進む東京都心の再開発(21)

原宿エリア JR原宿駅改良工事と大規模建て替え再開発プロジェクト

(写真=MADSOLAR/Shutterstock.com)
(写真=MADSOLAR/Shutterstock.com)

「100年に一度の再開発」が着々と進行する渋谷に隣接し、若者や観光客から絶大な人気を集める街「原宿」。ファッションや雑貨、スイーツ関連の商品など、流行の発信地とも言える店舗が多数軒を連ねる「竹下通り」が有名です。若年層、特に女性を中心に、連日多くの人々で賑わいをみせています。

一方で、原宿と隣接するエリアには、大人の街として人気がある表参道や青山があります。また、原宿駅の西側には、約54ヘクタールもの領域を占める都立代々木公園が広がっています。さらには、明治神宮や東郷神社など、日本の歴史と伝統を肌で感じられるスポットもあります。

そのような理由から、原宿エリアは東京近郊の人々だけでなく、世界的都市「東京」の多様な魅力が集積する街として、国内外を問わず観光客から根強く支持されています。新型コロナウイルスの影響で延期が決定していますが、東京オリンピック・パラリンピックを契機に、オリンピックスタジアム(新国立競技場)、東京体育館、国立代々木競技場といった競技場が身近な観光拠点として、原宿エリアでは外国人観光客が増えていくと予想されています。そんな原宿エリアで行われている再開発について、今後の動向を見ていきましょう。

(本記事は2019/06/20配信のものを2020/05/17に更新しております)

▼目次

  1. 原宿駅の改良工事に注目が集まる
  2. これまでの原宿駅周辺の再開発動向
  3. 原宿駅前の大規模プロジェクト
  4. 再開発が進む渋谷・宇田川町エリアとの相乗効果も期待できる

1. 原宿駅の改良工事に注目が集まる

改良工事前の原宿駅
改良工事前の原宿駅(photo ACより)
原宿駅改良工事後完成イメージ
原宿駅改良工事後完成イメージ(JR東日本 公式サイトより)

とくに注目されている動向としては、「原宿駅の改良工事」が挙げられます。これまで原宿駅では、ホームや改札内のコンコースが非常に狭く、ラッシュ時や大規模イベント時の混雑が課題となっていました。そこで、東京オリンピック・パラリンピック(2020年夏)に対応するべく、2016年からJR東日本による改良が進められています。

具体的な改良点については、次の通りです。

  • 年始のみ使用している臨時ホームを「外回り専用ホーム」へと変更。外回り専用ホームは、通路で竹下口改札にも接続させる予定
  • 線路およびホーム上に2層の駅舎を新設。コンコース、改札口、トイレの拡張、エレベーターの増設を実施
  • 明治神宮側に新たに出入口を設置

また、改良工事に伴い、駅舎を保存する動きも出てきています。1906年に開業した原宿駅は、1924年に現在地である渋谷駅寄りに移動し、新駅舎となりました。新駅舎は明治神宮の玄関口としてふさわしい意匠となるよう、建設当時流行していた洋風建築のデザインが採用され、現在まで多くの人々に親しまれています。

原宿駅舎は、都内においてJR最古の木造駅舎であり、1997年には“神宮の森とマッチしている西洋風の駅舎である”という理由で「関東の駅百選」に認定されています。そのため、建て替え工事に異を唱えている人も少なくありません。事実、JR東日本社長や渋谷区長宛てには、日本建築家協会(JIA)や原宿神宮前まちづくり協議会といった団体から要望書が寄せられるなど、駅舎保存を求める動きが活発化しています。

2. これまでの原宿駅周辺の再開発動向

表参道ヒルズ
表参道ヒルズ(photo ACより)

次に、再開発の状況について見ていきましょう。原宿エリアでは、1964年の東京オリンピック期に旧渋谷川沿いの遊歩道「キャットストリート」が整備されました。さらに2000年代に入ると、原宿神宮前まちづくり協議会による「キャットストリートプロジェクト」が行われ、現在では“裏原宿”の中心として賑わいをみせています。

商業施設としては、2006年2月に「表参道ヒルズ」が開業。2012年4月には「東急プラザ表参道原宿」も開業するなど、周辺地域が活性化しています。さらに2012年7月には、渋谷区において、約105.5ヘクタールにおよぶ神宮前地区の「神宮前地区 まちづくり指針」がまとめられるなど、さらなる発展につながっています。

3. 原宿駅前の大規模プロジェクト

原宿駅前プロジェクト完成イメージ
原宿駅前プロジェクト完成イメージ(NTT都市開発株式会社 公式サイトより)

原宿駅前で進められている大規模プロジェクトについてもふれておきましょう。現在、2020年の開業を目指し「原宿駅前プロジェクト」が進められています。施設名称も「WITH HARAJUKU(ウィズ原宿)」に決定していますが、2020年5月時点においては新型コロナウイルスの影響で6月以降の開業目途とされております。このプロジェクトは、1959年に竣工した「原宿アパートメンツ」を含む複数の敷地(合計5000平米)を一体的に建替える内容を含む、非常にインパクトのある再開発となっています。

プロジェクトそのものはNTT都市開発株式会社による再開発であり、設計・施工パートナーには竹中工務店などの大手が名を連ねている状況です。既に完成している建物は、地上10階建て・地下3階、延床面積約26,800平米となっており、原宿エリアをさらに盛り上げる施設になると期待されています。

4. 再開発が進む渋谷・宇田川町エリアとの相乗効果も期待できる

このように、原宿エリアでは2020年を契機として、原宿駅周辺の動向が活発化しています。特に、国内外から注目される観光拠点として街の魅力をどれだけ高められるかが、今後の発展を担うカギとなります。その点では、原宿駅周辺の再開発もさることながら、渋谷エリアと隣接していることが大きなメリットとなり、相乗効果による発展が期待できると考えられます。

渋谷エリアでは、渋谷駅を中心として「100年に一度の再開発」と呼ばれるビッグプロジェクトが目白押しですが、なかでも原宿に近い宇田川町エリアでは、2019年1月15日に渋谷区役所を含む新庁舎が開庁しています。

さらには、渋谷公会堂の建替え(2019年10月に「LINE CUBE SHIBUYA」としてオープン)、渋谷パルコの建替え(2019年11月22日オープン)、三井不動産による渋谷区役所建替プロジェクトの住宅棟「パークコート渋谷 ザ タワー」(2020年9月竣工予定)など、再開発が活発化しています。

そして東京オリンピック・パラリンピックが終了した後にも、NHK放送センターの段階的な建替え計画があり、16年(2020年~2036年)にわたり進められる予定です。このように、長期的なスパンで考えても、原宿エリアの価値が持続的に高まっていくことが予想されることから、今後も原宿エリアから目が離せません。

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