進む東京都心の再開発(5)
「東京都 都市再生プロジェクト(東京圏国家戦略特別区域)」で予定されている都内28のプロジェクト。そのうち、虎ノ門エリアに6つのプロジェクトが集結しています。2014年6月から開業している「虎ノ門ヒルズ 森タワー」を中心に、都内でも有数の超高層ビルが立ち並ぶ虎ノ門エリアは今後、さらなる変貌を遂げようとしているのです。
そもそも虎ノ門は、江戸城の南端にあった門の名前に由来しているとのこと。諸説ありますが、方位を表す四神思想(青龍・白虎・朱雀・玄武)のうち、江戸城の右白虎の方角に位置していたためにこの名前がつけられたと言われています。駅名として「虎ノ門」が採用されたのは1938年、現在の町名としての「虎ノ門」が使用されたのは、1977年の住居表示実施時となります。
そんな虎ノ門エリアは、今後どのように変わっていくのでしょうか。虎ノ門ヒルズと新虎通りを中心に進む再開発について、周辺の変化について概観してみましょう。
(本記事は2018/03/14配信のものを2021/1/24に更新しております)
戦後の主要道路として計画され、もとは「マッカーサー道路」とも呼ばれていた環状2号線。とくに新橋~虎ノ門間については用地の取得が難航していたものの、一部の道路を地下化することで地権者の合意が得られました。これにより誕生したのが「新虎通り」です。この通りは自動車交通の利便性を向上させるだけでなく、パリのおしゃれな「シャンゼリゼ通り」のようなイメージで、歩行者にとっても過ごしやすい空間となることが期待されています。
さらに東京都は「立体道路制度」を利用し、道路上部に超高層ビルを建設する構想を打ち出しました。この構想により、六本木ヒルズなどを手がける森ビルが参画。ビッグプロジェクトが進むこととなったのです。
道路上に建設された超高層ビル「虎ノ門ヒルズ」は、地上52階・地下5階建て・高さ247メートルという国内最大級の再開発として大きな話題となりました。店舗やオフィス、ホテル、国際会議場、住宅など、虎ノ門エリアの新しい拠点として多くの人々が訪れています。
虎ノ門ヒルズの開業を契機として、周辺の再開発も進んでいます。隣接地では、森ビルによって3棟の超高層ビル建設が進められており、虎ノ門ヒルズと合わせて約7.5ヘクタールの再開発が進行しています。具体的には、北側にオフィス中心の「虎ノ門ヒルズビジネスタワー」が、南側に住宅中心の「虎ノ門ヒルズレジデンシャルタワー」と、これらの建設は2020年4月開業で進められています。
一方、虎ノ門ヒルズから桜田通りを挟んだ西側には「(仮称)虎ノ門ヒルズステーションタワー」の建設が進められています。こちらは2021年に延期が決定されている東京オリンピック後になるであろう2022年度の竣工が目標とされています。
ちなみに、これらの再開発は日比谷線新駅の「虎ノ門ヒルズ駅」と一体的に行われています。東京メトロの営業線として新駅が誕生するのはおよそ20年ぶりのこと。2016年より工事が進められ、2020年6月6日に開業となりました。
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さらに、森ビルは「虎ノ門・麻布台地区」でも大規模プロジェクトを進めています。
2017年に公開された概要によると、対象となるのは地区全体で約8.1ヘクタールとなる、虎ノ門ヒルズ群をしのぐ広大な区域。そこに3棟の超高層ビルをはじめ、東京メトロ日比谷線「神谷町駅」と東京メトロ南北線「六本木一丁目駅」を結ぶ歩行者ネットワークの整備や中央広場を設ける緑地整備、桜田通りの拡張といった一体的な都市空間の整備が行われる計画となっています。
目玉となるA街区では、地上65階・地下5階・高さ約330メートルと、2021年1月時点で高さ日本一のビル「あべのハルカス(高さ300メートル)」をしのぐ超高層ビルの建設が計画されています。東京駅近くで建設中の「TOKYO TORCH 東京駅前常盤橋プロジェクト(旧名:常盤橋街区再開発プロジェクト)」が完成するまでは、高さ日本一の超高層ビルとなる予定です。
着工は2018年度。東京2020オリンピック後の2022年度に全体竣工予定となっています。この地区の再開発では、虎ノ門エリアと六本木エリアの中間地点として、両エリアをつなぐ役割が期待されます。
※2019年8月29日追記: 虎ノ門・麻布台地区の再開発は「虎ノ門・麻布台プロジェクト」として、2019年8月5日に着工されました。竣工は2023年3月末予定とされています。なお2019年8月22日、森ビルは「虎ノ門・麻布台地区第一種市街地再開発事業」記者説明会を実施。各メディアで「日本一の高さのビルが誕生」「第二六本木ヒルズの誕生」などと報道され、大きな話題を呼んでいます。
その他にも、神谷町駅に近い「虎ノ門四丁目地区」では、約1.8ヘクタールの土地に地上36階建ての超高層ビルが建設を予定していたり、虎ノ門駅前では、オフィスビル建設などの再開発が計画されていたりなど、盛り上がりをみせています。
また虎ノ門は、湾岸・臨海エリア方面への「BRT(バス高速輸送システム)」の起点としても注目されています。現状、湾岸・臨海エリアは交通網の整備が足りておらず、BRTはこの状況を解消する策として期待されています。
2020年10月1日より「東京BRT」は虎ノ門ヒルズから晴海BRTターミナルまで運行を開始しています。環状2号線の全線開通と併行して、順次運行エリアを拡大予定です。今後、虎ノ門エリアはBRTのターミナルとして、湾岸・臨海エリアの交通に対して大きな役割を果たす見通しです。
このように、虎ノ門エリアは、東京オリンピック以降も発展が期待できるエリアです。虎ノ門に近いエリアである赤坂、六本木、新橋、銀座、浜松町なども大きく飛躍していく可能性を秘めているため、今後のさらなる発展が期待されます。
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