税金
2018/05/21

何から始める?相続税対策・「争族」対策としてやっておきたい6つのこと

(写真=Artur Szczybylo/Shutterstock.com)
(写真=Artur Szczybylo/Shutterstock.com)
相続を“争族(争続)”にしないためには、「生前の対策」が重要となります。争族となるケースの多くは、被相続人が生きているうちに必要な準備を進めておらず、その結果、亡くなってから慌てて処理するために起こっています。だからこそ、生前にきちんと準備しておくことが、争族へと発展させないポイントになるのです。

ただ実際には、被相続人が亡くなってから専門家に相談する人が後を絶ちません。そして相続が始まった後、相続対策の多くは被相続人の生前にしかできないことを知るのです。また、相続対策は時間をかけてこそ効果を生むものも少なくなく、結果的に、相続が“争族”にならざるを得ないケースも多いのが実情です。

【参考記事】「家族・親族のためにまずは知っておこう!相続が「争族」になる原因」

そうならないために、早いうちから相続対策をしておきましょう。とくに、相続財産が現金だけでなく、不動産や証券など多岐にわたる場合はなおさらです。具体的な準備の前に、相続財産を把握することから始めてみましょう。

まずは相続財産の把握から

相続税対策の第一歩は、「相続財産の把握」から始まります。被相続人にどれだけの財産があるのかを把握しなければ、適切な対策について検討することもできません。そのため、まずはどのような種類の財産がどのくらいあるのかを、正確に把握するようにしましょう。必要に応じて、「財産目録」のようなものを作成するのもおすすめです。

このときの注意点としては、現金や有価証券(株や国債など)だけでなく、不動産の価値(評価額)についても正しく把握しておくことです。現金の残高などは数字としてイメージしやすいため、ついその部分だけで財産の価値を測ってしまいがちですが、不動産の評価額も併せて確認しておきましょう。土地の場合であれば「路線価」(路線価のつけられていない土地の場合は、「固定資産税評価額」をもとに倍率方式にて算出)が、建物であれば「固定資産税評価額」が目安となります。

相続税対策としてやっておきたい3つのこと

相続財産について把握した後は、具体的な相続対策について検討していきましょう。相続税対策には、大きく3つのポイントがあります。

1. 相続税評価額を下げる

相続財産を把握し、相続税の課税対象となる規模の資産がある場合には、「相続税評価額を下げる」ことを考えてみましょう。具体的には、現金を不動産、特に賃貸マンションや賃貸アパートなど賃貸物件に換えておくと、土地に対する「小規模宅地等の特例」と「貸家建付地の評価減」、建物に対する「借家権割合による評価減」などを利用することができ、大きな圧縮効果が得られ有効です。

ただし、早い段階から着手しておくことが大切です。2018年度税制改正大綱にて、「相続開始前3年以内に貸付事業の用に供された宅地」については、小規模宅地等の特例の適用範囲から除外されました。政府としては駆け込みでの相続税対策を規制する方針ですので、今後のさらなる特例適用範囲の縮小などにも注意しておきたいところです。

また、賃貸物件で評価額を下げる場合には、入居状況に注意しましょう。空室が長期にわたる場合には、賃貸しているとみなされない可能性があるため、空室になりにくい立地や物件を選定して賃貸経営を行うのがおすすめです。もし空室が不安だという場合には、サブリース(借り上げ)方式での賃貸管理委託を検討してみるのも良いでしょう。ただしその際にも、賃貸需要が見込める立地かどうか見極めることが大切です。

2. 納税資金を確保する

できる限り相続税を圧縮してもなお相続税の課税対象となる場合には、必要な納税資金を確保しておきましょう。相続税の額については、相続税の対象となる課税価格を各相続人の割合に応じて計算し、基礎控除などを差し引いたうえで、最終的に税率をかけて求めます。より詳細な計算方法および税率の早見表については、国税庁のホームページでも確認ができます。相続税を支払ったら貯蓄が全くなくなり、生活に支障が出てしまったということがないよう、あらかじめ準備しておくことが大切です。

また、株の値上がりや税制改正などで、現在の想定では相続税がかからない方でも、相続発生時には相続税の課税対象となる可能性も考えられます。さらには納税資金に限らず、様々な状況の変化にも対処できるよう、生活資金や介護費用等としても資金源を設けておくことが大切です。単に相続税評価額を下げるだけではなく安定して収益を生み出せる方法が、相続税対策には求められるのです。

3. 生前贈与(非課税枠・住宅資金・教育資金)

相続税対策としては「生前贈与」も効果的です。贈与税(暦年課税)は相続税と比較して税率が高くなる一方、贈与を受けた人は年間110万円までが基礎控除として非課税となるため、その枠を利用して計画的に贈与を行っていくことが相続税対策になります。例えば、現金を投資用マンションに換えて相続税評価額を下げ、得られた家賃収入を年間110万円以下の金額で、子供など相続人予定者に贈与していくと効果的です。

