進む東京都心の再開発(22)

浜松町エリア 世界貿易センタービル建て替えなど国際拠点性を強化する大規模再開発プロジェクト

(写真=cowardlion/Shutterstock.com)
(写真=cowardlion/Shutterstock.com)

東京都港区に位置する浜松町は、東芝をはじめ、コニカミノルタやオリックスなど、大企業が本社を構える日本でも有数のビジネスエリアです。また、観光地としても人気が高く、「浜離宮恩賜庭園」「旧芝離宮恩賜庭園」「増上寺」など、格式と風情があるスポットが点在しています。その中心地にある浜松町駅から東京タワーまで直線距離で約1.1km、虎ノ門ヒルズまで直線距離で約1.4kmと、それぞれの迫力ある姿を間近で見ることができます。そんな浜松町駅周辺では、大規模な再開発プロジェクトが目白押しです。

概要をご紹介すると、東京オリンピック・パラリンピックを見据えた浜松町駅のリニューアルが既に行われ、浜松町駅西側では駅直結の「世界貿易センタービル」の建て替えプロジェクトを中心に複数の再開発が進められています。

また、浜松町駅東側では「都市再生ステップアップ・プロジェクト(竹芝地区)」「東芝ビルディング建て替え」など大規模案件が相次ぎ、浜松町・竹芝エリア全体の回遊性を高める工夫も施されています。浜松町エリアは今後、どのように変わっていくのでしょうか。その現状と再開発状況について見ていきましょう。

(本記事は2019/08/19配信のものを2020/05/18に更新しております)

▼目次

  1. 都心・国内・海外を掌握する浜松町の「駅力」
  2. 浜松町駅の西側で複数の大規模再開発が進行中
  3. 2019年1月に開業「日本生命浜松町クレアタワー」
  4. 世界貿易センタービルのリニューアル
  5. 「C地区」の再開発も始動
  6. 浜松町一丁目地区、竹芝エリアでも再開発が相次ぐ

1. 都心・国内・海外を掌握する浜松町の「駅力」

JR浜松町駅ホーム
JR浜松町駅ホーム(写真=Anotai Y/Shutterstock.com)

浜松町エリアにおける最大の特徴は「駅力」にあります。鉄道の駅としては、JR山手線・JR京浜東北線・東京モノレール羽田空港線の浜松町駅と、都営地下鉄浅草線・都営地下鉄大江戸線の大門駅があり、それぞれ国内・海外へとつながる交通インフラの要としての役割を担っています。

また、都心各所へのアクセスも良好です。JR京浜東北線を利用して東京駅へ快速で1駅(最速4分、2019年8月Yahoo路線調べ)、品川駅へ2駅(最速5分、2019年8月Yahoo路線調べ)、JR山手線を利用すれば渋谷駅、新宿駅、池袋駅、上野駅などのターミナルへも直通でアクセス可能です。さらに、浜松町駅との乗換駅でもある都営大江戸線・浅草線の大門駅からは、麻布十番駅、六本木駅、国立競技場駅、新宿駅、東銀座駅、日本橋駅、押上駅など主要スポットへアクセスできます。

加えて、東京モノレールを使えば、羽田空港に直接アクセスできます。羽田空港国際線ビル駅までは最速で13分(2019年8月Yahoo路線調べ)。国内・海外からの旅行客が数多く来訪しているのも頷けます。世界貿易センタービル別館1階のバスターミナルからは、日本各地へ向かう高速バスが発着します。浜松町エリアに点在するビジネスホテルを、都内滞在の拠点とする旅行客も多いです。

そんな浜松町エリアでは、東京オリンピック・パラリンピック開催に向けた駅の整備が進められています。2015年11月には、モノレール浜松町駅で案内サインや待合室を充実させるなどのリニューアルが行われました。さらに2018年3月には、JR線とモノレールを往来する乗換連絡通路にて相互通行化が行われ、モノレールからJR線への乗り換えがさらに便利になっています。

2. 浜松町駅の西側で複数の大規模再開発が進行中

浜松町駅西側の再開発全体図
浜松町駅西側の再開発全体図(東京都都市整備局ホームページより)

浜松町駅の西側で行われている再開発に目を向けてみましょう。浜松町駅西側では、世界貿易センタービルを含む約3.2ヘクタールが浜松町二丁目4地区として、特定都市再生緊急整備地域「東京都心・臨海地域」における都市再生特別地区に指定されています。

都市再生特別地区とは、都市再生特別措置法で定められた制度のことです。もともとの用途制限や容積率、斜線制限、高さ制限、日影規制を適用除外とすることで、自由度の高い計画が可能になり、超高層ビルなどの大規模プロジェクトが実現しやすくなります。

