不動産投資のリスクヘッジ(2)

高利回り物件に注意!地方の格安アパート・マンション経営のリスクとは

(写真=patchii/Shutterstock.com)
(写真=patchii/Shutterstock.com)

不動産投資を始めようと物件探しをしていると、つい目が行ってしまうのが地方や郊外の物件ではないでしょうか。都心の物件と比べて何割も安く、利回りは10%を超える案件も少なくありません。

しかし、利回りが高いということはリスクも高いということを忘れてはいけません。この記事では、地方や郊外のアパート・マンション経営の注意点、リスクについてまとめていきます。

(本記事は2017/12/16配信のものを2021/11/15に更新しております)

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▼目次

  1. 「相続税対策」で地方・郊外でアパート建設が増加
  2. 地方・郊外では「賃貸需要の見極め」が難しい
  3. 都心と地方・郊外で異なる「サブリース(マスターリース)のリスク」
  4. 一棟アパート経営のリスク
  5. 初心者は「安全性」を重視したリスク管理を

1. 近年は相続税対策目的に地方や郊外でアパート建設が増加

平成27年の相続税改正により、基礎控除額が従来の6割ほどまで大きく減額され、一部税率が引き上げられました。そのため、従来にも増して相続税対策が叫ばれるようになり、低金利も相まって目をつけられたのがアパート建築です。

「所有する現金や土地の評価額を実態以上に下げることができるため、将来に相続税として取られるよりもアパートを持つ方が賢い」という相続税対策が全国で広まりました。その中で、地方や郊外の地主や富裕層が中心となり、新築アパートを建てていくのですが、これには大きな落とし穴があります。

【参考記事】
なぜ不動産投資が相続税対策として節税に大きく効果的なのか?

2. 地方・郊外では「賃貸需要の見極め」が難しい

2-1. 地方や郊外での賃貸需要には厳しい見極めがないと危険

地方や郊外の賃貸需要は今後も下がっていくと見られています。なぜなら、人口が減る中、地方や郊外の人々は都心に流入しているからです。残念ながら、地方や郊外でのアパート・マンションの賃貸需要はかなり厳しく見極めないと失敗のリスクが高いというのが現状かもしれません。

2-2. 見極めの方法には「空室率」の比較

簡単な見極め方の一つに「空室率」があります。 総務省統計局の「平成30年住宅・土地統計調査 調査の結果」をもとに賃貸物件の空室率を算出すると、全国平均は18.5%です(賃貸住宅総数2,339万2,000戸に対して、賃貸住宅の空家は432万7,000戸)。この数値と比較して、検討エリアの賃貸需要はどうなのかを調べましょう。また空室率が低くても、将来に渡って賃貸需要が続くかどうかも見極める必要があります。

2-3. 大学・企業・工場などの賃貸需要が突然途絶えるリスクも

賃貸需要を厳しい目で見極めるにあたり大切なのは、需要量もさることながら、入居者の「多様性」が期待できるかどうかです。たとえば、ワンルーム・1Kタイプの単身者向け物件では、ターゲットとなる入居者は大学生なのか社会人なのか、社会人であれば勤務地がどこで、どんな職種なのか、女性や高齢者が住んでも安心なのか、在留外国人を受け入れられるのかなど、多角的な視点で賃貸需要を判断しなければなりません。

最近では、大企業の工場や大学キャンパスも、都心への流入が顕著です。地方の例でありうるのが、今までは近くに大学があって満室稼働だったけれど、少子化や経済状況の影響で学生が減ったり、キャンパスが閉鎖になってしまったりの理由で、賃貸需要が一気になくなってしまったというアパートやマンションのオーナーも増えています。不動産投資は今後数十年先を見据えての判断が必要です。地方物件の場合は特に、慎重な分析・判断をするべきです。

【参考記事】
都心物件と地方物件。それぞれのメリット・デメリットとは

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3. 都心と地方・郊外で異なる「サブリース(マスターリース)のリスク」

