進む東京都心の再開発(19)
新型コロナウイルスの影響がなければ2020年夏に開催を予定していた東京オリンピック・パラリンピックを控え、日本経済は関連する銘柄だけにとどまらず、さまざまな方面からこれまでは盛り上がりをみせていました。開催都市としては、1964年の東京開催から実に56年ぶりということもあり、2020年をひとつの節目として、日本が大きく変わっていくきっかけになると予想している人も少なくありませんでした。
特に、東京オリンピック・パラリンピックの競技会場が最も集中する「湾岸エリア」では、大会が2021年以降無事に開催されるまでの期間はもちろんのこと、大会終了後もさらなる発展が見込まれます。最近では、築地市場の移転に伴う環状2号線の整備、BRTの事業計画の修正、選手村を再開発する「HARUMI FLAG」プロジェクトなど、大きな動きが実現化しています。今回はあらためて、湾岸エリアにおける再開発の動向に注目してみましょう。
(本記事は2019/03/08配信のものを2020/05/14に更新しております)
新型コロナウイルスの影響で延期が決定しているとはいえども、東京オリンピック・パラリンピックがいかにインパクトの大きいイベントなのかについては、数字の面からも明らかです。東京都オリンピック・パラリンピック準備局の調査によると、直接的な経済波及効果(生産誘発額)は、東京都だけで3兆3,919億円。全国では5兆2,162億円と試算されています。レガシー効果も含めると、それぞれ約20兆円、約32兆円と試算されているのです。自然と期待感が高まるのも無理はありません。
※「大会開催に伴う経済波及効果」東京都オリンピック・パラリンピック準備局
不動産関連の動向を見ても、東京オリンピック・パラリンピック開催のための開発が、都内各所において急ピッチで進められています。たとえば、新設が必要な競技会場の建設はもちろん、選手や観客の移動に利用される交通インフラの整備など、元々の開催予定であった2020年夏に向けて慌ただしく工事が進んでいるのが実情です。見た目も利便性の面からも「東京」がさらに変貌を見せることとなるでしょう。
2018年11月4日。東京都中央卸売市場の移転により、豊洲(江東区豊洲6丁目)と築地(中央区築地5丁目)を結ぶ環状2号線が暫定開通しました。江東区有明を起点とする環状2号線は、中央区、港区、千代田区へとつながる道路です。築地市場の移転が延期されたため、この区間の開通が不安視された時期もありましたが、今回の措置により、大会開催時の交通インフラとして利用可能な見通しとなりました。
豊洲~築地間については、東京オリンピック・パラリンピックの選手村が設置される予定の晴海地区を経由しています。そのため、2020年を見越し、災害時の避難ルートを想定した臨海部と都市部とのアクセス性能が試されることになるでしょう。また、地下トンネルを含む全線開通が予定されている2022年に向け、さらなる利便性の向上が期待されます。
都心と臨海地域とを結ぶ、バスを基盤とした大量輸送システム「BRT」(Bus Rapid Transit)の整備計画も進められています。BRTの整備は、増加が予想される湾岸エリアの交通需要に対応するための一つの施策です。東京オリンピック・パラリンピック開催時はもちろん、大会終了後の交通利便性向上が期待されます。
2016年4月に策定された事業計画については、周辺状況の変化をふまえ、2018年に改定されています。とくに運行計画に関する具体的な改定の中身としては、次の通りです。
2018年11月には公募の結果、BRTの名称が「東京BRT(英語表記:TOKYO BRT)」に決定となりました。応募数が最も多かったことに加え、日本人でも外国人でも、老若男女を問わず認知されやすいシンプルな名称であったことが決定理由となっています。2019年1月には、専門家や一般の方からの意見募集結果をふまえ、東京BRTのデザインが決定しています。
元々は2020年のプレ運行、2020年大会後のルート拡大、さらには2022年以降の本格運行を経て、BRTがより拡充されていく計画とされていましたが、大会延期の影響による計画の修正はまだこれからです。とはいえ、計画自体の期待h確かなものであることから、今後の動向に注目しておきましょう。
※「都心と臨海地域とを結ぶBRTに関する事業計画」の改定とBRTの名称募集について|東京都都市整備局
※都心と臨海地域とを結ぶBRTの名称の決定とデザイン案への意見募集について|東京都都市整備局
※都心と臨海地域とを結ぶ東京BRTのデザインの決定について|東京都都市整備局
最後に、東京オリンピック・パラリンピックの選手村として活用される予定の「HARUMI FLAG」について見ていきましょう。晴海五丁目西地区の開発区域であるHARUMI FLAGには、約13ヘクタールの敷地に、5632戸の住宅、店舗、保育施設など、トータル24棟の建物が建築される予定です。選手村として活用後、入居は2023年3月を予定していました。しかし、新型コロナウイルスの影響による2021年以降での大会開催延期のため、大会開催日程が正式決定するまでは、入居開始のタイミングがいつになるのかはわからない状況が続きそうです。
大会時は「仮使用」制度を活用し、大会終了後に内装工事等を経て竣工。新築マンションとしての供給になります。最寄りの勝どき駅からは徒歩17分となりますが、環状2号線やBRTなどの整備により、移動に関する利便性は高くなると予想されています。まさに、「選手村を誰もが住んでみたいと思えるまちに」というコンセプト通りのまちになりそうです。
このように、湾岸エリアは東京オリンピック・パラリンピックを契機として、大きく発展する可能性を秘めたエリアです。今後の動向からも目が離せません。
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