マンション投資の基本
2018/06/07

原因と対策を探る!シェアハウス投資「かぼちゃの馬車」はなぜ失敗したのか

(写真=Monkey Business Images/Shutterstock.com)
(写真=Monkey Business Images/Shutterstock.com)
近年、「シェアハウス」と呼ばれる物件が増加し、居住対象としても投資対象としても注目されています。シェアハウスとは、ひとつの住居内で複数の賃借人が生活し、各自のプライベート個室を単独で利用できる形態のものです。広いリビングや台所などの共有スペースでは入居者同士で楽しむことができ、浴室、トイレなどの設備を共同で利用します。

近年、ルームシェアを題材とするテレビ番組が話題となり、シェアハウスに対するおしゃれなライフスタイルのイメージから、若い世代を中心にシェアハウスに興味を持つ方も増えています。また、初対面の人と交流が持てる面白さに魅力を感じて入居を希望する方もいます。(ちなみに、ルームシェアは一つの住居を複数人で借りて共同利用するのに対し、シェアハウスはオーナーが賃借人それぞれと個別の賃貸借契約を結ぶことが多いという違いがあります)

特に、都心からも駅からも近い立地など単身者に便利な立地で、一般的なワンルームよりも低い賃料設定でシェアハウスを展開すれば、入居者に選ばれる可能性が考えられます。また、高い入居稼働率の維持が前提ではありますが、一般的なワンルームよりも一つの部屋を小さく作ることができるため、たとえ土地がそれほど広くなくても、部屋数を増やすことで大きな収益を生み出せる可能性もあります。このような理由から、投資対象として魅力を感じ、シェアハウス投資にチャレンジする方もいます。

しかし2018年初頭から、シェアハウス投資に関する悪いニュースが頻繁に報道されています。今回はシェアハウス投資がなぜ社会問題となっているのかを見ていくとともに、シェアハウス投資失敗の原因と、不動産投資で失敗しないための対策を考えてみます。

「かぼちゃの馬車」事件の経緯

まずは社会問題となっているシェアハウス投資「かぼちゃの馬車」事件について、これまでの経緯を見ていきます。

女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」を運営していた株式会社スマートデイズ(以下SD社)は、メインバンクからの融資が打ち切られたことをきっかけとして、2017年後半から事業経営が徐々に行き詰まりを見せました。2017年10月ごろから、SD社はシェアハウスのオーナーに対してサブリース賃料の減額を一方的に通知し始め、2018年1月以降、SD社はサブリース賃料の支払い自体を停止。賃料支払いが困難となった原因を調査するため、2018年2月16日には外部の専門家で構成される「外部調査委員会」が設置されました。

SD社の一連の動きを受け、オーナー側は「被害者の会」を結成するなどして集団訴訟の準備を進めることとなります。2018年2月26日にはSD社を含むシェアハウス投資トラブルに関する被害対策弁護団が結成され、3月2日に都内で開かれた弁護団によるオーナー向け説明会には、オーナーら約120名、マスコミ関係者約30名が参加しました。 さらに2018年3月27日、オーナー13人がSD社および関連会社10数社を提訴。総額2億円の損害賠償請求を行っています。

一方のSD社は、自力での事業建て直しが困難となったため、2018年4月9日、東京地裁に民事再生法の適用を申請し、4月12日にオーナー向け説明会を開くこととなりました。説明会には150人を超えるオーナーが参加し、怒号が飛び交う壮絶な会合となったと報道されています。その後、2018年4月18日、SD社の民事再生法適用申請は東京地裁により棄却されるとともに、保全管理命令を受けました。これ以降、SD社は破産への道を辿ることとなります。

「かぼちゃの馬車」事件で被害を受けた物件所有者は約1,000人とも言われています。その中には銀行への返済が滞り、自己破産を余儀なくされている人もいます。最悪のケースとして、所有者の中から自殺者が出ていると、物件所有者側の弁護団は明らかにしています。また、被害救済を謳う詐欺による二次被害も発生しています。

「かぼちゃの馬車」が立ち行かなくなった原因とは?5つの問題点

このように、悲惨とも言える事態となった「かぼちゃの馬車」事件ですが、なぜこのような被害が起きてしまったのでしょうか。大きく5つの問題点を考えてみます。

1.コンセプト・ビジネスモデルの問題

SD社が展開した「かぼちゃの馬車」は、何よりもまずコンセプトに問題がありました。シェアハウスに求められるのは、おしゃれなライフスタイルや、入居者同士の交流がありますが、「かぼちゃの馬車」ではそれらを実現できないことに加え、居住対象としても魅力に欠けていました。言うなれば、そもそもシェアハウスではなく、シェアハウスの名を使った現代版「昔ながらの共同トイレアパート」でしかなかったのです。そのため必然的に、投資物件としてのビジネスモデルは成り立ちませんでした。

