進む東京都心の再開発(23)

竹芝エリア 浜松町駅東側に広がる再開発群、国際競争性の高い観光・産業拠点へ

(写真=Tupungato/Shutterstock.com)
(写真=Tupungato/Shutterstock.com)

都心と羽田空港の中継地点である浜松町駅周辺では、国際拠点としての役割を高めるべく、大規模な再開発案件が複数進められています。最も象徴的なのは浜松町駅西側・駅直結の「世界貿易センタービル」建て替えプロジェクトですが、浜松町駅の東側に位置し、東京湾にも面している「竹芝エリア」でも注目すべき再開発があります。

竹芝エリアは、東芝のお膝元として有名なビジネス街の顔と、歴史を感じる豊かな緑や海辺での優雅な時間を味わえる観光拠点としての顔があり、多様性を有しています。近隣には「旧芝離宮恩賜庭園」「浜離宮恩賜庭園」など、由緒ある庭園が広大な敷地を占め、根強い人気を博しています。また、1995年に開通したゆりかもめの駅として「竹芝駅」「日の出駅」が開業、レインボーブリッジを経由して、お台場、有明といった臨海副都心エリアとつながりました。

さらには海に面した立地特性を生かし、竹芝ふ頭の「竹芝客船ターミナル」から伊豆諸島への海洋ルートが就航。豪華客船で東京湾をクルージングする「東京ヴァンテアンクルーズ」や、毎年夏には浴衣で夕涼みを楽しむ「東京湾納涼船」が運行しています。加えて、日の出桟橋からは、東京湾や隅田川を経由してお台場方面、浅草方面への水上バスルートが運行しているなど、国際的な観光拠点としての色合いが強いのも竹芝エリアの特徴です。

今後はさらなる国際競争力強化を目指し、再開発プロジェクトがいくつも進められていく予定です。今回は竹芝エリアの再開発という観点から、国際都市・東京の将来をイメージしてみましょう。

(本記事は2019/08/20配信のものを2020/05/19に更新しております)

▼目次

  1. 日の出ふ頭小型船ターミナル「Hi-NODE(ハイノード)」が開業
  2. 約28ヘクタールの範囲が対象「竹芝地区まちづくりガイドライン」
  3. 都市再生ステップアップ・プロジェクト「(仮称)竹芝地区開発計画」
  4. 竹芝ウォーターフロント開発計画「WATERS Takeshiba(ウォーターズ竹芝)」
  5. 東芝ビルディングの建替え「(仮称)芝浦一丁目計画」
  6. 区分マンション「イトーピア浜離宮」建替え計画も再開発が後押しに
  7. 再開発で大きく変わる浜松町駅周辺

1. 日の出ふ頭小型船ターミナル「Hi-NODE(ハイノード)」が開業

Hi-NODE
Hi-NODE
2019年8月3日に開業した「Hi-NODE」(野村不動産ホームページより)

竹芝エリアで注目すべきタイムリーな案件に、日の出ふ頭小型船ターミナルHi-NODE(ハイノード)の開業があります。これは後に述べる東芝ビルディング建替え事業(仮称)芝浦一丁目計画の関連事業として、野村不動産、NREG東芝不動産により進められてきました。日の出ふ頭の一角において東京都港湾局の所有地の使用許可を受け、2018年春から海辺の回遊拠点として建物と広場を整備、2019年7月に竣工、2019年8月3日に開業を迎えています。

「Hi-NODE」はコンセプトに「日の出ふ頭から始まる、海辺と暮らしの新しい関係」を掲げ、先進的でスタイリッシュなデザインが特徴的な施設に仕上がっています。船客の待合所をはじめ、飲食機能を導入した施設や海辺のテラス席、イベント開催に使える芝生広場などが整備されています。

2. 約28ヘクタールの範囲が対象「竹芝地区まちづくりガイドライン」

竹芝地区まちづくりガイドラインの範囲
竹芝地区まちづくりガイドラインの範囲(東京都都市整備局ホームページより)

特定都市再生緊急整備地域およびアジアヘッドクォーター特区の指定を受けている竹芝地区において再開発の動きが活発化したきっかけとしては、「竹芝地区まちづくりガイドライン」の策定があります。

2010年12月、東京都都市整備局は竹芝駅前の都有地活用事業として都市再生ステップアップ・プロジェクト(竹芝地区)事業実施方針を発表。総合的なまちづくりの方針を定めた「竹芝地区まちづくりガイドライン」を公表しています。

