マンション投資の管理
2018/11/16

退室時のリフォーム費用はオーナー負担?入居者負担?原状回復に関するガイドラインから判断基準を学ぼう

(写真=Rawpixel.com/Shutterstock.com)
(写真=Rawpixel.com/Shutterstock.com)
 
マンション経営をするうえで注意したいのは「トラブルの発生」です。とくに、家賃収入をもたらしてくれる“入居者”とのトラブルは避けたいものです。国民生活センター(PIO-NET)に寄せられた「賃貸住宅の敷金・原状回復トラブル」は、年々減少傾向にあるものの毎年1万件を超える規模で推移しており、マンションオーナーにとって無視できない数字となっています。


(2018年6月30日現在)

※「賃貸住宅の敷金・原状回復トラブル」国民生活センター

支出という点で考えると、入居者の退室時にトラブルが発生し、入居者が負担すべき費用を得られない場合にオーナー自らリフォーム費用を捻出しなければならない可能性が考えられます。そうなると、マンション経営の収支に影響を及ぼすことになってしまいます。また、仮にトラブルの収拾がつかない場合には、弁護士を交えて交渉したり、訴訟に発展したりする可能性も考えられます。そうなると、時間的な手間や費用の負担も大きくなってしまいます。

そのような事態にならないよう、あらかじめトラブルを未然に防止することが大切です。その前提として、原状回復に関するガイドラインの考え方を確認しておきましょう。

国土交通省のガイドラインの考え方

個別の状況に応じ、原状回復を担うべきなのは貸主と借主のどちらなのでしょうか。その答えとして、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」には、原状回復の負担について原則的な考え方が記載されています。

国土交通省のガイドラインによると、賃貸人(貸主)が負担すべき項目としては「経年変化(自然的な劣化・損耗等)」「通常損耗(賃借人の通常の使用により生ずる損耗等)」「グレードアップ(建物の価値を増大させるような修繕等)」などが挙げられています。一方で、賃借人(借主)が負担すべき項目としては「賃借人の故意・過失」「善管注意義務違反」「通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損」などが挙げられています。

さらには原状回復に関する基本的な考え方として、次に挙げる内容なども記載されています。

・入居時及び退去時おいて、損耗等の有無など物件の確認を徹底すること
・賃借人に特別の負担を課す特約の要件
・物件・設備の使用上の注意点を賃借人に周知すること
・原状回復は可能な限り毀損部分に限定し、毀損部分の補修工事が可能な最低限度を施工単位とすること


※国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について

東京都が定める「賃貸住宅紛争防止条例」

東京都は国土交通省のガイドラインを受けて、東京ルールと呼ばれる「賃貸住宅紛争防止条例(東京における住宅の賃貸借に係る紛争の防止に関する条例)」を作成しています。この条例は、宅地建物取引業者が賃借人に対して行うべき説明義務を定めたものです。

条例の適用対象は、東京都内の賃貸住宅(店舗・事務所等は対象外)において新規賃貸借契約(更新契約は対象外)が行われる場合です。賃貸借契約において媒介(仲介)または代理となる宅地建物取引業者は、書面を交付して賃借人に説明する必要があります。説明する内容としては次の項目があります。

・退去時における住宅の損耗等の復旧について(原状回復の基本的な考え方)
・住宅の使用及び収益に必要な修繕について(入居中の修繕の基本的な考え方)
・実際の契約における賃借人の負担内容について(特約の有無や内容など)
・入居中の設備等の修繕及び維持管理等に関する連絡先


なお、東京都は条例とあわせて「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン」を作成しています。東京都のガイドラインでは国土交通省のガイドラインを参考に、賃貸住宅紛争防止条例や国土交通省のガイドラインの理解がより深まるよう、わかりやすく説明する内容となっています。