3-1. サブリース(マスターリース)のリスクとトラブルケース

サブリース(マスターリース)とは、アパートやマンションを管理会社が借り上げてくれる制度です。オーナーは空室・満室に関わらず、毎月一定の家賃収入が得られます。管理の手間がかからず、空室率も気にしなくてよいのですが、

  • 5年経過後に大幅な賃料減額提示をされた
  • 修繕費として料金を請求された
といったトラブルが増加して国会でも話題になっていました。
  • 合意しないとサブリース(マスターリース)契約を打ち切られた
  • サブリース(マスターリース)契約をした会社が倒産してしまって今後の対応ができない

3-2. 法に則って交わしたサブリース(マスターリース)契約には当然責任が伴う

サブリース(マスターリース)契約とは上述の通り、オーナーが管理会社に借りてもらっているだけで、オーナーが賃貸人であることに変わりはありません。賃借人である管理会社からの「賃料減額請求権」「必要費償還請求権」は民法上の正当な権利なので、譲歩して合意に持っていくのは賃貸人の責任なのです。

3-3. 契約内容は自身で理解し、できれば賃貸需要の見込める地域を選ぶこと

リスクの高い地方物件でも、中にはサブリース(マスターリース)があるから安心だと考える人もいるかと思いますが、やはりサブリース(マスターリース)契約の内容について契約前に契約者自身でしっかりと責任をもって確認しておきましょう。難しいことは分からないからといって、自身で理解することを放棄し営業マン任せにしていると、あとでとんでもないことになってしまう可能性も十分にありえるのです。

もっとも、都心部のように賃貸需要の見込める地域でのサブリース(マスターリース)であれば、大幅に賃料減額となるリスクの可能性は低いと考えられ、空室対策の選択肢の一つとして有効でしょう。サブリース(マスターリース)があるというだけで安心するのではなく、賃貸経営が成り立つ立地かどうかを見極めることが大切です。

【参考記事】
マンション経営の空室対策にサブリース(マスターリース)は良いか?メリットと注意点とは

4. 一棟アパート経営のリスク

4-1. アパート経営を行うならそれなりの“覚悟”が必要

地方や郊外では、スケールメリットのある一棟アパートへの投資が目立ちます。しかし、一棟まるごとの経営は、その立地、建物の責任をすべて自分が背負う覚悟が必要です。例えば、数年ごとの修繕計画の立案、費用の積立、日常のメンテナンス、周辺環境の変化への対応など、様々な要因が賃貸経営のリスクとなります。

4-2. 初心者やサラリーマンなら区分所有でのマンション経営も

その点、区分所有マンションでの賃貸経営において、共用部分の管理や大規模修繕はマンションごとの管理組合が主体となって計画的に準備をしています。そのため本人は定期的に管理費と修繕積立金を支払うことで、比較的手間がかからず、精神的な負担も少ない中でマンション経営を行うことができるでしょう。また、違うマンションにおいて複数物件を所有することでリスク分散もしやすく、さらに売却時の流動性も比較的高いので、区分所有でのマンション経営は不動産投資初心者やサラリーマンに向いています。

【参考記事】
区分投資と一棟投資。それぞれのメリット・デメリットとは

5. 初心者は「安全性」を重視したリスク管理を

5-1. 地方や郊外でのアパート経営の多くは相続税対策

相続税改正前後から、地方や郊外での新築アパート建築が目立ち始め、地主などが相続税対策としてサブリース(マスターリース)とセットで建築しているケースが多くを占めているといわれています。不動産投資による収益を得ることではなく、相続税の圧縮に重きを置いているので、そもそもの目的が異なります。

5-2. 初心者・サラリーマンなら収益性よりも「安定経営」

地方や郊外物件への投資は、多方面へのリスクコントロールが求められます。入居付け、賃貸需要、サブリース(マスターリース)、一棟アパート経営に対して知識があり、ノウハウのある投資家ならば、場合によっては向いているかもしれません。

しかし基本的には、資産運用・資産形成は収益性よりも安全性を重視すべきと考えられています。初めて不動産投資をする方やサラリーマンは、リスク管理がしやすく、安定経営の望める都心部の区分所有のマンション経営を中心に検討してみてはいかがでしょうか。

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