進む東京都心の再開発(16)
JRの在来線はもちろんのこと、東海道新幹線や京浜急行本線などが乗り入れるターミナル駅の品川。平日・休日問わず、駅および駅周辺はたくさんの人であふれかえっています。かつては江戸四宿のひとつである「品川宿」として知られていた品川周辺地域も、品川インターシティや品川グランドコモンズなどの開発プロジェクトが進められ、現在では洗練された街並みを有しています。
そんな品川において、近年、新たな再開発が進められています。2020年3月には田町~品川駅間において新駅が暫定開業され、周辺地域と連携した国際的に魅力のあるまちづくりの実現が進められているのです。今後、こうした再開発の進展によって、品川という街全体が変わっていくかもしれません。「品川開発プロジェクト」により、新国際都市として発展する品川の未来をのぞいてみましょう。
(本記事は2018/12/27配信のものを2020/05/10に更新しております)
JR東日本は2018年6月より、田町~品川駅間で建設が進む新駅の名称を公募していましたが、2018年12月に「高輪ゲートウェイ」となることが決定し、2020年3月に開業しました。
JR東日本は駅名選定の理由として、古来より江戸の玄関口として賑わいをみせた地であることなどの歴史的背景と、世界中から先進的な企業と人材が集う国際交流拠点となることへの期待を挙げ、「新しい駅が、過去と未来、日本と世界、そして多くの人々をつなぐ結節点として、街全体の発展に寄与するよう選定」したと公式発表しています。
※田町~品川駅間の新駅の駅名決定について ― 東日本旅客鉄道株式会社
https://www.jreast.co.jp/press/2018/20181201.pdf
駅名の公募においては、駅ができるエリアの地名である「高輪」「芝浦」「芝浜」などシンプルなものが票を集めていたこともあり、駅名発表後にはインターネット上で反対派による署名運動が起きました。駅名撤回を求める署名は、2018年12月15日時点で3万5,000人を突破したと報道されています。駅名に対する賛否両論はあるにせよ、開業まではこぎつけています。
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2018年5月に行われた国家戦略特別区域会議にて、「品川駅北周辺地区」が都市再生プロジェクトとして追加されました。今後は、東京都の国家戦略特別区域の特定事業として進められることとなります。ちなみに国家戦略特別区域とは、安倍内閣が掲げる成長戦略のひとつとして、地域振興と国際競争力向上を目的に規定された経済特区のことです。一般的には「国家戦略特区」と略されています。
また2018年9月には、JR東日本が「品川開発プロジェクト(第Ⅰ期)」の都市計画概要を公式発表しました。具体的にどのような再開発が予定されているのかを知ることで、より品川の未来をイメージしやすくなることと思います。そこで、「品川開発プロジェクト(第Ⅰ期)」の概要について、その詳細を見ていくことにしましょう。
第Ⅰ期計画においては、品川新駅と国道15号にはさまれた約9.5ヘクタールの区域を4つの街区に分け、合計5棟の建築物が誕生する予定です。
「都市再生への貢献」として掲げられている再開発方針には、次の3つが挙げられています。
方針1.世界につながり、地域をつなぐ、エキマチ一体の都市基盤形成
方針2.国際ビジネス交流拠点にふさわしい多様な都市機能の導入
方針3.防災対応力強化とC40が掲げる先導的な環境都市づくり
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
新駅前の歩行者ネットワークの起点として、新駅と街を一体的につなぎ、国際ビジネス交流拠点の顔となる歩行広場を整備する予定です(新駅歩行者広場)。加えて、新駅と周辺地域をつなぐ地域交通機能を担う交通広場も整備される予定となっています(新駅交通広場)。
デッキレベルを中心に、広場や歩行者ネットワークを南北方向に連続して整備。地上・デッキの一体的な整備が特徴となっています。また、泉岳寺駅および新駅と街全体を一体的につなぐ交流空間も実現する予定です。
再開発地区が面している芝浦港南地区や高輪地区、さらには三田・田町方面へとつながる歩行者ネットワークおよび広場の整備も予定されています。鉄道用地等の上空を横断する歩行者専用道や、緑地、広場など、空間を活かした整備が意識されているのがわかります。
今回の再開発では、文化・ビジネスの創造に向けた、拠点施設の整備が予定されています。国際会議等に対応したコンベンション・カンファレンスやビジネス支援施設を導入することで、育成・交流・発信ができる環境を整えています。
外国人のビジネスワーカーやその帯同家族ための居住施設も整備。ビジネスだけでなく、観光を目的とした短期滞在ニーズにも対応しています。国際水準の宿泊施設には、生活支援機能等も整備する予定です。
約1万人が一時滞在できる施設の整備や、一時滞留スペース、さらには各街区で連携した災害支援機能を確保する予定です。また、自立・分散型エネルギーネットワーク構築により、災害時の業務継続性も実現されることとされています。
これまで使われることのなかった未利用エネルギーに着目し、下水熱や食品廃棄物等のエネルギーの積極活用を進める予定です。水準としては、東京都建築物環境計画書制度に定められている段階3相当を目指します。
このように品川は、新駅の開設を軸とした再開発により、新国際都市に生まれ変わろうとしています。今後は、ターミナルとしてはもちろん、ビジネスや文化が生まれる拠点としても注目されることでしょう。これからも、進化を続ける品川から目が離せません
【進む東京都心の再開発】シリーズ