※「賃貸住宅紛争防止条例」東京都

ちなみに、東京都は賃貸住宅紛争防止条例や条例施行規則、モデル説明書に関して、外国語版(英語版、中国語版、韓国語版)を作成しています。これは近年の東京都内における外国人の増加を受けたものと見られます。法務省の報道発表資料(2018年3月)によると、2017年末の在留外国人数は約256万人、前年末に比べて約18万人(7.5%)増加し過去最高となりました。在留外国人数を都道府県別でみると、東京都は約53.7万人で全体の21.0%を占めています。

今後も外国人の増加傾向は続き、東京都内の賃貸需要を支える要因の一つになると予想されています。そのため、外国人との間においても原状回復に関するトラブルが生じないよう配慮しておく必要があると言えます。

※「平成29年末現在における在留外国人数について(確定値)」法務省

貸主負担となるもの・借主負担となるものの具体例

次に、原状回復費用の負担に関して、貸主負担となるもの・借主負担となるものの具体例について確認していきましょう。次の通りです。

<賃貸人負担となるもの>

・家具の設置による床・カーペットのへこみ、設置跡
・テレビ・冷蔵庫等の後部壁面の黒ずみ(電気ヤケ)
・壁に貼ったポスター等によるクロスの変色、日照など自然現象によるクロス・畳の変色、フローリングの色落ち
・賃借人所有のエアコン設置による壁のビス穴・跡
・下地ボードの張替えが不要である程度の画鋲・ピンの穴
・設備・機器の故障・使用不能(機器の寿命によるもの)
・構造的な欠陥により発生した畳の変色、フローリングの色落ち、網入りガラスの亀裂
・特に破損等していないものの、次の入居者を確保するために行う畳の裏返し・表替え、網戸の交換、浴槽・風呂釜等の取替え、破損・紛失していない場合の鍵の取替え
・フローリングのワックスがけ、台所・トイレの消毒、賃借人が通常の清掃を行っている場合の専門業者による全体のハウスクリーニング、エアコン内部の洗浄

<賃借人負担となるもの>

・飲みこぼし等の手入れ不足によるカーペットのシミ、冷蔵庫下のサビを放置した床の汚損、引越作業等で生じた引っかきキズ、賃借人の不注意によるフローリングの色落ち
・日常の清掃を怠ったため付着した台所のスス・油、結露を放置して拡大したカビ・シミ、クーラーからの水漏れを賃借人が放置して発生した壁等の腐食、喫煙によるヤニ等でクロスが変色したり臭いが付着している場合、重量物をかけるためにあけた壁等の釘穴・ビスで下地ボードの張替えが必要なもの、天井に直接付けた照明器具の跡、落書き等故意による毀損
・ペットにより柱等にキズが生じ、または臭いが付着している場合
・風呂・トイレ等の水垢、カビ等、日常の不適切な手入れもしくは用法違反による設備の毀損、鍵の紛失または破損による取替え、戸建て住宅の庭に生い茂った雑草の除去

※「原状回復基礎知識」全国賃貸不動産管理業協会

借主とのトラブルを避けるために行うべきこと

原状回復費用の基本を踏まえたうえで、借主とのトラブルを避けるためにはどうすればいいのでしょうか。いくつかポイントはあるものの、契約時にきちんと説明しておいたり、あるいは入居前の状態を写真等で記録したりするなどが挙げられます。また、入居者の退室時にはリフォーム工事を実際に行う内装業者に立ち会ってもらうのも効果的でしょう。

なお、最近では360度の写真撮影が可能なVR(Virtual Reality:仮想現実)の技術も普及してきています。自分がその空間にいるような感覚で画像を確認できる画期的な技術で、傷ついたり汚れたりしている箇所がわかりやすいことに加え、撮影したい箇所をもれなく記録するのに向いています。うまく利用してトラブル防止に役立てるのも良いでしょう。

副業オーナーとして退室時のトラブルを未然に防ぐためには、入居者との賃貸借契約、退室時立会い、敷金精算などの業務に精通している賃貸管理会社を選ぶことが何よりも大切です。入居だけでなく退去についてもきちんと考えて、適切な投資を行うようにしましょう。
 

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