「介護した嫁」も相続OK?「特別の寄与」とは何か

(写真= Photographee.eu/Shutterstock.com)
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2018年7月の民法改正で、相続の在り方が変わりました。注目されているテーマの一つが「特別の寄与の制度の創設」です。「亡くなった人の長男の嫁も相続できるようになった」と言われていますが、具体的にはどのような内容なのでしょうか。

改正民法で介護した子の嫁も財産請求できるようになった

2018年に民法が改正したことにより、これまでの相続のありかたが一部変わりました。その中の一つが「特別の寄与の制度」の創設です。

現行の制度では、被相続人の長男の嫁などといった「相続人以外の親族」が、被相続人の生前に介護や看病などで尽くしたとしても、相続時に遺産の分配などを受けることができません。そのため、「別居の長女は介護に一切タッチしていないのに500万円も相続で受け取れる。一方、長男の嫁は離職してまで被相続人の生前の介護に尽力したのに1円も受け取れない」といった不公平が生じていました。

しかし、特別の寄与の制度の創設により、相続人以外の親族で被相続人の生前の療養看護などを行った人は、相続人に対して寄与した分に関して金銭の請求を行うことができるようになりました。先述の長男の嫁の例でいえば、「離職してまで被相続人の介護で尽くしたのだから、特別寄与料として相続財産を分けてほしい」と長女などの相続人に対して請求できるようになったのです。

「特別の寄与」とは何か

ここで気になるのが「特別の寄与」です。そもそも「特別の寄与」とは何を意味するのでしょうか。

「特別の寄与」とは、特定の相続人に認められるもので、被相続人への無償の療養介護や労務があった場合に、本来の相続分にプラスして財産を渡すことを言います。民法第904条の2に定められたものです。

この特別の寄与の対象となるのは、相続人に限定されています。そのため、現行制度では、相続人である長女が無償で被相続人の介護をしたならばその分より多く相続させてもらうよう、他の相続人に要求することができるのですが、相続人でない親族はいくら介護等でがんばってもそれができないこととなっています。

なお、特別の寄与として請求できるのはおおよそ次の算式により計算した金額だと言われています。

「療養介護の日当分×日数×裁量分」

裁量分とは、介護のプロではない親族が介護を行ったことにより割り引く分です。一般的には0.7~0.8程度になります。

「特別の寄与」を請求できる場合と請求が難しい場合

ここで問題となるのが「どの程度療養介護に尽力したか」という点です。「私、これだけ生前の介護でがんばったのに!」と主張しても、その主張を客観的に測れなければ争いの元となります。

相続人以外の親族が特別の寄与を請求できるのは次の要件を満たした場合です。

無償の療養介護等であること

療養介護等とは、具体的には「介護や看護」「事業の手伝い」「債務の一部負担」などといった「被相続人の財産の維持や増加に対し貢献した」内容を言います。ここでカギになるのは「無償」あるいは「無償とほぼ同然」という点です。

たとえば、介護のたびに相応のお小遣いをもらっていた、あるいは被相続人の事業を手伝うにあたり相当の給料を受け取っていたならば、それは特別の寄与に当たりません。

片手間はダメ

また、夫婦間や親族間の相互扶助のレベルを超えた貢献でないと「特別の寄与」として認められるのは困難です。被相続人の入院中、仕事帰りに寝間着やタオルを届けた程度では「特別の寄与」とは言い難いのです。また、デイサービスや訪問介護を利用している場合も「特別の寄与」を親族が行ったと主張しにくくなります。

「離職してほぼ専従で被相続人の介護や看護にあたった」というのでなければ、「特別の寄与」を請求するのは難しいでしょう。

介護の内容もチェック

また、介護であれば何でもOKなわけではありません。被相続人の介護の程度が「要介護2以上」の状態であり、かつ「親族が介護に1年以上従事した」というのが「特別の寄与」の目安になります。

「特別の寄与」に関する注意点

上記以外にもいくつか注意点があります。

直接相続するのではなく、あくまでも相続人に対する一部請求

この制度は、従来の相続制度を阻害しないような設計になっています。つまり、法定相続人や遺言書により指定された相続人が財産を受け取る形は一切変わりません。また、合意が成立しない場合には、家庭裁判所で調停を行うことになります。

特別寄与料として受け取った金額には相続税がかかる

また、この請求により相続人以外の親族が相続財産を取得した場合、相続税の納税義務が発生します。遺贈により取得したものとみなされるからです。なお、申告及び納付の期限は特別寄与料の額が確定した日から10か月以内となっています。

「相続人以外の親族」は限定的

また、相続人以外の親族は次の範囲内となっています。

・被相続人の6親等内の親族
・配偶者
・3親等内の姻族

6親等内の親族というと「被相続人のはとこ」が含まれ、3親等内の姻族というと「被相続人の配偶者の甥や姪」も含まれます。

特別の寄与を検討するなら内容を記録せよ

また、何の証拠もなしでいきなり特別の寄与を請求しても、現場をよほど熟知している、あるいは相続人たちと親しいのでない限り、認められるのは困難です。そのため、次のような資料をとっておくとよいでしょう。

・日付のある療養介護等の記録(介護日記など)
・療養介護等に使った経費のレシートなど

また、被相続人の生前から相続人たちと被相続人の状況や介護などについて情報共有しておくとよいでしょう。

制度を活用できるのは2019年の7月から、請求期限に注意

なお、この制度が実際に施行されるのは今年、2019年の7月1日以降です。さらに、いつでも請求できるわけではなく、次のような請求期限があります。

・特別寄与者が相続の開始・相続人を知った日から6か月以内
・相続開始から1年以内

様々な注意点に気を付けて、活用していただければと思います。

鈴木 まゆ子
税理士鈴木まゆ子事務所代表。外国人のビザ業務を専業とする行政書士の夫と共に外国人の起業支援に従事する。国際相続などについての記事執筆にも取り組む。税金や金銭に絡む心理についても独自に研究中。

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