地域整備方針としては、国際金融・業務・商業・文化・交流機能や生活・業務支援機能など、多様な機能を備えた交流ゾーンの形成や、緑豊かな地域特性を生かしたうるおいのある都市空間を形成することとされています。

3. 2019年1月に開業「日本生命浜松町クレアタワー」

日本生命浜松町クレアタワー
日本生命浜松町クレアタワー 外観イメージ(国土交通省プレスリリースより)

世界貿易センタービル西側の隣接地、浜松町二丁目4地区B街区では、「(仮称)浜松町駅前プロジェクト」が進められ、2018年に日本生命浜松町クレアタワーが建設されました。7,646.56平米の事業区域を対象にした、地上29階建て・地下3階の高層ビルとなっています。

特徴としては、最大790坪の無柱空間のオフィスフロアに加えて、大型カンファレンス、商業施設などを有する先進のハイグレードビルであること。さらに、ハイブリッド制振構造や72時間の非常用電源設備を採用するなど、事業継続計画対策(BCP)にも配慮しています。

2015年11月から工事が開始され、2018年8月に竣工しました。2019年1月にはテナント部分が開業し、オフィスや商業施設を往来する数多くの人で賑わっています。

4. 世界貿易センタービルのリニューアル

世界貿易センタービルディング建て替え後
世界貿易センタービルディング建て替え後
世界貿易センタービルディング建て替え後の外観イメージ(JR東日本ホームページより)

浜松町駅のすぐ西側では、世界貿易センタービルの敷地を含む「浜松町二丁目4地区A街区」にて再開発が進行中です。こちらの再開発は、世界貿易センタービルディング、鹿島建設、東京モノレール、JR東日本の4社共同事業となります。約2.1ヘクタールの区域を対象に、2棟の超高層ビル建設が計画されているなど、全体延床面積約28万8千平米のビッグプロジェクトです。

都市計画決定の告示を受けたのは2013年3月のこと。2017年9月では、「国内における過去、最も高い超高層ビルの解体を含む建て替え事業」とされています。ちなみに、世界貿易センタービルディング南館(業務棟/A-3棟)は、地上39階建て・地下3階、延床面積95,239平米。2017年9月に着工しており、2021年1月の完成を予定しています。

具体的な再開発の中身としては、現存する世界貿易センタービルの解体が大きな位置を占めています。1970年に竣工してから約50年の歴史のなかで、オフィス、貸会議室、店舗、展示場、結婚式場、交通拠点などの役割を果たしてきたビルの解体は大きなインパクトがあるでしょう。解体着工時期は未発表ですが、南館が完成する予定の2021年頃と予想されます。また現在の本館の位置には、地上37階建て・地下3階のA1棟が建設される予定です。

その他にも、東京モノレール浜松町駅の建て替え(TM棟)やバスターミナルの再整備(A-2棟内)による交通結節機能の強化、MICE機能の整備、外国人滞在者支援機能の導入などが計画に盛り込まれています。また、合計で約7400平米の広場、合計約7000平米の周辺道路も整備される予定です。世界貿易センタービルディングのリニューアルオープンは2026年を、A街区全体の工事完了は2027年12月を予定しています。

5.「C地区」の再開発も始動

浜松町二丁目地区第一種市街地再開発事業鹿島建設株式会社ホームページより)というプロジェクトにて、浜松町二丁目地区(浜松町二丁目C地区/浜松町二丁目4地区C街区)でも、再開発が始動しています。具体的には、約0.7ヘクタールの区域を対象に、地上47階建て・地下3階、高さ約190メートル、延床面積約74,170平米の複合施設を建設する計画で、用途は住宅約400戸やオフィスをはじめ、文化芸術ホールなども整備される見通しです。

東京都は、2017年1月に都市計画決定を告示。2018年11月に「浜松町二丁目地区市街地再開発組合」の設立を認可しました。権利変換計画認可を経て、2020年1月に着工しています。また竣工は2026年3月の予定です。

6. 浜松町一丁目地区、竹芝エリアでも再開発が相次ぐ

最後に、浜松町一丁目地区および竹芝エリアの再開発にもふれておきましょう。浜松町一丁目地区では、浜松町一丁目地区市街地再開発事業により、地上37階建て・地下1階、住宅戸数563戸のタワーマンションパークコート浜離宮 ザ タワーが2019年初頭に完成しています。加えて冒頭に触れたように、浜松町駅東側・竹芝エリアで再開発案件が相次いでいることも見逃せません。

さらには虎ノ門エリアの再開発、築地市場跡地の再開発、田町駅周辺の再開発、新駅「高輪ゲートウェイ」開業後の駅周辺再開発など、隣接エリアとの間における相乗効果も期待され、浜松町エリアはさらなる発展を遂げようとしています。再開発状況を中心に、これからもその動向から目が離せません。

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