管理費や修繕積立金の集金、各区分所有者の意思を取りまとめる総会の実施など“ソフト面”の管理もあります。一般的に管理組合の多くは、このような共用部分の管理を建物管理会社に委託しています。

4-3. 区分所有オーナーの共用部分における責任範囲

もっとも、区分所有マンションを所有している人の場合、共用部分に対する責任が軽減されます。一棟物件の場合であれば、専有部分はもちろん共用部分や建物全体についても自ら一人で責任をとらなければならない一方、区分所有マンションの場合であれば、共用部分や建物全体に関することは管理組合が主体となって行い、区分所有者全員で責任を分担できます。そのため、区分マンションへの投資では手間や費用面の負担が少なくて済むのです。そのような点もまた、区分マンション投資が選ばれる理由となっています。

5. リフォームやリノベーションを行う場合の注意点

では、リフォームやリノベーションを行う場合には、どのような注意が必要でしょうか。専有部分および共用部分それぞれについて考えてみましょう。

5-1. 専有部分のリフォームやリノベーション

所有者の居住空間を中心とした専有部分には、その持ち主に所有権があります。そのため、リフォームやリノベーションをする場合、基本的に自由な変更ができると考えて良いでしょう。ただし、実際の工事に着手する場合には、他の居住者に迷惑をかけないよう注意する必要があります。また、物件や工事の程度によっては、管理組合への届け出や掲示が必要となるケースもあるため、事前に確認しておくようにしましょう。

5-2. 共用部分のリフォームやリノベーション

次に、共用部分のリフォームやリノベーションについてはどうでしょうか。これまでも述べてきたように、共用部分はあくまでも“区分所有者の共有”となります。その点、勝手に造作を加えたり、変更したりしてはいけません。

ただし、区分所有者全員の利益という観点から共用部分に手を加えたほうが良いと思われる内容であれば、理事会や総会の決議を経ることで、管理組合にて実施されるケースもあります。たとえば、宅配ボックスの設置や防犯対策のフェンス設置などは区分所有者全員の利益となり得るため、総会の議案として取り上げてもらうのも良いでしょう。

いずれの場合でも、ポイントとなるのは管理規約であり、加えて管理組合との兼ね合いが重要です。もちろん、勝手な行動は厳に慎むべきですが、必要な手順を踏んだうえであれば、できることもあるかもしれません。あらかじめ専有部分を管理する賃貸管理会社、建物管理会社、管理組合の理事長などと相談し、正しい手続きを経て実施すれば、それほど手間はかからないものです。

6.「区分所有」の考え方を知っておけば、有利に不動産投資を進められる

6-1. 区分所有によるマンション投資のメリット

本稿のまとめとして、あらためて「区分所有」で行うマンション投資のメリットについておさらいしておきましょう。区分マンション投資は、一棟物件に投資する場合と比較して、投資する自己資金が少なくて済みます。また、老後資金の準備や生命保険の代わり、相続税対策になることに加えて、複数のマンションを区分所有することによってさまざまなリスクを分散させることもできるでしょう。

とくに、最近では団体信用生命保険にもさまざまな種類のものが登場しており、死亡時だけでなく疾病などにも対応しているものが増えています。その点、投資対象としての活用方法にも幅があると理解して良いでしょう。

その他にも、管理の手間が比較的少なくて済むというのも魅力です。本稿で見てきたように、一棟物件への投資では共用部分や建物全体について責任を負わなければなりません。そうなると、オーナーの手間や費用面の負担は自ずと大きくなってしまい兼ねず、会社員や公務員など本職が忙しい方にはあまり向いていないと言えます。一方、1室単位で行う区分マンション投資では、区分所有者全員で責任が分担されて管理の手間や費用面の負担が軽減されるため、初心者でも始めやすく本職が忙しくても無理なく継続しやすいのです。

6-2. 多くのメリットを理解した上で「区分所有」を選択肢の一つに

このように、区分マンション投資のメリットはたくさんあります。それらのメリットをきちんと理解したうえで投資するためにも、「区分所有」の考え方、とくに専有部分と共用部分について知っておくと良いでしょう。できることとできないことを把握し、そのうえで法的な背景についても知っておけば、万が一のトラブル時にも適切な対応が可能となります。「区分所有」という選択肢があることを知り、有利に不動産投資を進めていきましょう。

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