SD社は販売価格をもとにサブリース賃料を設定していましたが、魅力に欠ける物件であったために、実際はそれよりも低い賃料でしか入居者に貸すことができていませんでした。しかも、入居稼働率は全物件で40%ほどと、空室が多く賃貸経営が成り立っていない状況でした。物件によっては20~30%で推移しているところもあったという話です。全国賃貸住宅新聞によると、SD社の60億円以上の債務超過のうち、サブリース賃料債務は23億円と全体の約4割を占めています。

また、SD社は入居者への仕事斡旋で紹介料を得られることを理由に、空室が多くても賃料を保証できるとオーナーに説明していました。ですが債務超過の金額を見る限り、明らかにこのビジネスモデルは成り立っていないと考えられます。

2.金融機関の問題

「かぼちゃの馬車」事件では、融資を行った金融機関の問題も指摘されています。先に述べたように、SD社のビジネスモデルには問題がありました。にもかかわらずSD社が急速にシェアハウスを展開できた要因の一つに、提携金融機関(以下S銀行)のごく一部の支店で行われた、ずさんな融資があります。

その内容としては、融資審査における書類の改ざんが日常的に横行していたことや、金利7.5%という高金利のフリーローン(目的の定めがないローン)を利用することにより通常融資の不足分や返済滞納分を補う仕組みとなっていることが挙げられます。

通常、不動産投資に融資を行う金融機関は、将来にわたり賃貸需要があるかなど投資先の事業性や、融資を受ける方の属性を考慮し、融資を実行するかどうかを判断します。ですがS銀行の場合は、融資実行が前提となっていたのか、問題のある事業にもかかわらず融資を行い、結果として「かぼちゃの馬車」の失敗によって返済が滞ってしまう事態を招いています。

3.賃貸管理の問題

不動産投資において安定した賃料収入を得るためには、物件を所有した後の賃貸管理が大切です。しかし、SD社が運営していた賃貸管理はずさんであったと言わざるを得ません。

まず、SD社が入居者募集、つまり賃料収入に直結する業務をおろそかにしていたことに問題があります。具体的に、入居者の募集は自社HPに掲載していただけで、費用のかかるポータルサイトへの掲載や、物件の周辺業者への地道な紹介活動を怠っていました。そもそも魅力に欠ける物件とわかっていたため、費用の投下や入居者確保の努力を無駄と考えていたのかもしれないと、疑念も生まれてしまいます。

次に、物件の管理状態が悪かったことも、低い入居稼働率となった要因の一つです。トイレやキッチンといった水回りを中心に、共有スペースの定期清掃が不十分で、居住環境としてはあまりにも不衛生な状態でした。加えて、マナーを守らない入居者に対しても管理会社からの注意がないため、居住環境は悪化の一途を辿りました。

4.物件自体の問題

管理が不十分であったことに加え、物件自体の構造を考えても魅力的とは言えず、そもそもシェアハウスとは呼べないものでした。例えば、シェアハウスを魅力付けるポイントの一つである共有ラウンジが、「かぼちゃの馬車」にはありませんでした。また、浴室がなくシャワーブースのみで数が少ないことも、女性には不便と感じられたことでしょう。さらに、個室の壁が薄いことも入居者の満足度を下げる要因でした。

なお、物件自体の魅力が低くても、賃料などの募集条件を魅力的にすることで入居者を確保する方法も考えられます。しかし実のところ、「かぼちゃの馬車」の賃料設定は、専用設備の整った都内のワンルームマンションと同等でした。入居者から選ばれる物件はどちらなのか、容易に想像できます。

5.入居者の問題

「かぼちゃの馬車」は、賃貸管理や物件自体の問題を抱えていたために、入居者の質が悪くなる傾向にありました。特に、SD社は仕事の斡旋をしていたことで、もともと仕事をしておらず貯金もない人が集まってくることが多かったと考えられます。なかには賃料を一度も支払わなかった入居者もいると聞きます。入居者から選ばれにくい状況であったために、入居審査を甘くせざるを得なかったことも想像されます。

シェアハウスでは共有スペースが多い分、入居者同士の良好な関係性が大切です。しかし、このような入居者は共同生活のマナーに問題があることも多く、他の入居者に迷惑をかけることも日常茶飯事でした。女性専用の物件のはずなのに、男性の知人を連れてくる入居者もいたようです。このような状況では、テレビ番組のような入居者同士の交流は、まず実現しないでしょう。

こうした条件が重なり、「かぼちゃの馬車」は入居者が確保できない状況が続きました。そして、今回のような大きな事件へと発展してしまったのです。

原因と対策:失敗しないための必要条件とは?

