不動産の相続で知っておきたい「配偶者の税額軽減」とは

(写真=goodluz/Shutterstock.com)
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不動産の相続で気になるのが税金です。特に納税資金のない相続人が不動産を引き継いだ場合、納税資金の捻出に苦慮する可能性があります。そこで、検討したいのが「配偶者の税額軽減」という制度です。

配偶者が不動産を引き継ぐと相続税が0円になることも

配偶者の税額軽減の特例とは、被相続人の配偶者が遺産分割や遺贈により実際に取得した正味の相続財産の金額が「1億6,000万円」「配偶者の法定相続分相当額」のいずれか多い金額までは配偶者に相続税がかからないというものです。

相続人の各世帯が納税資金に事欠く状況であれば、大きな節税策が必要です。もし相続財産の総額が1億円相当である場合には、配偶者の税額軽減枠である「1億6,000万円」を使うことで、配偶者は相続税を支払わずに済みます。ただ、この制度を使って一時的に課税を免れたとしても、多くの世帯では被相続人と配偶者が同世代でしょう。

そのため、後述する二次相続がほどなくして始まる可能性は低くありません。しかし、それでもこの制度を活用する意義はあります。配偶者の税額軽減を使うことで、税金を節約するだけでなく時間にも余裕を持たせることができます。次の相続つまり配偶者が死亡するまでの間に、「納税資金を相続人が準備するか」「この物件を売却するか」といった対策を練ることが可能になるのです。

適用の際の注意事項

適用の際、注意したいポイントは下記となります。

●遺産分割協議が終わっていないと適用できない
配偶者の税額軽減は、遺産分割が相続税の申告期限までに完了していなければ適用を受けることができません。なぜなら、配偶者がどの財産をどれだけ承継するのかが明確でないと、1億6,000万円との比較ができないからです。ただし、未分割の場合でも申告期限後3年以内に協議がまとまり、遺産分割が行われれば、配偶者の税額軽減をあらためて更正の請求で適用することができます。

この場合、未分割の相続税の申告書にあらかじめ「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付しておくことが必要となります。

●二次相続・三次相続の対策にならない
配偶者の税額軽減は、一時的な課税の先送りにしかなりません。なぜなら、先述のとおり被相続人と配偶者は同世代であることが多く、被相続人の死亡後まもなくして配偶者の死亡という事実が生じることが多いからです。この場合、配偶者が受け取った投資用マンションを、今度は「特例ナシ」で子などの相続人が承継しなくてはなりません。

さらに、他の相続財産を含めて考えると、同一財産について2度課税されることとなります。「納税資金にそれほど困っていない」「長期的なスパンで節税を考えたい」といった場合には、あえて配偶者の税額軽減に頼ることなく、早々に子や孫に相続財産を引き継がせるように対策を練ったほうが得策かもしれません。


鈴木 まゆ子

【プロフィール】
税理士鈴木まゆ子事務所代表。外国人のビザ業務を専業とする行政書士の夫と共に外国人の起業支援に従事する。国際相続などについての記事執筆にも取り組む。税金や金銭に絡む心理についても独自に研究中。

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