進む東京都心の再開発(3)
東京都の中でも、若者を中心に文化や交通、商業などの要衝として知られるのが渋谷です。渋谷駅周辺では、次世代に向けた新たな「エンタテインメントシティSHIBUYA」として進化を遂げるべく、「100年に一度」ともいわれる大規模な再開発が随所で行われています。たとえば、渋谷駅の整備から始まり、大型複合施設「渋谷ストリーム」やスクランブル交差点を見下ろす「渋谷スクランブルスクエア」です。
さらに、「東急プラザ渋谷」跡地や「渋谷パルコ」跡地の再開発など、2020年までに行われる大規模な再開発が目白押しとなっています。2020年は新型コロナウイルスの影響で延期が決定している東京オリンピックが開催されるはずだった節目の年ですが、それ以降に完成する再開発計画もあり、渋谷の街は大きな可能性を秘めているといえるでしょう。ここでは、「渋谷の街がどのように生まれ変わろうとしているのか」について詳しく見ていきます。
(本記事は2018/03/10配信のものを2020/04/21に更新しております)
元々予定されていた2020年の東京オリンピック開催に向けて、東京の各エリアは国際色豊かに発展することが求められてきました。なかでも渋谷エリアは、オリンピック競技会場である新国立競技場や国立代々木競技場に近く、これまでも国内外を問わず多数の観光客を集めていることから、東京観光の拠点としての役割を期待されています。そして、オリンピックで終了するのではなく、これを契機によりエンタテイメント性の強い大都市の形成ができるよう、数々の再開発計画が立てられています。
現状の渋谷は、JR線などの鉄道、また国道246号線など主要幹線の通過により街は分断され、渋谷駅自体も度重なる増改築によって構造が入り組んだ状態です。この状況を打破し、もっと便利で散策や移動がしやすいように動線を改良する目的で、渋谷駅構内や周辺の開発が進められます。
整然とした街づくりを実現させるために、まず鉄道や道路で分断されたエリアを歩行者デッキでつなぎます。さらに、周辺施設を自由に渡り歩けるよう、地下と地上を結ぶ「アーバン・コア」を設置して移動を楽にします。渋谷駅の構内でのJR線埼京線・東京メトロ銀座線のホーム移設は、乗り継ぎの際の行き来をスムーズにすることで、移動の煩雑さを解消する計画です。
次に、渋谷駅周辺の各施設について再開発の詳細をあげます。まず、渋谷の代名詞ともいえるスクランブル交差点のすぐそばには、「渋谷スクランブルスクエア」と呼ばれる複合施設(東棟)が既に開業しました。「渋谷スクランブルスクエア」は、開業済みの渋谷の街を見下ろせる地上47階建ての東棟をはじめ、これから建設予定の中央棟・西棟という構成です。
東棟の高層部はハイグレードオフィス、中層・低層階には大規模な商業施設とし、地上約230メートルの屋上には新宿や六本木といった都心を一望できる大型の展望施設を設置されています。そして、展望台は屋内エリアと屋外エリアがあり、思い思いに渋谷の空の開放感を味わうことが可能です。また、渋谷の街の活発さや臨場感を味わえるスクランブル交差点を眼下にでき、新たな観光名所として渋谷のランドマークになると期待されています。
さらに、駅前広場など駅周辺の動線の整備については、渋谷駅東口に地下広場を設け、JRや東京メトロ、東急線、京王井の頭線の各線への出入口をつないで乗り継ぎの拠点とし、待ち合わせができるような広いスペースができます。また、東口と西口をつなぐ連絡通路や、駅周辺のビルと直結する歩行者デッキの整備によってさらにスムーズな移動が可能となり、渋谷駅周辺のどこへでもつながる動線を作ります。地上でも広場やバスターミナルが整備されます。
このように、渋谷駅街区の再開発では地下と地上、そして駅周辺施設の総合的な空間の創出が計画されているのです。大まかな渋谷駅街区再開発の計画は以下のようになっています。
予定年 完成・開業予定計画
2019年 渋谷スクランブルスクエア東棟
2020年春 JR埼京線ホームをJR山手線ホームと並列に移設
2020年 東口駅前広場、地下広場、アーバン・コア、2階デッキ、東西国道デッキ
2027年 渋谷スクランブルスクエア中央棟・西棟
2027年 JR山手線1面2線化
2027年 西口ハチ公広場、バスターミナル、地下タクシープール、アーバン・コア、東西自由通路
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渋谷駅の整備とともに、渋谷駅周辺の再開発も活性化しています。これまでにも東急文化会館跡地の「渋谷ヒカリエ」など大規模な再開発が既に行われていますが、今後も再開発が目白押しです。
渋谷駅の南側では、高さ約180メートル、地上35階・地下4階建ての「渋谷ストリーム」や、渋谷ストリームから代官山寄りに位置する「渋谷代官山Rプロジェクト」が2018年秋に開業しました。特に渋谷ストリームは、「クリエイティブワーカーの聖地」をコンセプトに掲げ、オフィスと商業施設、エンタテイメントスペースが複合化された新しいスタイルの施設として注目されています。オフィス区画にはグーグルの本社機能が移転入居することでも話題になっています。
また、予定されていた2020年のオリンピック開催までの完成を目指し、渋谷駅西口駅前の「東急プラザ渋谷」跡地の再開発、「渋谷パルコ」跡地の再開発、宮下公園を中心として駐車場、ホテル、商業施設を整備する「宮下公園等整備事業」なども、完成または進行中です。
2021年以降に完成予定の再開発計画としては、渋谷駅西口から国道246号線を隔てた「渋谷駅桜丘口地区」があります。約2.6ヘクタールに及ぶ広大な地域を一体的に再開発する計画で、高さ約180メートル、地上37階・地下4階建ての超高層ビル建設が中心となります。オフィスや店舗、住宅をはじめ、起業支援施設、多言語対応の国際医療施設などを整備し、国際都市にふさわしい複合施設として2023年度に竣工する予定です。
これらの再開発を経て、2027年には渋谷駅の整備が完了する予定です。複雑で入り組んだ構造の渋谷駅、そして駅前のビル群は再開発により生まれ変わるとともに、アーバン・コアや歩行者デッキの整備により通路としての利便性、空間としての魅力が大きく向上することが見込まれます。10年後の渋谷駅周辺は驚くべき変化を遂げ、世界有数のビッグターミナルとして現在よりもさらに都会的で先進的な街並みとなっていることでしょう。
このように、渋谷はさまざまな再開発計画によって便利で整然とした街に生まれ変わる予定です。一方で、雑然とした渋谷ならではの個性が失われてしまうのではないかという危惧もあります。しかし、街をすべて作り変えるのではなく、渋谷のシンボルでもあるスクランブル交差点はそのままの状態で残されるとのことです。
また、新たな安らぎスポットとして「渋谷ストリーム」に設置される水景施設は、渋谷川の流れに沿って作られています。ゆったりと散歩を楽しめる遊歩道も設置され、都会の中に潤いを与えるスポットが誕生しています。
これからの未来に向けてさまざまな変貌を遂げる予定の渋谷周辺は、2020年4月時点では既に完成したものもあれば、随所でも順次工事が進められています。渋谷の街がどのような顔を見せるのか、今後に期待し注目してみましょう。
【進む東京都心の再開発】シリーズ