相続税?遺言?2019年施行の民法改正で「相続」の何が変わるのか

(写真= Freedomz/Shutterstock.com)
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2018年7月6日、民法の相続に関する規定「相続法」が改正され、2019年から段階的に施行されています。相続法の改正は、実に約40年ぶりの大幅な変更といわれています。そして、相続といえば最も気になるであろう「相続税」「遺言」などに変更はあったのでしょうか?

では、具体的に相続はどう変わるのか、主な改正項目とポイントを解説していきます。

(本記事は2019/04/18配信のものを2019/09/30に更新しております)

▼目次

  1. 残された配偶者の生活を保護する制度の創設
  2. 遺言制度の利用を促進するための見直し
  3. その他の改正項目
  4. 施行時期について

残された配偶者の生活を保護する制度の創設

大きな改正点は、配偶者の権利を保護するための制度が3つ新設されたことです。概要を説明していきましょう。

・配偶者短期居住権

「配偶者短期居住権」とは、相続開始のときに、配偶者が住んでいた建物(被相続人の遺産)を一定の期間(遺産分割が終了するまでなど)無償で使用できる権利のことです。これにより配偶者は、建物が仮に第三者に遺贈された場合であっても、最低6ヵ月間は今の建物に住み続けることができます。

・配偶者居住権(長期居住権)

「配偶者居住権(長期居住権)」は、被相続人の遺産である自宅に居住していた配偶者が、相続財産として権利を取得することにより、終身、継続して無償で住むことができる権利です。配偶者居住権は下記によって成立します。

・遺産分割
・遺贈(遺言による相続)
・死因贈与
・家庭裁判所の決定

たとえば、夫が亡くなり相続人が妻と子の2人いて、遺産は自宅(2,000万円)と預貯金(3,000万円)のみでした。これらを法定相続分に従って妻と子に遺産を2分の1ずつ分けると、妻は自宅2,000万円と預貯金500万円、子は預貯金2,500万円受け取ることになります。

このケースでは、妻は自宅に住み続けることはできるものの、預貯金は500万円しか受け取れず、生活に困ってしまうかもしれません。そこで、新制度で配偶者は遺産分割における選択肢の一つとして、所有権の代わりに「配偶者居住権」を取得できるようになりました。

上記のケースなら、妻は「配偶者居住権1,000万円と預貯金1,500万円」、子は「負担付所有権1,000万円と預貯金1,500万円を受け取る」というように遺産分割を行います。これにより配偶者は、自宅に住み続けながら預貯金の半分も受け取れるので、生活が安定します。

また、配偶者居住権を取得した配偶者が亡くなったら、その配偶者居住権は消滅し、子の負担付所有権から「負担」が外れ、子が所有権を持つことになります。したがって、配偶者居住権は二次相続時における相続財産にカウントされませんので、分割や相続税という観点からもメリットが大きい制度といえます。

・婚姻期間が20年以上の夫婦間における居住用不動産の贈与等に関する優遇措置

結婚して20年以上の夫婦間で自宅の遺贈・贈与が行われた場合、従来は「遺産の先渡し(特別受益)」と判断され、遺産分割において受け取り可能な財産額が減らされていました。ですが今回の相続法改正により、遺産の先渡しとして扱う必要がないと定められ、配偶者は遺産分割の際により多くの財産を取得できるようになりました。

民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について(相続法の改正)

遺言制度の利用を促進するための見直し

自分が死亡したときに、「財産を誰へどのように分配するか」について最後の意思を示すものが「遺言書」です。残された家族が争わないようにするためにも重要な制度ですが、日本では諸外国と比べて遺言書の作成率が低いと言われています。遺言制度をもっと利用してもらうために、新たな制度が設けられました。

・自筆証書遺言の方式緩和

これまで、自筆証書遺言を作成する場合には遺言書や財産目録を含めて、全文を自分で手書きする必要があり、とても手間がかかりました。しかし、今回の自筆証書遺言の方式緩和で、財産目録についてはパソコンなどで作成して署名押印すればOKということになりました。

・法務局における自筆証書遺言の保管制度の創設

自筆証書遺言はこれまで自宅で保管されるケースが多く、紛失したり、相続人によって改ざん・廃棄されたり、発見されなかったりするおそれがありました。これを防ぐために、民法改正と同じ日の2018年7月6日、法務局に遺言書を保管できる制度を定めた「法務局における遺言書の保管等に関する法律(遺言書保管法)」が成立しました。

法務局における遺言書の保管等に関する法律について

その他の改正項目

・預貯金の仮払い制度

従来は、被相続人の預貯金については遺産分割が終了しない限り、相続人単独で預貯金の払い戻しはできませんでした。なぜなら、預貯金も遺産分割の対象であるからです。しかし、現実には被相続人が死亡してすぐに葬儀代や被相続人固有の債務、遺族の生活費の支払いなどで資金は必要になります。これらすべてを相続人固有の財産で負担するのは難しいこともあります。

こういった事情から、遺産分割における公平性を図りつつ、相続人たちの資金需要に応えるべく、預貯金の払い戻し制度が創設されました。具体的には次のようになります。

1.預貯金の一定割合(金額による上限あり※)については、家庭裁判所の判断を経なくても金融機関の窓口において支払いを受けられるようにする
2.預貯金のみ、仮払いの必要があると認められるときは他の共同相続人の利益を害しない限り、家庭裁判所の判断で仮払いを認められるようにする

※相続開始時の預貯金の額(口座基準)×3分の1×払い戻しを受ける共同相続人の法定相続分=単独で払い戻しを受けられる金額(ただし、1つの金融機関から払い戻しを受けられるのは150万円が上限)

・被相続人の介護、看病で貢献した親族は金銭の要求ができる

世帯によっては、子どもの妻が被相続人の介護や看病にあたる一方、被相続人の子どもは介護や看病に関与していないケースが見受けられます。しかし、相続は遺言等での指示がない限り、被相続人の子どもの妻は法定相続人に該当しないため、相続の場面でも財産を分配されることはありませんでした。

今回の改正により、相続人以外の被相続人の親族が無償で被相続人の療養看護等を行った場合には、相続人に対して金銭の請求をすることができるようになります。ただ、請求を行ったところで相続人たちからすんなりとOKが出ない場合も多々あるでしょう。その場合、特別の寄与(被相続人の生前の療養看護等を行った相続人以外の親族)を行った者は、家庭裁判所に申し立てをすることができます。

ただし、相続開始を知った日など(通常は被相続人の死亡時)から6ヵ月経過後1年以内となっています。

施行時期について

今回の民法改正は、誰もが気になるような相続税額が直接的に大きく変わる内容ではないものの、1980年に配偶者の法定相続分を3分の1から2分の1に引き上げて以来の抜本的改正です。

これまで40年近く改正がないまま日本の相続法の根幹をなしてきましたが、平均寿命の延びや少子高齢化、インターネットの普及などといった社会環境の変化により、残された配偶者の生活への配慮や遺言制度の利用促進といった時代に即した改正の必要性が生じてきたのが現状です。

最後に、改正法が施行される時期は以下の通り少しずつ異なるので、制度に関係のありそうな人は施行時期を把握しておくとよいでしょう。

2019年1月13日~ 自筆証書遺言の方式を緩和する方策
2019年7月1日~   預貯金の払戻制度、遺留分制度の見直し、特別の寄与等
2020年4月1日~   配偶者居住権、配偶者短期居住権の新設等
2020年7月10日~ 遺言書保管法

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