マンション経営において、満室経営が永遠に続くということは難しく、どこかに空室が発生する可能性があります。空室が発生すると、入居者募集をして次の入居者を募ることにより、空室期間を短縮しようと努力するわけですが、入居者付けの部分でいつも悩むのが、どこまでリフォームをしたら良いか、という問題です。
最低限の原状回復工事をしようと考えていたとしても、「一体どこまでが原状回復工事なのか?」という疑問もあるでしょう。リフォーム会社に言われるがまま工事を依頼すると、金額が大きくなるケースもあります。今回は、原状回復工事の概要とポイントを中心に解説していきます。
原状回復の定義(東京ルール)
公的に原状回復という定義がされている東京ルールというものがあります。
これは、退去時の敷金精算の際に、いくらまでが貸主負担という部分で揉める事例が多くあったために、制定されました。
そこでは、借主が追っている「原状回復」義務を、借りた当時と同じ状況に戻すということではなく、借主の責任によって傷ついた壁や床などを修復すること、と述べられています。つまり、借主の責任ではない、経年劣化に起こる自然消耗に対する修繕は原状回復義務に含まれていないため、貸主負担となっています。
ただし、貸主からすると、次の入居者付けを早くするためには少なくとも退去した入居者が住み始めた時の状態までは修繕したいものです。壁紙は経年劣化で汚れたものだから、借主は負担しないということであっても、貸主としては修繕しないと入居者募集を考えるとマイナスです。
上記の東京ルールではそうなっているものの、明らかに貸主有利な契約になるなど、一般常識からしておかしいと判断される条項でない限り、特約を定めることは可能です。従って、退去時の自分の負担を少なくするために、契約時に敷金の精算についてどうするべきかを詰めておくべきです。
入居者付けの観点からやっておくべき工事
入居者付けを考えると、部屋をきれいに見せるためにより多くの工事をしておきたいところですが、マンション経営もビジネスです。より少ない費用で、入居者募集においてより効果的なポイントだけ修繕するというマインドは持たなければなりません。
その中で、やっておくべき原状回復工事の代表例は、汚れた壁紙の張り替え、汚れた床の張り替え、ルームクリーニングの3点です。
ただし、壁紙は全部張り替えるのではなく、あくまでクリーニングでは落としきれない汚れた壁紙のみです。床に関しても同様です。全部やりたい気持ちも分かりますが、汚れていなければ変えなくてもそこまで入居者付けには影響しないことが多いです。
また、少ない費用で効果的なのはウォシュレットの設置や、電熱コンロからIHコンロへの交換などがあります。これらは数万円からできることに加えて、新品のものだと印象が良くなり、費用対効果が良い工事です。
費用計上と資産計上
最後に支払った修繕費の税務上の処理についてです。
税務上の定義としては、もし支払った修繕費用によって、その資産の機能が追加され効用が高まる、または、耐用年数が高まる等資産の価値が上がった場合は、資産計上するとあります。こういった費用を資本的支出と税務上は表現しています。
それに対して、通常の原状回復のための費用は修繕的支出と言い、これは発生時に費用として計上することができます。
原状回復工事だけをしているのであれば、基本的に費用として計上できる修繕的支出なので、資産計上について考える必要はありません。もし、大規模リノベーション等の大規模な工事をした場合は、資産計上するもの、費用計上できるものについて税理士などに確認しておくことをおすすめします。
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