不動産投資は、銀行をはじめとする金融機関から融資を受けてアパートやマンションを購入し、入居者を獲得することで家賃収入(インカムゲイン)を得る投資手法です。そのため、物件の精査はもちろんのことですが、いかに融資を受けられるかが大きなポイントとなります。ここでは、不動産投資における融資審査のポイントと、フリーランスといった自営業者等も含む様々な属性の方でも対応できうる幅広い融資方法について解説します。
(本記事は2018/07/12配信のものを2021/03/27に更新しております)
不動産投資で成功する秘訣の一つに「融資戦略」があります。成功者は、金融機関がどのように融資付けしているかを知り、対策を行っているからこそ、より良い条件で融資を受けて不動産投資を実践し、成功確率を高めていると言えるでしょう。
一方で、金融機関から融資を受けるには、物件力つまり物件の担保価値も審査対象ですが、「個人の審査」も必要となります。個人の審査とは、その人がどのくらいの「信用力」があるのかを測るということです。そこで重要になるのが、不動産投資を行う方本人の「属性」となるわけです。
銀行をはじめとする金融機関の融資には、主に「個人審査」と「物件審査」の2種類があります。
個人審査とは、その人がどのくらいの返済能力を有しているのかを評価するものです。主に以下5項目などが評価の対象となります。
一方で物件審査とは、購入する物件がどのくらいの担保価値を有しているのかを評価するものです。もし万が一、実行した融資が焦げついてしまった場合、担保である不動産を売却してもらい、どのくらい返済してもらえるのかを試算するために行うものです。
特に不動産投資を行う方が意識しておきたいのが“個人の審査”でしょう。いわゆる「属性」が優れていなければ、より良い条件で融資を受けることはできません。属性とはつまり、「安定した職業に就いているか?」「年収は一定水準を超えているのか?」などです。
一概には言えませんが、不動産投資において融資が受けられる金額は、おおむね年収の15倍ほどと言われています。たとえば、年収500万円の方であれば概ね7,500万円まで、年収800万円の方であれば概ね1億2,000万円までは融資を受けられることになるわけです。それが一つの目安になるでしょう。
また安定した職業として「サラリーマン」つまり大手上場企業の会社員や公務員の方は審査が通りやすい傾向にあります。一方、フリーランスや自営業者の方は、収入が安定しないため審査が通りにくいとされています。
では、フリーランスや自営業者の方は、金融機関から融資を受けて不動産投資をすることはできないのでしょうか。そんなことはありません。実は、いくつか方法があります。
金融機関には、審査が厳しい金融機関と、それほど厳しくない金融機関が存在しています。審査が厳しくなければ、それほど良い属性でなくても審査が通る可能性があるということです。そのような金融機関に相談すれば、属性に関わらず融資を受けられるかもしれません。
不動産投資では、銀行や信用金庫、信用組合よりも、「ノンバンク」から融資を受ける方法が一般的です。ノンバンクとは、預金の受け入れを行わず、貸出業務のみを行っている金融機関のことです。一口にノンバンクといっても、消費者金融、事業者金融、信販会社、クレジットカード会社など形態はさまざまで、不動産関連の融資をメイン事業とする金融機関もあります。
個人で行う不動産投資への融資に対して、都市銀行では消極的なことが多い一方で、大手信販会社などのノンバンクでは積極的に融資を行っています。当然、年収など一定の要件はあるものの、属性の受け入れは幅広い傾向があります。フリーランスや自営業、転職して間もない方などは、ノンバンクに相談してみるのもひとつの選択肢となるでしょう。
近年では、ノンバンクは銀行と比べて金利がほとんど変わらず、融資期間を最長45年にできる、ガン保障のある団信やワイド団信が利用できるなど、魅力的な条件で融資を受けられる商品も増えています。
フリーランスといった自営業者等の方に限りませんが、融資を受けやすくするために「自己資金を投入する」という方法があります。融資審査を申し込んだものの良い回答が得られなかったならば、次の一手として、物件価格の3割~5割程度を目安に自己資金を準備し、不動産投資会社や金融機関に相談してみましょう。
融資を活用して「自己資金ゼロからでも」資産形成を始められる不動産投資の魅力は薄れてしまうものの、不動産投資に取り組む意欲が高い方であれば、道が開ける可能性もゼロではありません。
このように、個人の審査という問題をクリアするためには、対象となる金融機関を見極める必要があります。また、提携する金融機関が多数あり、融資に強い経験豊富な不動産会社を味方につけることも大切です。
ただ、いくら融資を受けられると言っても、良質な物件選びを無視してしまってはいけません。不動産投資は購入してからがスタートです。将来にわたり安定した家賃収入を得るため、投資する前に所有後の「マンション経営」「アパート経営」といった賃貸経営が成り立つのかを見極めなくてはなりません。そこで重視したいのは「資産価値の高い物件か」「将来的に賃貸需要が見込めるか」というポイントです。
金融機関は融資の実行を決定するにあたり、属性と物件のバランスや、物件を取り扱う不動産会社を考慮し、総合的な判断を行います。当然、資産価値の高い物件や、長期的な視野で賃貸経営が成り立つと考えられる(つまり事業適性がある)立地の物件に対しては、金融機関も融資に前向きになり、条件の良い融資を受けやすくなります。このように融資という面を考えると、例えば都心をはじめとした好立地かつ単身世帯需要の高いワンルームマンションは投資対象として魅力的であるともいえます。
【参考記事】不動産投資OKな「築年数」「立地」は?中古・区分マンションの選定ポイント
融資に関連するニュースとして、昨今、シェアハウス「かぼちゃの馬車」の問題が頻繁に報道されています。この件では運営会社であった株式会社スマートデイズのずさんな事業経営が問題視されていますが、一方で金融機関の融資スタンスも問題となりました。本来は融資を受けることができないような属性の方にも書類を改ざんするなどして無理に融資を行ったこと、事業適性が低い物件とわかっていながら実現不可能な事業計画書を作成するなどして融資を行ったことが原因となり、その結果問題が大きくなったという見方もあります。
【参考記事】なぜシェアハウス投資「かぼちゃの馬車」は失敗したのか?原因と対策を学ぶ
ここまで、不安定な属性とされるフリーランスといった自営業者等の方でも不動産投資の融資を受けられるのかについてご説明しました。良好な属性とされる「サラリーマン」つまり会社員や公務員の方とは融資戦略が異なってきます。会社員や公務員の方で転職や独立などを考えている方は、現在の信用力を生かせる今のうちに不動産投資を検討すれば、よりスムーズに始められる可能性が高くなります。
加えて、不動産投資においては単に「融資を受ける」という部分にとらわれるのではなく、例えばマンションを所有した後の「マンション経営」という視点を忘れないことが大切です。そして、不動産会社や物件について精査した上で、金融機関からより良い条件で融資を受け、中長期的に安定した不動産投資を行えるようにしましょう。
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