資産形成・運用
2017/11/16

「都市再生特別措置法」とは。コンパクトシティ構想

(写真=PIXTA)
(写真=PIXTA)
インターネットやスマホの急速な普及、それに伴うビジネスの国際化・多国籍化、また超高齢化社会など、1980年代に比べて人々の生活は大きく変化しています。これらの経済情勢の変化に、点在する日本の都市が十分に機能していない、もしくは機能しなくなるのではないかという懸念がありました。その問題に対処するため、政府は2002年に「都市再生特別措置法」を定めました。この都市再生特別措置法は2014年8月に一部が改正されています。本コラムでは、この改正内容のメインとなる「コンパクトシティ構想」について解説します。「コンパクトシティとは何か」「なぜ必要とされたのか」、そして「この構想が将来の不動産にどう影響してくるのか」をみていきましょう。

コンパクトシティとは


日本の人口は2000~2010年ごろまで横ばいにて推移しており、2010年以降は減少が表面化してきています。特に地方では、県内に人や都市機能が分散して非効率になっている地方都市が増え始めました。国や自治体が進める「コンパクトシティ」とは、人口や都市機能を特定の場所に集中させて密度を高め、サービスや産業の発展に役立てようとする構想です。高度成長期には郊外の住宅地開発が進み、特に鉄道網が整備されていなかった地方都市において、車社会への転換が進んでいました。コンパクトシティが必要とされる背景には、こういったバブル期以降の郊外の急な開発で、いくつかの問題が生じたことがあります。

例えば、人口密度の低い地域では、生活に必須の医療サービスが足りなくなっている県が多い傾向です。車という移動手段のない高齢者や障害者の「交通弱者」にとっては、必要なサービスが十分に受けられておらず、役所に足を運ぶのも一苦労という事態が起こっています。また、スプロール現象も問題になっています。スプロールとは「虫食い」という意味です。通常、郊外の小規模な農地が個別に開発される場合、道路が計画的に整備されるわけではなく、各土地の形状に合わせて住宅地が整備されます。結果として、その開発された地域は整備されても開発区域同士の間では繋がりがなくなり、虫食い状態に宅地化が進んでしまいます。一度スプロール化した地域は、地権が細分化してしまううえ、地価も下がってしまう傾向なので改善が非常に困難になるのです。

さらに、地方自治体の財政負担も見逃せません。際限なく郊外の開発が進むことで、都市部の中心から人が流出します。人口の希薄化が起こると道路や上下水道、電力など、公共サービスの供給効率が悪化するのです。その結果、維持コストも膨大になります。

このように、現状のまま広い範囲に都市機能を維持することは、今後さらに難しくなることが予想されています。これらの問題に対処するため、市街地の規模を小さくして、生活圏内を歩いて行ける範囲に絞ることが推進されているのです。住みやすい街づくりを目指すコンパクトシティは、都市を機能させるためのモデルとして注目を浴びています。

不動産投資には各自治体の方針も重要になる


札幌市、青森市、富山市、神戸市、北九州市などの各都市は、コンパクトシティを公式に政策に取り入れています。その他、全国各地の「過疎地域」といわれる人口が著しく減少した地域は、コミュニティの活力の低下が懸念されます。そのため、今後ますます地方から都市部へ人やモノが集中していく流れが加速することが予想されます。首都圏の不動産価格が高騰していることから、地方の物件に目を向ける方もいますが、その場合は、まず都心部を中心に考えた方が無難でしょう。特に工場や医療施設、教育機関が近隣にある場合、それらの移転によって一気にアパートやマンションに空室が増える可能性があります。

ただし、地域によっては、上記のコンパクトシティ構想とは逆に、法人税を大幅に安くして企業を誘致しようとしている自治体もあります。もしこの政策が成功すれば、従業員の移動や雇用が生まれることにより、地方にも賃貸の需要が高まる可能性もあるでしょう。もちろん、コンパクトシティも郊外への企業の誘致も、スムーズに政策が進むとは限りません。それでも各自治体が「都心部」「地方」のどちらを活性化させようとしているのかは、その地域の不動産の価格にとって重要な要素になります。不動産投資を検討する際には、今後のコンパクトシティ構想の方針にも十分注目してリスクヘッジしていくことが必要です。

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