ただし、贈与における110万円の基礎控除を利用して生前贈与を行う場合には十分注意しましょう。最も注意したいのは、110万円以内の贈与でも、相続開始前3年以内に贈与を受けた財産は、「贈与財産の加算」として相続財産に組み込まれ、相続税額に影響する可能性があることです。この点を考えても、やはり早めに対策を行うことが大切だとわかります。

なお次のような場合にも、贈与が認められず相続財産とみなされることがありますので注意が必要です。
・毎年同じ月日に110万円を継続して渡しているなど、あまりに計画的に贈与を行っている場合。
・形式的で実態がない贈与の場合。例えば受贈者(贈与を受け取る人)が贈与の事実を知らないケースや、親が口座を管理していて受贈者本人では口座から入出金できないケースでは、贈与が無効となる可能性があります。
相続税対策として生前贈与を行う場合には、必要に応じて弁護士や税理士など専門家と相談しながら、贈与契約書の作成や金銭面の管理などを間違いなく行うことが求められます。

また、贈与では受贈者が課税対象となりますが、受贈者が他の親族からも贈与を受けていると、受贈した合計金額に対して贈与税が課される可能性があることにも注意しましょう。

加えて、一定の条件はありますが、贈与税には特例で非課税となるケースがあります。具体的には、直系尊属(父母や祖父母)から住宅資金や教育資金を贈与される場合、婚姻期間が20年以上の夫婦間で自宅もしくは自宅購入資金の贈与を行う場合などがありますから、活用を検討してみるのもよいでしょう。

「争族」対策としてやっておきたい3つのこと

相続税対策と併行して、相続が親族間の争い、つまり「争族」にならないよう、適切に財産を引き継ぐことができるような体制を整えておくことも大切です。

「争族」対策としては、大きく3つのポイントがあります。

1.財産を分割しやすい形態にしておく

「争族」となる原因の一つに、分割しづらい財産、つまり不動産を保有していることが挙げられます。土地や自宅、一棟マンションやアパートなどが分割しづらい財産の代表例です。実際に、国税庁が公表している平成28年の「相続財産の金額の構成比」は、土地・家屋あわせて43.5%にものぼります。このような財産は遺産分割で争いのもとになりやすい為、比較的分割しやすく、相続税対策としても効果的な投資用ワンルームマンションなども視野に入れ、資産の組み換えを検討すると良いでしょう。

2.分割方法を明確に指定しておく

分割方法が明確でないことも、「争族」となってしまう原因の一つです。そうならないために、存命中に遺言を作成しておけば、誰にどの財産を引き継ぐか指定することができます。

財産の分割では、公平性がポイントとなります。不平等な分割だと、後々家族・親族間のトラブルを引き起こします。保有している財産の価値や、結婚しているのか子供がいるのかなど相続人それぞれの経済環境を考慮し、家族・親族それぞれの事情を汲んで分割方法を指定すると良いでしょう。

ただし注意したいのは、包括遺贈(取り分のみ指定すること)などのように分割方法が明確でない場合、遺産分割協議を行う必要が生じ、「争族」となってしまう可能性が高まります。そのため、弁護士など専門家の助けを借りながら、間違いのない遺言を作成するようにしましょう。

必要があれば「公正証書遺言」の作成を検討するのも良いでしょう。公正証書遺言は、公証役場で承認立会いのもと公証人に作成してもらう遺言です。手数料はかかりますが、より確実に自らの意思を反映できる可能性が高まります。

3.存命中の財産管理体制を決めておく

生きているうちに万が一、認知症や介護が必要な状態などになってしまった場合も、「争族」となるリスクが高まります。その理由としては次のようなものがあります。

・誰が介護や世話をするのかで揉めてしまう。
・財産の分割に対して自分の意思を反映できない。
・相続税対策の意思決定ができなかったために、多額の相続税を納めなければならなくなった。

このような状況を未然に防ぐために、「家族信託(民事信託)」や成年後見制度の「任意後見」などの利用を検討すると良いでしょう。どちらも自らの判断能力が低下する前に、判断能力が低下した場合の財産の管理・処分を、家族など信頼できる人に任せることができます。違いとしては、家族信託では万が一認知症などで判断能力が低下しても、不動産の売却や購入などアグレッシブな相続税対策を行うことができ、費用が安く済む場合があります。一方で、任意後見では財産を守ることが重視されるため、不動産の売却・購入を通じた相続税対策を行うことができないばかりか、後見人への報酬などの費用や手続きの負担が大きいと言われています。

また、このような制度の利用を検討する中で家族・親族間のコミュニケーションが生まれれば、家族・親族どうしが争いを避け、協力し合う方向に進むことも期待できるでしょう。

まとめ

相続に関しては、将来、何が起こるかわからないからこそ、事前の対策が欠かせません。相続開始前に、トラブルへの発展を未然に防ぐための対策をしておきましょう。
 

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