新型コロナウイルスの影響が出る近年まで、東京はインバウンド需要の高まりや、東京オリンピック・パラリンピックの開催が迫っていたなど、海外からの大きな注目を集めていました。もちろん、コロナ禍が落ち着くことが前提ですが、そのなかで東京に対する国際的な評価が高まれば、今後の日本の発展における大きな原動力となることは疑う余地がありません。
では「グローバル都市」という観点で見たときに、東京の魅力はどのようなところにあるのでしょうか。この記事では「森記念財団 世界の都市総合ランキング(GPCI)」を参考に、東京の世界的な位置づけや東京の強み・弱み、そしてこれからの課題について解説します。
(本記事は2019/07/31配信のものを2020/06/09に更新しております)
「世界の都市総合ランキンキング(Global Power City Index)」(以下GPCI)とは「森記念財団 都市戦略研究所」が毎年発表する、都市の「総合力」で順位づけしたランキングです。
「森記念財団」は、森ビル及び森トラスト・ホールディングスを創業した森泰吉郎氏が、1981年に設立した財団法人です。森記念財団が運営する「都市戦略研究所」は、都市分野における戦略・政策を研究するシンクタンクで、日本の大臣を歴任した政治家でもあり経済学者でもある竹中平蔵氏が所長を務めています。
ランキングでは都市を「経済/研究・開発/文化・交流/居住/環境/交通・アクセス」の6つの分野から総合的に評価し、人や企業が魅力的に感じる都市はどこなのかという観点から順位づけされています。
※「世界の都市総合力ランキング 概要版|2018年10月」森記念財団 都市戦略研究所
2018年に発表されたGPCIによると、東京は「総合ランキング」で、ロンドン、ニューヨークにつづく3位でした。上位のロンドン・ニューヨークが大きくスコアを上げるなか、東京はスコア微増で3位を維持した形になります。
東京の過去10年の総合スコアを見ると、2007年のリーマンショックで世界各都市のスコアが下落する中、東京のスコアは微減でしたが、2011年東日本大震災をうけて下落傾向となりました。しかし、2013年9月に東京オリンピック・パラリンピックの開催が決定されたのを機に、現在までスコアが上昇しています。
東京以外の上位都市をみると、トップのロンドンは2012年のロンドンオリンピック・パラリンピックが開催されて以降、伸び続けているというのが特徴的です。2016年にはEU離脱が国民投票で決定されましたが、都市力の評価を下げるほど影響はないと見られます。
また以前3位につけていたパリは、リーマンショック以降都市力の評価を徐々に下げるなか、2015年に「パリ同時多発テロ」が発生しました。その後、2016年には東京を下回り4位となっています。2024年のオリンピック・パラリンピック開催地に決定したことが今後どう影響するのか、動向を注視する必要があります。
さらにアジアの他都市を見ると、シンガポールが5位につけており勢いがあります。一方で、北京や上海が大幅に順位を落としていることも見逃せません。北京は交通・アクセス分野の評価を落とし13位から23位へ、上海は経済分野でのスコアを落とし15位から26位に後退しています。
東京は全6分野のうち4分野でトップ5に入ることを見てもわかるように、総合力が高い都市です。
ここでは上記3分野についてそれぞれ解説します。
「経済」分野で東京は3位と非常に高い評価をされています。
その要因として、GDPの成長率が上がったことが要因の1つです。
また本調査では、世界中で働き方や場所が変化し従業員や企業が都市に求めるニーズが変化していることをふまえて「ワークプレイス充実度」という評価基準が追加されました。
そこで、東京にはコワーキングスペースが多くあり、小規模の新規事業が発展する環境が整っているので都市の活性化に繋がるだろうという評価をされたことも上位に位置する要因の1つです。
「研究・開発」分野では2位を獲得しています。
東京は「研究者数」や「研究開発費」、「特許登録件数」が世界的に非常に多いことが評価されています。
これは日本の主要な大学や研究機関が東京に集中していることが関係していると考えられます。
分野別ランキングの「文化・交流」で4位、アクター別ランキングの「観光客」で2位と観光という面でも非常に高い評価を受けていることも東京の強みです。
特に観光のなかでも、「食事の選択肢」や「買物の選択肢」の評価が高く、日本食や高品質の家電製品といったものが海外から高い評価を受けていることが見てとることができます。
の3つが上げられます。
研究・開発分野の中でもイノベーションが起りやすい環境という観点で「スタートアップ環境」が重要視されています。しかし東京は「スタートアップ環境」で18位と低く課題が残っています。
研究者や経営者にとって魅力的な都市というのは、新しい技術の導入やビジネスの立ち上げがしやすい環境が整っている都市です。そのような人たちが集まれば結果的に都市の活性化につながるので、スタートアップが事業を行いやすい環境を整えることが課題の1つとなっています。
東京の強みでも紹介したように、東京は観光客から食や買い物という点で非常に高い評価を受けていることや、東京オリンピック・パラリンピックが開催されることから観光面での成長が期待できます。
しかし、「ハイクラス客室数」「国際線直行便数」で各都市に遅れをとっており観光客の受け入れ環境という点が課題点です。
海外からの観光客を受け入れるホテル数もホテル数全体では世界の各都市と比べても少なくはありません、しかしハイクラス客室数をみるとかなりの遅れをとっているという状況です。また、国際線の直行便の本数も28位と下位にいます。
これらの弱みは解決すべき重要度の高い課題といえるでしょう。
総合6分野のうち「環境」で29位とかなり下位に位置していることが、東京の大きな課題と言えるでしょう。 特に「環境への取り組み」が低いということがネックになっています。
世界的に気候変動への意識が高まっているなか、都市が掲げる施策や目標の重要性は年々増しています。環境に優しい街づくりなど都市独自の環境に取り組みや国際的な取り組みへの参加を積極的に行うことで、将来的に持続性のある都市を作っていくことが求められています。
以上、森記念財団の「世界の都市総合ランキング(GPCI)」から、世界的に見た東京の位置づけや強み、弱みについて見てきました。ランキングにおいて世界第3位の評価を受けていてもなお、東京には「のびしろ」があることがお分かりいただけたと思います。
これを参考に東京の強みを伸ばし、弱みを改善するためには、
ということが必要になってくるのではないでしょうか。
なぜ人や企業が東京を訪れるのかということを再確認して、それらを受け入れる環境を整えることでより世界中から魅力のある都市として認識されるでしょう。
特に、環境への取り組みで下位である点を改善するには、「東京都心の再開発」によって人にも環境にも優しく利便性が良い街作りをしていく必要があると思われます。
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