進む東京都心の再開発(10)

武蔵小山エリア タワーマンション建設と道路整備で注目!城南エリアの新拠点

(写真:PIXTA)
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東京23区の中でも都心3区(千代田区、中央区、港区)や都心5区(都心3区に加え、渋谷区、新宿区)は、立地の優位性が高い地域として知られています。東京23区は皇居を中心として、城東・城西・城南・城北といった4つのエリアに分けて表現されることがありますが、東京周辺エリアにおいて優位性が高いエリアの一つが「城南エリア」です。

目黒区・品川区・大田区を中心とした「城南エリア」は、目黒、五反田、中目黒、自由が丘、田園調布など、ステイタスあふれる街並みがいくつも形成されているエリアです。都心への交通利便性が高いことに加え、世界への玄関口である羽田空港(東京国際空港)や横浜方面へのアクセスも良いため、根強い人気を博しています。

なかでも城南エリアで目覚ましい発展を遂げようとしているのが「武蔵小山エリア」です。今回は大規模な再開発により、城南エリアの新拠点として注目される武蔵小山エリアを紹介します。

(本記事は2018/07/18配信のものを2020/05/02に更新しております)

▼目次

  1. 街並み再生地区に指定された「武蔵小山駅東地区」
  2. 容積率の緩和により、ビッグプロジェクトが可能に
  3. 武蔵小山駅周辺の都市計画道路
  4. まとめ

1. 街並み再生地区に指定された「武蔵小山駅東地区」

(写真=PIXTA)
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武蔵小山は品川区と目黒区の境目に位置するエリアです。全長800メートルのアーケードの商店街「武蔵小山商店街パルム」は日本でも有数の規模を誇り、メディアでも多数取り上げられてきました。従来は隣接する不動前や戸越銀座などとともに、情緒があふれる生活に便利な住宅街というイメージでした。しかし、東急目黒線の地下化を契機とした武蔵小山駅前の大規模な開発により、先進的な街並みに大きく生まれ変わっています。

2000年に東急目蒲線の分割により「東急目黒線」が誕生し、東京メトロ南北線、都営三田線との相互乗り入れが開始されました。これにより、六本木一丁目駅、麻布十番駅、大手町駅をはじめ都心へのアクセスが飛躍的に向上しました。

2004年には「東京のしゃれた街並みづくり推進条例」に基づき、約3.1ヘクタールの武蔵小山駅東地区が「街並み再生地区」として指定されました。その背景として、武蔵小山駅周辺は木造住宅が密集する地域で、防災上の観点からもまちづくりが求められていたことが挙げられます。

街並み再生地区の指定を受け、武蔵小山駅前の再開発が促進されます。2006年に武蔵小山駅は地下化するとともに、急行停車駅となりました。2009年には駅前広場が整備され、2010年に駅ビルが開業するなど、駅前の再開発により駅の利便性が大幅に向上したといえるでしょう。

さらに、2012年9月には街並み再生地区の指定区域にB街区(武蔵小山パルム駅前地区)約0.9ヘクタールが加わり、全体で約4.0ヘクタールにわたる区域となりました。同時に、街並み再生方針の変更が行われ、武蔵小山駅周辺の再開発はいっそう大きく発展します。

2. 容積率の緩和により、ビッグプロジェクトが可能に

(写真=PIXTA)
(写真=PIXTA)
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(品川区ホームページ「武蔵小山駅東地区 街並み再生方針」より)

街並み再生方針において最も注目すべきポイントは、「容積率の緩和」です。容積率の緩和があることでビッグプロジェクトが可能となり事業性が向上しました。また、大手デベロッパーやゼネコンが参画したことでブランド性のあるまちづくりが計画されたことも要因の一つです。

従来の街並み再生方針では、「街並み再生の貢献に基づく容積率の割増」として公共施設や緑化、広場等の整備といった条件を満たす再開発であれば、容積率は最大で600%までの緩和でした。これが2012年9月に変更となります。5,000平方メートル以上を一体的に再開発する「大規模敷地統合促進区域」であれば、条件を満たす場合に最大で700%まで緩和され、さらに大規模な再開発を呼び込むことが可能となりました。鉄道上部区域の容積率の配分を受ければ容積率700%以上の計画策定も可能で、これ以降、武蔵小山駅前の大規模再開発計画が進行していきます。

