進む東京都心の再開発(17)
東京都港区においては、六本木や3A(青山・赤坂・麻布)などのブランドエリアがいくつも思い浮かびます。そのなかでも近年、街が大きく様変わりし、かつ今後もさらなる発展が期待できる地域として「白金高輪エリア」があります。
白金高輪は、地図上からも見てとれるように、東京の中心地に位置、他の都市部へのアクセスに優れています。平日の日中には多くのビジネスマンが行き交い、休日には散歩やショッピングを楽しむ人が見受けられます。
このエリアでは、白金高輪駅が開業したことを契機として、駅前複合施設やタワーマンションが相次いで建設されるなど、新たな街の魅力が生まれています。現在も再開発が進行するとともに、程近い「高輪ゲートウェイ駅」周辺エリアの開発に伴い、街の価値向上が期待されます。今回はさらなる発展性を秘めた白金高輪エリアの再開発について見ていきます。
(本記事は2019/02/21配信のものを2020/05/11に更新しております)
白金高輪はその名の通り、「白金」と「高輪」という2つの地区にまたがったエリアです。白金高輪は麻布十番、六本木、白金台、広尾、恵比寿といった都心を代表するエリアに囲まれていることや、「シロガネ―ぜ」という言葉でも表現されるセレブなイメージから、居住エリアとして高い人気を集めています。
「白金」の地名は、古くは13世紀から14世紀にかけて大量の銀を保有していた「白金長者」柳下上総介が、旧白金御料地(現在の国立科学博物館附属自然教育園)に屋敷を構えたことに由来します。江戸時代には武家屋敷が立ち並ぶ街となり、明治期以降は皇族や財界人の邸宅として利用されてきました。
白金エリアには聖心女子学院、明治学院大学といった大学があります。加えて、東京大学医科学研究所付属病院、北里大学北里研究所病院など、医学研究の拠点としての顔もあります。
また「高輪」は、由緒ある寺社が数多く点在しているなど歴史ある地域で、明治以降は皇族や政府高官、財界人の邸宅が門を構えた街として知られています。現在では品川駅前のプリンスホテル群が有名な地域でもあります。
2000年9月、東京メトロ南北線と都営三田線の駅として「白金高輪駅」が誕生しました。この2つの路線は東急目黒線との直通運転も行われ、城南エリアや神奈川県方面に住む人々にとって都心へのアクセスが飛躍的に向上することとなりました。
2005年11月には、長谷工コーポレーションなどが共同で再開発を進めた白金高輪駅直結の複合施設「白金アエルシティ」が完成しました。白金アエルシティでは、42階のタワー棟など住居を中心とした「白金タワー」、26階のオフィス棟「NBFプラチナタワー」といった超高層建築物が印象的で、白金高輪エリアのランドマークとして定着しています。
白金タワーの店舗エリアは「白金プラザ」と呼ばれ、スーパーマーケット「クイーンズ伊勢丹」や地元の商店が集約しています。また、再開発地域内にあった地権者の町工場は「テクノスクエア」として集約し再生するなど、住・商・工の調和のとれた複合市街地となっています。
現状、白金高輪エリアでは、次に挙げる地区で再開発が進められています。
白金一丁目東部北地区では、約1.7ヘクタールに及ぶ地区計画区域を対象に、地上45階建て・地下1階の超高層マンションを含む合計3棟を建設する再開発計画が進められています。総延床面積は約13万4,600平米となる大規模プロジェクトです。事業協力者として長谷工コーポレーション、参加組合員として、東京建物・長谷工コーポレーション・住友不動産・野村不動産などが参画しています。
用途は1247戸を超える住宅を中心に、店舗やオフィス、さらには計画区域内にある工場も入居予定となっています。白金アエルシティと同様に、地域の特色を生かし、住・商・工一体となった複合市街地の形成を目指しています。
進行状況としては、2018年3月に権利変換計画の認可を受け、2019年着工という段階です。完成時期は2023年の予定となっています。
白金高輪駅の西側、白金タワーに隣接する白金一丁目西部中地区においても、再開発計画が進められています。この地区では2005年から地元住民によるまちづくりに関する懇談会や研究会が行われ、2013年に白金一丁目西部中地区市街地再開発組合が設立、2018年5月に都市計画決定がなされています。
対象区域は郵政宿舎を含む約1.6ヘクタールで、高さ約140メートルの住宅棟を中心に、総延床面積約10万平米、総事業費は700億円と見込まれる大規模な再開発計画です。また、地元の町工場が入居する工場棟2棟の建設、白金商店街に面した広場空間の整備が盛り込まれるなど、地域のコミュニティに配慮した計画内容となっています。
今後、2019年度の市街地再開発組合が設立認可されており、2020年度の権利変換計画認可、2021年度から既存建物の解体・着工が進められる見通しです。
三田・田町エリアと白金高輪エリアの間、「住友不動産三田ツインビル」の隣接地である三田三・四丁目地区は、区域面積約4ヘクタールに及ぶ大規模再開発です。
住友不動産が地権者ならびに参加組合員として参画し、地上42階建て・高さ約215メートルの超高層ビルを中心に、総延床面積は約22万5,500平米となる予定です。また、隣接街区と一体となる合計約1万5,400平米の緑地や広場が設けられ、歩道橋や歩行者デッキなどにより歩行者ネットワークが整備されるなど、都市基盤にふさわしい快適な空間となる見通しです。
進行状況としては、2017年9月に都市計画決定がなされ、2018年6月には再開発組合設立の認可を受けています。2019年4月に着工しており、完成時期は2023年10月下旬予定となっています。
白金高輪駅に程近く、魚籃坂下交差点付近に位置する三田五丁目地区でも、再開発に向けて準備が進められています。2017年8月、この地区の地権者により、住友不動産を事業協力者として「三田五丁目地区市街地再開発準備組合」が設立されました。
三田五丁目地区は旧耐震基準の老朽化した木造住宅が密集しており、再開発によって防災性の向上、地域の価値向上が期待されます。共同住宅を主な用途と想定し、2019年の都市計画決定のもとプロジェクトが進められています。
白金アエルシティと三田五丁目地区の間に位置する「白金高輪駅前東地区」でも、再開発に向けた動きがあります。港区まちづくり条例に基づき「白金高輪駅前東地区まちづくり協議会」が発足、2016年2月には「白金高輪駅前東地区まちづくりルール」が公表されています。
まちづくりルールには、賑わいとうるおいの空間づくり、歩行者動線と車両動線の整備などがテーマとして盛り込まれています。また、個別の建て替えでは難しい密集市街地の課題解決として、建物の共同化を行う際には住環境の向上、防火性・耐震性の向上、空地の確保、街路の拡張の実現に取り組むこととしています。
このように、白金高輪エリアでは注目すべき再開発案件が目白押しです。歴史と文化、ブランド力を継承しながらも、未来に向けて大きく発展していくことでしょう。
さらには白金高輪駅の東側、JR線田町―品川駅間において、新駅・高輪ゲートウェイ駅の建設を含む「品川開発プロジェクト(第Ⅰ期)」が進められています。新駅は2020年3月に暫定開業しており、2024年には周辺街区の開発とあわせて本開業となる見通しです。
新駅から直線距離で約1kmに位置する白金高輪エリアも、新駅開業の相乗効果が期待されます。2020年夏以降も、世界の玄関口として大きく発展することが予想されるエリアと言えます。
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