不動産投資のリスクヘッジ(1)
金融機関から融資を受けて行う不動産投資は、あらかじめスキームが確立されています。関連する業者もたくさんいるため、初心者でも無理なくはじめることができます。事実、本職を持ちながら副業・兼業として不動産投資に着手しているサラリーマン投資家は少なくありません。
ただ一方で、初心者でもはじめやすいからこそ、不動産投資の“罠(ワナ)”にはまってしまう人も少なからず存在します。ここでいう罠とはつまり、不動産投資に潜むリスクのことです。あらかじめ、どのようなリスクがあるのかを理解せずにはじめるのは危険といえるでしょう。
例えばマンション投資をメインに置いたような不動産投資にはどのようなリスクがあるのでしょうか。これからはじめようと考えている方はもちろん、すでに実践している方も理解しておきたい、“不動産投資のリスク”について詳しく見ていきましょう。
(本記事は2018/06/27配信のものを2021/5/22に更新しております)
不動産投資のリスクはさまざま考えられますが、特に初心者が「失敗」を回避するために知っておきたい不動産投資のリスクには、次の4つがあります。
この「リスク4選」について、詳しく解説していきます。
不動産投資において最も恐れるリスクは「空室」でしょう。どんなに想定される利回りが高い物件であったとしても、空室になってしまえば家賃収入は得られません。いかに空室率を低く(=入居稼働率を高く)維持し、空室期間を短くするかが、不動産投資の成否の分かれ目といえます。
特に、融資を受けて不動産投資を行ううえでは、月々の返済を計画的に進めるために、何よりも「空室期間リスク」を避ける必要があります。
空室期間リスクを避けるうえで最も大切なのは、投資対象とする立地・エリアの賃貸需要を見極めることです。
例えば、地方や郊外にある物件は、表面利回りが高い傾向にあります。それは裏を返せば、入居稼働率が低く空室期間が長引く可能性、つまり空室リスクが高い可能性を示唆しています。特に、近隣の大学に通う学生や企業に勤める方がメインターゲットで他の賃貸需要が少ない場合には、移転などによる状況の変化も考慮しておいた方がいいでしょう。その点、都心部では賃貸需要は安定しています。そのため入居稼働率が高く、空室期間も短くなる傾向が見られます。
また中古物件のケースなら、現在の入居稼働率や空室期間はもちろんのこと、将来的な視点でも考えることが大切です。東京都(特に東京23区)では、現在も人口が増加し続けていて、今後も単身者を中心に人口が増加すると予測されています。都心の物件、なかでも単身者向けのワンルームマンションであれば、未婚の会社員、学生、外国籍の方など多様な入居者が想定されることから、現在だけでなく将来的にも安定した賃貸需要が期待できるといえます。
【参考記事】
「家賃変動リスク」についても考慮しておきましょう。家賃変動リスクで心配になるのが「古くなると家賃は下がるのでは?」という点です。
特に、日本では「新築信仰」と言われるほど、未だに新築物件が好まれる傾向にあります。そのため「家賃は物件の経年によって低下していく」と考えている方も多いことでしょう。よく言われているのが「新築物件は“新築プレミアム”の家賃設定になっているから、新築当初の入居者が退去した後、同じ家賃では次の入居者がつかない」という説です。
もちろん、日本の賃貸物件では、築年数が経過すると新築時より家賃が低下しているケースが多く見受けられます。ですが、それは「古くなったから家賃が低下した」のではなく「賃貸需要と供給のバランスで家賃が変動している」という見方のほうが、本質を捉えています。
実際に、必ずしも年々一定割合で家賃が低下するわけではありませんし、立地・エリアや物件のタイプ(マンションなのかアパートなのか、単身者向けのワンルームなのかファミリーなのか等)によって家賃の変動幅は異なります。築年数以外の要因で家賃が変動しているケースもあり、一概に「古くなると家賃が低下する」とはいえないのです。
先述した通り、家賃は需要と供給の関係によって変動します。賃貸需要が低いエリアでは、入居稼働率が低く(=空室率が高く)空室期間が長くなる傾向にあります。すると、家賃は低下傾向となります。例えば、地方や郊外の物件が乱立しているエリアでは将来、家賃の値下げ競争となり、どんなに家賃を下げても入居者が獲得できない状況にまで追い込まれてしまう可能性も否定できません。
逆に、入居稼働率が高く(=空室率が低く)空室期間が短ければ、家賃は低下しづらくなります。大規模再開発などで人口流入が予想され、賃貸需要の増加が見込めるエリアなどでは、築年数が経過しても家賃が上昇するケースもあります。