現状進行中のプロジェクトは次の通りです。

2-1. 武蔵小山パルム駅前地区第一種市街地再開発事業

武蔵小山パルム駅前地区では、武蔵小山駅前再開発事業の第1号プロジェクトとして、三井不動産による再開発事業が進行中です。地上41階建ての免震タワーマンションパークシティ武蔵小山 ザ タワー をはじめ、40以上の商業施設、緑豊かな広場、歩行者優先道路などの整備など、延べ床面積約7万5,010平方メートルの「環境創造型大規模開発」として注目を集めています。2016年3月に着工し、2020年1月に完成しています。

2-2. 武蔵小山駅前通り地区第一種市街地再開発事業

武蔵小山駅前通り地区は、住友不動産による総延べ床面積 約5万3,460平方メートルの大規模複合開発です。住宅を中心とした超高層タワー棟は地上41階建て、高さ約145メートル、中層棟と低層棟には商業施設や公益施設が入居予定となっています。2018年4月着工、2021年6月の完成予定です。

さらに、今のところ街並み再生地区に含まれていない次の地区でも、大規模再開発が構想されています。

2-3. 小山三丁目第1地区

小山三丁目第1地区は、「武蔵小山パルム駅前地区」の南西側に隣接する約1.5ヘクタールの区域で、2012年5月に市街地再開発準備組合が設立されています。再開発事業の事業協力者として、三菱地所レジデンス、新日鉄都市開発、大林組が選定され、再開発施設の設計者は三菱地所設計に決定しています。

2-4. 小山三丁目第二地区

「小山三丁目第二地区」は、「小山3丁目第1地区」の南東側に隣接する約1.6ヘクタールの区域で、2015年7月に再開発推進協議会が設立され、まちづくりの検討が進められてきました。2018年3月には市街地再開発準備組合が発足し、事業協力者として大成建設が参画しています。今後は具体的な再開発計画案の検討が進められる見通しです。

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3. 武蔵小山駅周辺の都市計画道路

武蔵小山駅周辺は、「補助46号線」「補助26号線」といった2つの都市計画道路の整備が順次進められています。2つの道路整備により都内の主要道路に接続することで、都心方面への道路交通の利便性が向上するでしょう。さらに、今後の整備により周辺エリアとの相乗効果が期待されます。

3-1. 補助46号線

武蔵小山駅から目黒・五反田方面へ向かう道路部分、品川区小山台一丁目~目黒区目黒本町三丁目の整備事業が完了し、2012年6月に開通しています。開通後は武蔵小山駅周辺から、桜並木が美しい「かむろ坂通り」を抜けて山手通りへとスムーズにアクセスできるようになり、都内各所や首都高速への交通利便性が向上しています。

2018年現在、環七通り方面へ向かう道路部分、目黒区目黒本町五丁目・原町一丁目・洗足一丁目の地区で整備が進められ、事業期間は2019年度までとなっています。

3-2. 補助26号線(都道420号鮫洲大山線)

補助26号線(都道420号鮫洲大山線)は山手通りと環七通りの中間を通る都市計画道路です。目黒通りと国道1号線を結ぶ武蔵小山駅周辺の「26号線通り」部分は既に開通し、目黒通りや国道1号線へスムーズにアクセスできるようになっています。武蔵小山と隣接するエリアでも今後整備が進められる予定です。

2020年5月現在、戸越公園駅から大井町駅方面へ向かう区間において、都立大崎高校下のトンネル工事など道路整備が進められています。また、学芸大学駅周辺、目黒通りと駒沢通りを結ぶ目黒区中央町地区でも用地取得が進められ、沿道となる土地では高層マンションを計画している土地所有者もいるようです。

4. まとめ

このように、武蔵小山エリアでは駅前を中心に多くの再開発が行われています。アーケード商店街や風情ある住宅地の雰囲気を残しながらも、先進的で開放感のある街並みが徐々に形成され、交通の便や生活環境が向上しつつあります。隣接エリアの開発状況とあわせて、城南エリアの新拠点として今後の再開発の動向が注目されます。

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