進む東京都心の再開発(9)
元々2020年開催予定であった東京オリンピックに向けて、東京を国際競争力のある都市にすべく、都内各所で再開発が数多く行われています。なかでも、羽田空港と都心部を中継する「品川エリアの再開発」は注目を集めていて、田町~品川間に建設される「高輪ゲートウェイ駅」の開業や、リニア中央新幹線の始発駅となる品川駅で再開発が進められています。
この品川エリアに隣接するエリアで近年大きく発展し、今後の発展も期待されるのが、大崎駅周辺エリアです。大崎エリアは東京都により「副都心」として位置づけられて以降、ビジネスの拠点として発展してきました。また、鉄道のターミナル駅としての機能やタワーマンションが立ち並ぶ都心の住宅街としての顔も持つようになり、大きく飛躍を遂げた地域です。今回は、大崎エリアの再開発の歴史と、今後の展望について見ていきます。
(本記事は2018/07/14配信のものを2020/05/01に更新しております)
大崎エリアは1982年、東京都の長期計画にて、ビッグターミナルである新宿・渋谷・池袋と並ぶ「副都心」に位置づけられました。その後、1994年には品川区が「大崎駅西口地区のまちづくり」を提案、さらに2002年には、都市再生特別措置法に基づく「都市再生緊急整備地域」として、約60ヘクタールにおよぶ「大崎駅周辺地域」が指定されました。
都市再生緊急整備地域に指定されたことにより、国際競争力のある副都心の形成に向けて地域整備方針や都市再生ビジョンが策定され、大崎駅周辺の再開発計画が大きく動き出します。
また、大崎駅の発展には鉄道も関係しています。過去、大崎駅に停車する鉄道はJR山手線のみでした。しかし、2001年にJR湘南新宿ラインが開業、2002年にはJR埼京線と東京臨海高速鉄道りんかい線(旧臨海副都心線)が大崎駅まで延伸され、ました。利用可能な鉄道路線が増えたことで、大崎駅は首都圏のターミナル駅へと発展していきます。
これらの動きを契機として、大崎駅前・駅周辺では大規模複合施設やタワーマンションの建設が相次いで行われたのです。ここで、これまでに行われた再開発を、大崎駅の東口と西口に分けて見ていきます。
大崎駅の東口には、桜並木で有名な目黒川や、「御殿山」をはじめとした高級住宅街などがあり、古くから洗練された地域のイメージがありました。しかし、再開発が相次いで行われ、副都心としての姿を見せるようになります。大崎駅東口駅前では、大崎ニューシティ(1987年完成)、ゲートシティ大崎(1999年2月開業)が早期に誕生しています。
この2つの施設はペデストリアンデッキで大崎駅と直結し、オフィスビルや飲食店などが多数入居する利便性の良い施設です。また、アートヴィレッジ大崎(2007年完成)やパークシティ大崎(2015年完成)など、タワーマンションを含む複数棟で構成される大規模複合施設が誕生しています。さらに、大崎駅と五反田駅の中間に位置する東五反田エリアでも、タワーマンション建設が相次いで行われ、都会的な街並みが形成されています。
大崎駅の西口では、「大崎駅西口地区まちづくり協議会」が主体となってガイドラインを策定するなど、統一感ある街並みを意識した都市開発が行われてきました。誕生した大規模複合施設は下記の通りです。
●ThinkPark(明電舎跡地、2007年8月竣工)
●大崎ウエストシティタワーズ(2009年9月竣工)
●NBF大崎ビル(旧ソニーシティ大崎、2011年3月竣工)
●大崎ウィズタワー(2014年1月竣工)
これらの建物をペデストリアンデッキで大崎駅と直結したことや、周辺道路の整備が進んだことで、利便性が高く良好な都市環境を持った街並みを創りあげることに成功しています。
大崎エリアは副都心の仲間入りを果たして以降、街の姿を大きく変えてきましたが、現在も引き続き再開発が続いています。
現在進行中の再開発として「西品川一丁目地区第一種市街地再開発事業」があります。この地区は大崎ウィズタワーの南東側、横須賀線・東海道新幹線と湘南新宿ラインの線路の間に位置しています。ここでは約3.9ヘクタールの広大な土地を対象として大規模複合開発が行われていて、オフィス棟、住宅棟、約8,000平方メートルの緑地広場で構成される「大崎ガーデンシティ」が、2018年秋に誕生しています。
A街区では、地上24階建て・地下2階・延床面積約17万8,000平方メートルの大規模オフィス棟「住友不動産大崎ガーデンタワー」が2018年1月に竣工し、2018年3月に開業しています。また、B街区では、地上23階建て・地下1階(建築確認申請上は地上22階建て・地下2階)・総戸数423戸の住宅棟「大崎ガーデンレジデンス」が2018年8月に竣工しています。
西品川一丁目地区の再開発事業とともに、敷地東側を走る都市計画道路「補助163号線」の整備も進められています。補助163号線は、山手通りから大崎駅西口地区を通過し、品川区役所や大井町駅方面につながる都市計画道路です。
2020年時点で進行中の箇所は、西品川一丁目地区再開発事業に含まれる区間の道路拡幅工事と、品川区役所・大井町駅付近で進む東急大井町線のガード架替工事です。今後、未整備である西品川一丁目地区と品川区役所の区間でも整備が進めば、大崎エリアや大井町エリアにおける道路交通の利便性が向上することでしょう。
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このほかにも、大崎駅周辺では次のような再開発構想があります。
「大崎三丁目地区」では、2007年に再開発準備組合が設立されてから再開発構想が練られてきました。事業協力者として住友不動産、事業コンサルタントとして日建設計が参画しています。39階建ての高層ビルを建設するとともに、駅直結の歩行者デッキを延伸する計画案が作成されており、2018年に都市計画の策定が行われています。
「大崎西口駅前地区」は、西口駅前でも古くからマンションや飲食ビルが立ち並ぶエリアを一体的に再開発する構想です。約1.3ヘクタールにわたるこの地区は、東京都が2017年4月に創設した「マンション再生まちづくり制度」において推進地区として指定され、制度活用のモデル事業に位置づけられています。事業協力者として大成建設が参画していて住宅やオフィス・店舗が入居する複合施設を建設する構想が活発です。
ゲートシティ大崎の南側に位置し、区域面積約1.9ヘクタールの地域です。2015年9月に再開発準備組合が設立されていて、事業協力者として地権者のNIPPOに加え、三井不動産、東京建物が参画しています。
大崎駅と五反田駅の中間に位置し、周辺にはタワーマンションが立ち並ぶ場所です。2016年に再開発準備組合が設立されています。
大崎駅周辺は副都心として、飛躍的に発展を遂げてきました。長期計画に基づき、行政とデベロッパー、地域住民が協力して持続的に「まちづくり」を行う様子は、都心の再開発のモデルケースといっても過言ではないでしょう。
2020年5月現在も西品川エリアの再開発や、隣接する品川エリアでは高輪ゲートウェイ駅開業とその周辺および品川駅の再開発が進み、今後も大崎駅周辺において再開発が構想されています。これらのエリアでは、個々の再開発が “点”として行われているのではなく、隣接するエリアで“面”として再開発が行われています。連続性や一体性のある再開発が行われれば、エリア間の繋がりも生まれます。それぞれのエリアが刺激し合い、どのエリアの価値もさらに高まっていくことが予想されるでしょう。
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