東京では、単身者を中心に将来にわたり安定した賃貸需要が期待できることに加え、投資用マンションの供給が需要に対して不足している状況があります。
需要面では、投資用マンションのメインターゲットである単身世帯数が参考になります。東京都の統計と予測によると、東京23区の単身世帯数は予測を上回って増加し、2015年では約242万5,000人となっています。さらに、予測値では2030年では約277万2,000人、2040年では約289万3,000人と、実に全世帯数の54.2%を占めることが予測されています。(参考:東京都の統計2019年3月時点より)
一方で供給面では、首都圏で見ても投資用マンションのストック数が約29万6,000戸(※2016年時点の中古ワンルームマンション、東京カンテイ調べ)であることに加え、首都圏の新築投資用マンションの供給戸数が2008年以降は年間5,000~7,000戸前後で推移しています。(参考:不動産経済研究所2019年8月データより)
新築投資用マンションの供給が少ない要因として、2000年代から東京23区それぞれの条例によって「ワンルーム規制」が強化されたこと、都心のマンション用地自体が少ないことが挙げられます。供給が少ない状況はこの先も続くと予想されます。
以上見てきたように、東京23区のように将来的に需要が期待でき、かつ供給も少ないと見通されるエリアを選ぶことで、家賃変動リスクに対する心配を減らして不動産投資を始められる可能性が高いといえるのです。
物件によっては、「建物」そのものにリスクが潜んでいる場合もあります。注意したいのは、修繕や設備交換、入居者退室時のリフォーム(原状回復)といった建物のメンテナンス面です。特に築年数の古い中古物件の場合、あらかじめ修繕費用を見込んでおかないと、思わぬ出費に苦しめられる可能性もあります。
また、区分マンションなのか一棟物件なのかによってもリスクが異なります。区分マンションであれば、共用部分の日常的な維持管理、建物全体の定期的な大規模修繕など、共用部分のことは管理組合が主体となって計画・実施します。その一方、一棟マンションやアパートは、共用部分や建物全体に関することの責任を全て一人で負わなくてはなりません。
特に、屋根や外壁といった共用部分の大規模修繕には多額の費用が必要になるため、自ら計画的な積み立てをしておく必要があります。この点は大きな負担となる可能性があり、初心者や本業を持つ方が注意しておきたいリスクと言えます。
【参考記事】
不動産業界全体として考えると、「不動産会社」のリスクも考慮しておかなければなりません。不動産会社の中には、顧客の利益ではなく、自社の利益を最優先にしているところもあります。そのような会社からのしつこい営業や強引な勧誘、おとり広告などには注意しましょう。また、不動産に関して詐欺や詐欺まがいの事件も発生しています。このような不動産会社と関わらないようにするため、不動産会社を見極め、選ぶというスタンスが求められます。
そこで大切なのは、購入時だけでなく購入した後も安心して任せられるかということです。購入した後の賃貸管理業務は入居者募集をはじめ、毎月の家賃回収、入居中の対応、退去時の手続きなど多岐にわたります。これらを自分だけで行うのは困難なことから、初心者や本業を持つ方は賃貸管理会社に任せることがほとんどです。
なかでも、入居者募集は家賃収入に直結する重要な業務です。それにもかかわらず、物件を販売した不動産会社だからという理由だけで賃貸管理を任せてしまうケースも見受けられます。不動産会社を選ぶときには入居者を確保する力があることを第一条件とし、多岐にわたる業務全般を強力にサポートしてくれる会社を選ぶと良いでしょう。
【参考記事】
以上、初心者が失敗しないために知っておきたい4つのリスクをご紹介しました。これらは不動産投資の成功と失敗に大きく関わりますので、特に注意しておきましょう。
なお、「災害リスク」や「金利上昇リスク」など、他にも不動産投資のリスクはさまざま考えられます。しかし、リスクを必要以上に心配することはありません。不動産投資の初心者であっても、あらかじめリスクについてきちんと認識しておけば、失敗する可能性を減らすことができます。それぞれのリスクを踏まえつつ、減らす努力をするように心がけましょう。
特に、不動産投資に成功するポイントだけでなく、失敗するポイント、つまり「リスク」についてもしっかりとチェックしておくことが重要です。不動産投資のリスクに注意して取り組むことで、無理のない投資が実行できます。ぜひ、失敗しないことを意識して行動しましょう。
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