以上、5つの問題点を見てみると、シェアハウス投資「かぼちゃの馬車」で失敗した原因について、大きく2つの側面から考えることができます。

一つめの原因は、本来オーナーをサポートすべき立場の運営会社や金融機関が、ずさんな対応を行うなど不誠実であったことです。SD社はそもそもシェアハウスとは呼べない、入居者にとって魅力のない物件を、サブリースの仕組みで収支を良く見せかけ販売したことに加え、販売した後の賃貸管理をおろそかにしていました。また、S銀行は問題のある事業にもかかわらず融資を行っていました。まさに、販売して終わりというスタンスの典型例と言えます。

二つめの原因は、ハード面でもソフト面でも、入居者にとって魅力ある物件ではなかったことです。シェアハウスに良いイメージを描いて入居を決めた方も多いと思われますが、実際住んでみるとお世辞にも良い環境とは言えず、すぐに退去してしまったケースも多いのではないでしょうか。「かぼちゃの馬車」を購入したオーナーも、表面利回りや目先の手取り額ばかりに着目せず、長期的に安定した賃貸経営が成り立つのか、入居者に選ばれる物件なのかという視点で物件選びを行っていれば、事件に巻き込まれることもなかったと思われます。

このように見ていくと、対策として重要なのは、購入する販売会社や所有後を任せる賃貸管理会社などの「不動産会社選び」と、賃貸経営を成り立たせるための目先だけにとらわれない「物件選び」です。この2つを適切に行うことこそ、不動産投資で失敗しないために必要な条件と言えます。

サブリース契約は“適切な運用”が大事

サブリース(借り上げ)は、空室であってもオーナーに賃料が支払われる契約形態のため、一見すると安心できる仕組みのように思われます。確かにサブリースは、適切に活用することによって、不動産投資家の収益を安定させる優れた仕組みです。

しかし今回の事件で問題なのは、販売することを目的としたサブリース賃料を設定したことです。本来、賃貸管理会社はオーナーの安定収入を実現することを目的として、賃料相場を調べるなどしたうえで、サブリース事業が成り立つ範囲でサブリース賃料を設定すべきです。ですがSD社は、入居者を確保できる賃料よりも高いサブリース賃料を設定し、投資における収支を良く見せることで物件を販売していました。

さらにSD社の場合、純粋に賃貸経営やサブリース事業を成り立たせる努力をせず、サブリース事業の赤字部分を「入居者に対する仕事の斡旋」や、「かぼちゃの馬車」の建築から得られる利益で補てんしようとしていました。ですが、SD社はそれでもサブリース事業の赤字を埋めることができず、結局は破産の道へ向かうこととなってしまったのです。

たとえサブリース契約であっても、サブリースを行う不動産会社が立ち行かなくなれば、オーナーに賃料収入は入ってきません。サブリース契約を検討する前提として、不動産会社の見極め、さらには賃貸経営が成り立つかどうかの見極めが必要です。

シェアハウス投資の注意点:成功しているケースもあるが・・・

最後に、シェアハウス投資全般における注意点に触れておきます。シェアリングエコノミー(共有経済)という認識が広まりつつある現代において、シェアハウスというコンセプトに対し、魅力を感じることもあるでしょう。一方で、脱法ハウスや違法シェアハウス(違法貸しルーム)の存在も過去に問題視されていて、建築基準法や消防法、各自治体の条例、マンションの管理規約などに違反する物件も報告されています。

シェアハウスに投資する場合には当然、法令や条例を遵守しなければなりません。国土交通省が2013年9月に行った通知によると、そもそも「貸しルーム」(シェアハウスのことを指す)は建築基準法上の「寄宿舎」としています。つまり、一般的な賃貸物件を表す「共同住宅」には当たらないという見解です。これに基づき、シェアハウスでは一般的な賃貸物件よりも厳しい基準を満たすことが求められます。

(参考)国土交通省「違法貸しルーム対策に関する通知について」

また、国土交通省が2014年1月に発表した「違法貸しルームの是正指導等の状況について」によると、2013年12月31日時点で違法貸しルームとして通報があった物件は、2013年12月31日時点で1347件ありました。そして調査が完了した748件のうち621件については、特定行政庁における立入調査等で建築基準法や条例違反が判明しました。その後の是正指導により違反件数は減少した可能性がありますが、現在も違法なシェアハウスは一定数存在するでしょう。

(参考)国土交通省「違法貸しルームの是正指導等の状況について」

シェアハウス投資においては、満室経営などの成功事例がメディアで取り上げられるケースも見受けられますが、その事例はほんの一部の”レアケース”であることに注意しましょう。シェアハウスで入居者を集めている物件は、入居者受けするコンセプトやデザインなどの趣向を凝らし、共用スペースの充実した設備を売りにしているなど、企画力やセンスが問われます。リスクが高く、誰でも同じように利益を生み出せる不動産投資法ではないと思われます。

また、コンセプトやデザインは流行に左右される面があり、紹介される事例は一時的な成功に終わるかもしれません。シェアハウスとして長期的、将来的に安定した賃貸経営を実現するためには、常に時代の流行を追いかけ、継続的なリニューアルをはかるなど、手間や資金を惜しまず投じる必要がありそうです。会社員の方などが副業で行うには、あまり向いている方法とは言えません。どちらかと言えば、プロ向けの不動産投資法と考えたほうが良いでしょう。
 

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