参照:「竹芝地区まちづくりガイドライン」東京都都市整備局

2012年7月に改定されたこのガイドラインには、「2020年の東京」「東京の都市づくりビジョン」「港区まちづくりマスタープラン」といった行政計画に基づき、まちづくりの方針、整備の方向性が示されています。ガイドライン策定の目的として「豊かな緑、海、文化を実感できる、活気ある業務・商業等の拠点を形成」を中核のコンセプトに、東京の国際競争力強化に資する開発や、防災対応力を備えたスマートシティの実現を推進することが盛り込まれています。

さらに2014年9月には、竹芝地区まちづくり協議会が発足。竹芝の生活・ビジネス・観光の場としての可能性を高め、災害に強いまちづくりを目指すという目的のもと、地区の関係者によるまちづくり活動が行われています。具体的な活動の中身としては、会員交流イベントの開催や防災担当者会議など、地域の活性化につながる取り組みが中心となっています。

参照:「竹芝地区まちづくり協議会」

3. 都市再生ステップアップ・プロジェクト「(仮称)竹芝地区開発計画」

(仮称)竹芝地区開発計画
(仮称)竹芝地区開発計画 完成イメージパース(東急不動産ホームページより)

竹芝エリアの再開発の中核を担うビッグプロジェクト(仮称)竹芝地区開発計画について見ていきます。竹芝地区は、2015年3月、政府より「国家戦略特区」の特定事業として認定されました。それに伴い、東京都が推進する都市再生ステップアップ・プロジェクト(竹芝地区)が発足。東急不動産と鹿島建設が設立した事業会社「株式会社アルベログランデ」が実施することとなりました。

プロジェクトの整備方針は次の通りです。

【国家戦略特別区域計画の特定事業における本プロジェクトの整備方針】

  1. 官民合築・連携による産業振興とにぎわい創出
  2. 浜松町駅・竹芝駅・竹芝ふ頭・にぎわい空間をつなぐ歩行者ネットワークの整備
  3. 防災対応力の強化とエネルギーネットワークの整備
  4. 環境教育の拠点形成と環境負荷低減への取組

全体の計画としては、竹芝駅前にある約1.5ヘクタールの都有地(東京都公文書館、東京都計量検定所、都立産業貿易センター浜松町館の跡地)を、約70年間の定期借地契約で事業会社が借り受ける予定です。開発は大きく「A街区(業務棟)」「B街区(住宅棟)」に分かれており、それぞれ2016年5月、2018年4月に工事が着工しています。

具体的な建築物として、A街区では地上40階建て・地下2階・高さ208.83mの業務棟である「東京ポートシティ竹芝オフィスタワー」が建設中です。オフィスや店舗に加え、ビジネス支援・交流施設、企業支援施設、新産業貿易センターなどの設置が計画されている、まさに複合施設となります。2020年5月31日竣工を予定しています。

一方でB街区には、地上18階建て・高さ約70mの住宅棟である「東京ポートシティ竹芝レジデンスタワー」が建設中です。一般賃貸住宅のほか、サービスアパートメント、シェアハウス、子育て支援施設が設置される予定です。計画では、2020年6月30日竣工、翌月7月上旬からの入居とされています。全体の延床面積は実に約20万平米となり、大きなインパクトを伴うプロジェクトであることが伺えます。

このプロジェクトを経て、竹芝エリアは、羽田空港にアクセスしやすい国際ビジネス拠点としての役割を担うことが期待されています。なかでも文化放送や日本テレビなど大手マスメディア企業が点在するエリアの特性を生かし“デジタル×コンテンツの産業集積地”としての発展がイメージされています。

たとえば、世界的IT企業のソフトバンクグループ株式会社・ソフトバンク株式会社は、本プロジェクトで誕生する新オフィスへの本社移転を予定しています。また、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(KMD)をはじめとする、国内外トップの大学による共同研究機関新設も予定されており、研究開発と人材育成の促進が期待されます。

4. 竹芝ウォーターフロント開発計画「WATERS Takeshiba(ウォーターズ竹芝)」

ウォーターズ竹芝
WATERS Takeshiba イメージパース(JR東日本ホームページより)

JR東日本による再開発プロジェクトで、施工は清水建設が担当しています。敷地面積約2.3ヘクタール、延床面積約102,600平米を活用し、地上26階・高さ約120mの高層棟をはじめ、劇場棟、駐車場棟の計棟が建設される予定です。上層部はホテル、中層部はオフィス、低層部は商業施設が設けられ、劇場棟には四季劇場[春]・[秋]がリニューアルオープン。また、高層棟と劇場棟の間は広場・テラスとして整備されます。

