投資用不動産を相続対策で購入するリスクとは

(画像=Thinkstock/Getty Images)
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投資用不動産は相続対策になる……これは不動産の営業でよく聞かれるうたい文句です。相続税を計算するうえでの建物や土地などの評価額は、購入金額よりもずっと低くなる傾向にあります。そのため、「節税になる」と思われがちですが、落とし穴もあります。購入前にはいくつかの点に注意しておいた方がよいのです。

不動産購入は節税メリットよりもリスクが大きくなる可能性も


相続税のベースとなる財産評価は、国税庁が定めている財産評価基本通達に基づいて行うこととなっています。現預金はそのままの金額ですが、土地や建物は次のような方法により評価するため押さえておきましょう。

土地:路線価方式あるいは倍率方式

1.路線価方式による評価額=路線価×宅地面積
2.倍率方式=固定資産税評価額×倍率

※借りた土地、貸した土地はさらに評価額が下がります

建物(貸家)

評価額=固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)

これらの評価を行うと、現預金で相続するよりも少ない相続税で抑えられることが多いのです。そのため、「現預金で遺すより不動産で遺した方が節税になる」といわれています。ただし、現実の相続は財産評価だけを行えばよいわけではありません。財産評価が必要なプラスの財産だけでなく、被相続人の借金や租税債務といったマイナスの財産をも相続することになります。

さらに、被相続人の状況や不動産を取り巻く環境によっては、投資用不動産が相続人の負担になることもあるのです。「投資用不動産の相続にはリスクが伴う」ともいえます。

投資用不動産の購入によるリスクとは


投資用不動産を購入した場合、具体的には次のようなリスクが伴います。

債務は遺産分割の対象とはならない

投資用不動産を購入する際、ローンを組むケースは少なくありません。このローンも数千万単位、一棟物件など場合によっては億単位になることもあります。プラスの財産は遺産分割の対象となりますが、借金という債務は法律上、基本的に遺産分割の対象とはなりません。相続開始の日に共同相続人に法定相続分に応じて自動的に相続されることになります。

相続放棄や限定承認を行えば負担は減りますが、相続開始から3ヵ月以内に家庭裁判所に申し立てをしなくてはなりません。遺産分割協議の際、誰がどれだけ債務を引き受けるかを内々に決めることはできるのですが、その引き受け分を債権者に対して主張することはできません(ただし、債権者の承諾があれば、取り決めの効力が発生するケースもあります)。

そのため、相続したプラスの財産や元々持っている自己資産に比べて多額の債務を相続した場合、債務の返済に苦慮することになる可能性があります。また、遺産分割協議で少ない債務でOKとなっていたとしても、債権者から「法定相続分通りに支払え」と言われたら払わざるを得ないのです(ただし、後日、協議通りの金額を他の相続人から補填してもらうことは可能)。

もっとも、ローンを組む際に団体信用生命保険を利用していれば、ローンを組んだ方が亡くなったときに保険会社から金融機関へローン残債が一括弁済されるため、この問題は生じません。

空室リスク

また、少子高齢化の現代において投資用不動産は空室リスクが伴います。保有マンションに空室が出ると、単に賃料を回収できないだけでなく、ローンの返済に苦しむことになりかねません。さらに、相続税での評価においても建物の評価額での賃貸割合が減り、結果相続税が増えることになります。

維持費用リスク

投資用不動産にはさまざまな維持コストがかかります。まず、毎年かかるのが固定資産税です。固定資産税は固定資産税評価額×1.4%で計算されます。なお、固定資産税評価額は、土地の場合は公示価格などを参考にした価額の70%程度、建物の場合は建築費の約50~70%相当額となります。投資用マンションの土地については、この金額に各部屋の専有面積に応じた持分割合を乗じて計算することになります。

もし1億円の土地であれば、毎年約98万円前後の固定資産税を支払わなくてはなりません。この他、修繕費や保険料、管理委託費といった維持コストがかかります。なかでも一棟物件は区分マンションと異なり、共用部分や建物全体に関することはすべて一人で責任を負わなければなりません。外壁修繕・塗装や屋上防水工事などの大規模修繕には多額の費用が必要になります。費用に関しては計画的な積立てを自ら行う必要があり、労力や精神的な負担も高まります。

これらの維持費用も念頭に置き、投資用不動産を相続した場合、これらコストを支払えるかどうかを検討することが必要です。投資用不動産を上手に活用するのは想像以上に容易ではありません。相続で投資用不動産を引き継ぐ可能性が出てきた場合には、相続した後の状況などもイメージして検討することが賢明です。

【参考記事】相続対策には都心の区分ワンルームマンション投資が優れている3つの理由

鈴木 まゆ子
【プロフィール】
税理士鈴木まゆ子事務所代表。外国人のビザ業務を専業とする行政書士の夫と共に外国人の起業支援に従事する。国際相続などについての記事執筆にも取り組む。税金や金銭に絡む心理についても独自に研究中。 

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