進む東京都心の再開発(14)
青山や赤坂とともに、都心のブランドエリア「3A(Aoyama・Akasaka・Azabu)」の一角を担う麻布エリアは、都内でも有数のプレミアム立地として知られ、憧れの存在となっています。富裕層が多く居住する高級住宅街が形成され、洗練された街並みが特徴的です。主要各国の大使館も点在し、東京タワーや六本木エリアにも近い立地として、多くの人々を集める土壌が根付いています。
もともと「麻布」という名前が使われはじめたのは、江戸時代中期ごろとされています。当時、麻を栽培して布を織っていたことから命名されたとされており、かつては麻布区もありましたが、現在では、当時の芝区や赤坂区とともに港区のひとつとなっています。
とくに麻布十番エリアは、麻布十番駅の開業以降に再開発が活性化し、歴史があり情緒溢れる街並みに新たな魅力が加わっています。また、今後の再開発計画が進む周辺エリアとの相乗効果も期待できるエリアです。今回は麻布十番エリアの再開発について見ていきます。
(本記事は2018/12/10配信のものを2021/1/25に更新しております)
麻布十番は、江戸時代より麻布山善福寺の門前町として「麻布十番商店街」を中心に発展してきました。麻布十番商店街には創業100年を超える老舗や、長く愛され続けている名店が軒を連ねています。
以前は麻布十番エリアに鉄道が通っておらず、公共機関はバス路線だけという不便な立地でしたが、そのような環境下でも多くの人々を引き付けてきた街の魅力が現在も受け継がれています。ある意味では、ラグジュアリーでセレブ感の強いエリアと庶民的な風情が一体化している特殊な地域であるといえるかもしれません。
麻布十番エリアにおいて大きな転機となったのが、2000年9月26日に、東京メトロ南北線と都営大江戸線の開通に伴い「麻布十番駅」が誕生したことです。駅の開業により麻布十番を訪れる人々の利便性が向上したことはもちろん、都心の主要エリアへのアクセスが良いことから居住エリアとしての価値が向上することとなりました。
また、隣接する六本木エリアの発展は、麻布十番エリアにも良い影響をもたらします。2003年4月には「六本木ヒルズ」が麻布十番駅から徒歩圏内に誕生、2007年1月には「東京ミッドタウン」が誕生しました。都心を代表する大規模複合施設を日常の拠点とするエリアとして、麻布十番の魅力がプラスされた出来事と言えるでしょう。
麻布十番エリアでは麻布十番駅の開業を契機として、麻布十番駅の東側、港区三田一丁目の「三田小山町」と呼ばれる区域で大規模な再開発が進められてきました。既に完成済みの再開発としては、三田小山町東地区第一種市街地再開発事業により2009年5月に竣工した「シティタワー麻布十番」、三田小山町地区第一種市街地再開発事業により2010年5月に竣工した「パーク・コート麻布十番(ザ・タワー/三田ガーデン棟)」があります。
三田小山町ではその後、2016年6月に「三田小山町西地区第一種市街地再開発事業」が都市計画決定されています。この再開発事業では、約2.5ヘクタールの木造住宅密集区域を対象として、住宅棟3棟、事務所棟1棟、延床面積約18万平方メートルに及ぶ施設の建築、約2,500平方メートルに及ぶ公園の整備、沿道の整備が計画されています。
三田小山町西地区市街地再開発準備組合によると、北街区の住宅A棟は「地上45階、高さ165メートル、約790戸」、 南街区の住宅B棟は「地上33階、高さ125メートル」、住宅C棟は「地上16階、高さ80メートル」、B棟とC棟合計で約510戸になるとされています。
※2021年1月24日追記・更新※
「三田小山町西地区第一種市街地再開発事業」は2020年9月10日、市街地再開発組合設立の認可を東京都より受けました。2021年1月現在、三井不動産レジデンシャル株式会社、日鉄興和不動産株式会社、三菱地所レジデンス株式会社、一般財団法人首都圏不燃建築公社の4社により再開発事業が進められています。
具体的には、地上44階建ての高層棟を中心に、約1450戸の共同住宅、オフィス・店舗・保育園等の複合施設を建設、および古川沿いの広場や約2,500平米におよぶ公園を整備する計画となっています。
三田小山町西地区では今後、2023年3月の本体工事着工、2027年度の竣工を目指し事業が進められます。最終的には、三田小山町エリア全体で4ヘクタールを超える区域において、安全で快適な魅力ある複合市街地が形成される見通しとなっています。
他にも現在進行中の再開発として注目しておきたいのは、麻布十番に隣接する「虎ノ門エリア」の再開発です。虎ノ門エリアの再開発としては、2014年6月に開業した「虎ノ門ヒルズ」が記憶に新しいかと思いますが、その後も虎ノ門ヒルズ隣接地において3棟の超高層ビル建設が進められています。
2020年1月には「虎ノ門ヒルズ ビジネスタワー」が完成、今後「虎ノ門ヒルズ レジデンシャルタワー」(2021年竣工予定)および「(仮称)虎ノ門ヒルズ ステーションタワー」(2023年7月竣工予定)の完成が控えており、最終的には区域面積約7.5ヘクタール、延床面積約80万平米に及ぶ「虎ノ門ヒルズ群」が誕生することとなります。
また、地下では開発が進められてきた東京メトロ日比谷線の新駅「虎ノ門ヒルズ駅」が、2020年6月6日に晴れて開業を迎えました。
【参考記事】虎ノ門ヒルズ隣接地では3棟の超高層ビルと新駅の開発が進む
また、東京メトロ日比谷線「神谷町駅」と東京メトロ南北線「六本木一丁目駅」の間に位置する「虎ノ門・麻布台地区(虎ノ門・麻布台プロジェクト)」においても、超都心にありながら「約8.1ヘクタール」に及ぶ広大な土地において大規模な再開発が進められ、2018年3月に組合設立(事業計画)認可となりました。2019年8月に着工しており、2023年3月31日に竣工予定となっています。
【参考記事】虎ノ門・麻布台地区に”高さ日本一”となる超高層ビルの建設計画
さらに、まだ構想段階ではあるものの、麻布十番駅から徒歩圏内の「六本木五丁目西地区」においては「第二六本木ヒルズ」が建設される可能性があると言われています。
※2019年8月29日追記※
最近の報道では「虎ノ門・麻布台地区」の再開発を「第二六本木ヒルズ」と称しているケースも増えています。
【参考記事】東京2020オリンピック後を見据えて進む六本木・赤坂エリアの再開発
このように、麻布十番エリアでは2021年以降を見据えた再開発が計画されるとともに、周辺エリアにおける再開発との相乗効果により、今後さらに価値が高まるエリアと考えられます。麻布十番エリアを取り巻く再開発の動向について、今後も注視しておくと良いでしょう。
【進む東京都心の再開発】シリーズ