2019年2月には、既存の「自由劇場」を含むエリアの名称がWATERS Takeshiba(ウォーターズ竹芝)に決定しました。高層棟と駐車場棟は2020年4月に開業を予定しておりましたが新型コロナウイルスの影響のため当面延期
されており、劇場棟は2020年内の開業を目指して建設が進められています。

5. 東芝ビルディングの建替え「(仮称)芝浦一丁目計画」

東芝ビル建替え
「(仮称)芝浦一丁目計画」イメージパース(野村不動産ホームページより)

その他の竹芝エリアにおける大規模再開発案件では、浜松町ビルディング(東芝ビルディング)の建替え事業(仮称)芝浦一丁目計画があります。これは野村不動産、NREG東芝不動産、JR東日本が共同で手がける再開発で、区域面積は約4.7ヘクタール、延床面積は約55万平米の大規模複合開発案件です。

具体的な計画の内容としては、高さ約235mのツインタワーが建設される予定です。南側のS棟は、地上46階建て・地下5階、北側のN棟は地上47階建て・地下5階です。用途はオフィス、商業施設、ホテル、住宅などが予定されています。S棟は2020年度の着工と2023年度の竣工を予定しており、N棟は2026年度の着工と2029年度の竣工を予定しています。

また先に述べたように、関連事業として日の出ふ頭小型船ターミナル「Hi-NODE(ハイノード)」が20019年7月に竣工、2019年8月3日に開業しています。さらにはJR浜松町駅南口東西自由通路の拡幅・バリアフリー化、カートレイン乗降場跡地を歩行者専用道路として整備するなど、歩行者ネットワークを強化し、エリアの回遊性を高める工夫もなされています。

6. 区分マンション「イトーピア浜離宮」建替え計画も再開発が後押しに

イトーピア浜離宮建替え
イトーピア浜離宮建替え計画 完成イメージパース(東京建物プレスリリースより)

都市再生ステップアップ・プロジェクト(竹芝地区)の南側隣接地にある区分マンションイトーピア浜離宮では、管理組合と東京建物による建替計画が進行中です。2018年10月に区分所有法に基づく建替え決議が可決されました。マンションの建替え等の円滑化に関する法律に規定される建替組合設立認可、権利変換計画の決議といった手続きを経て、2019年7月から解体工事が進められています。

建て替えの主な理由としては、耐震性能の向上が挙げられます。イトーピア浜離宮は1979年に旧耐震基準で建設されていますが、優れた立地であり事業性が期待できること、周辺の再開発の動きが活性化していることが後押しとなり、耐用年数経過前の建替えへと機運が高まったものと思われます。

建替えに至る経緯としては、まず2006年の耐震診断2次診断調査結果において耐震性能の不適格箇所が見つかったことに端を発します。その後、管理組合の理事会において耐震補強・免震改修・建替えといった対応方法が比較検討され、2015年9月の臨時総会では建替え推進決議の可決と建替推進委員会の設置が承認されました。2016年6月には東京建物が事業協力者に選ばれています。

またイトーピア浜離宮は、耐震診断と耐震化の状況報告が義務づけられる「特定緊急輸送道路沿道建築物」の対象物件であり、2018年3月には東京都から「大規模の地震の振動及び衝撃に対して倒壊し、又は崩壊する可能性がある。」とする耐震診断結果が公表されています。

建替え後の建物は「東京都総合設計制度(共同住宅建替誘導型)」によって約300%の容積率緩和を受けたことから、容積率約700%を前提に地上32階建て・地下1階、高さ約118m、延床面積約3万平米のタワーマンションとなる計画です。約422戸の住戸のほか、店舗や保育園も併設される予定となります。

7. 再開発で大きく変わる浜松町駅周辺

(仮称)芝浦一丁目計画の配置、周辺地区との連携
(仮称)芝浦一丁目計画の配置、周辺地区との連携(野村不動産ホームページより)

ここまで述べてきたように、竹芝エリアではさまざまな再開発が進行中しています。最後に特筆しておきたいのは、エリア内で複数のプロジェクトが行われるなかで、歩行者同線の整備がなされるなど、各々が点ではなく「面」として連携性を持っていることです。今回ご紹介した再開発に加えて、浜松町駅の西側では「世界貿易センタービル」のリニューアルに向けたプロジェクトが進行していることも見逃せません。

再開発が行われることで、竹芝・日の出を含む浜松町駅周辺の回遊性が飛躍的に向上し、国際拠点としての機能がさらに強化されることが期待されています。2020年以降の東京の中核をなすエリアの一つとして、今後の動向に注目しておきましょう。

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