進む東京都心の再開発(7)
都心のなかでもとくに“ブランド力”のある場所といえば、やはり「六本木・赤坂エリア」ではないでしょうか。このエリアは2000年以降、「六本木ヒルズ」と「東京ミッドタウン」という2大ランドマークが誕生し、日本国内では他の追随を許さない人気を誇っています。また、日本だけではなく、海外からも注目され続けているエリアです。
このように説明不要の魅力がある六本木・赤坂エリアでは、2010年代の再開発により発展を遂げていますが、さらに2021年以降の再開発案件が計画・構想され、2021年のコロナ禍においても着々と工事が進められています。そこで、今回は都心としての機能をさらに高めようとしている六本木・赤坂エリアの再開発を紹介します。同エリアの未来や発展性、将来性をイメージしてみましょう。
(本記事は2018/04/16配信のものを2021/5/17に更新しております)
六本木・赤坂エリアは東京23区のほぼ中心に位置しています。立地の優位性からも、多種多様な分野において多くの人を集める一大拠点へと発展しました。高層ビルが立ち並ぶビジネスの中心地としての側面もありながら、永田町に近く政界関係者が行き交います。また、テレビ局や芸能事務所があるため芸能関係者も多く訪れる街となっています。
2大ランドマークである「六本木ヒルズ」「東京ミッドタウン」に加え「赤坂サカス」「赤坂アークヒルズ」などの大規模商業施設や多数の飲食店もあることから、国内外を問わず多くの観光客を集めています。上品な雰囲気とラグジュアリーな体験ができるため、外国人の富裕層にも好まれているエリアといえるでしょう。
このような特徴がある六本木・赤坂エリアは、2011年に国際戦略総合特別区域として指定された「アジアヘッドクォーター特区」のエリアに含まれています。そのため、将来的な発展性を考慮しても、経済の中枢および観光拠点として位置づけられていると考えて良いでしょう。
六本木・赤坂エリアでは、東京2020オリンピック・パラリンピックを見据え、数年ほど前から再開発の動きが加速しています。そこで、注目すべき完成済みの大規模再開発を2つ紹介します。
まず一つ目は、「泉ガーデン」の拡張です。2016年、東京メトロ南北線「六本木一丁目」駅直結の「泉ガーデンタワー」から道路を挟んで西側、約2.7ヘクタールの敷地に「六本木グランドタワー」が完成しました。これにより、泉ガーデンの敷地とあわせて約6ヘクタールの街を形成することとなりました。
六本木グランドタワーは、テレビ東京などが入居するオフィス棟「住友不動産六本木グランドタワー(地上43階・地下2階)」と、住居棟である「六本木グランドタワーレジデンス(地上27階・地下2階)」の2棟から構成されています。またオフィス棟は、六本木一丁目駅に直結しており、交通利便性の高い建物となっています。
泉ガーデンタワーの敷地内には、オフィスビルをはじめ、イベントホールや貸会議室、ホテル、住居、レストラン、ショップ、美術館などが揃っています。六本木グランドタワーの完成により、これら泉ガーデン内の既存施設は今まで以上に活用されることが予想されます。
二つ目は、「赤坂インターシティ」の拡張です。アメリカ合衆国大使館の隣接地に「赤坂インターシティ」が建設されたのは2005年のことですが、時を経て2017年8月、赤坂インターシティ北側の敷地に「赤坂インターシティAIR」が竣工。2017年9月にオープンとなりました。
赤坂インターシティAIRは地上38階、高さ205メートルの超高層ビルで、東京メトロ銀座線・南北線「溜池山王」駅に直結しています。オフィスやコンファレンスだけでなく、洗練されたショップやレストランなどがあり、流行の発信地としても注目されています。
さらには、環状2号線・虎ノ門方面に抜ける「アメリカ大使館前通り」を、大規模な緑道空間として整備する「赤坂・虎ノ門緑道構想」などもあり、さらなる発展性が期待されています。
三井不動産が手がける「パークコート赤坂檜町ザ タワー」が2018年2月に竣工しました。東京ミッドタウンに近い「檜町公園」を庭とするような、ステイタス性が溢れる立地の超高層タワーマンションとして富裕層を中心に注目を浴びています。
東京2020オリンピック・パラリンピック後に完成予定の再開発としては、「(仮称)赤坂二丁目プロジェクト」があります。森トラストおよびNTT都市開発が手がける再開発で、2017年12月に整備方針が決定しました。その後、2021年2月12日、都市再生特別措置法による都市再生緊急整備地域内での「民間都市再生事業計画」として国土交通大臣の認定を受け、2021年3月16日に着工しています。
このプロジェクトでは、地上43階・地下3階、高さ約210mの超高層ビルを建設する計画です。また、中身としては、オフィスやホテル、サービスアパートメント、商業施設等が予定されています。スケジュールとしては、2021年1月15日に着工され、一期竣工および開業が2024年8月予定、二期竣工に関しては2025年10月完成予定となっています。
六本木ヒルズの西側隣接地、西麻布三丁目と六本木六丁目にまたがる約1.6ヘクタールを対象に「西麻布三丁目北東地区第一種市街地再開発事業」が進められています。
2013年3月に市街地再開発準備組合が設立、野村不動産およびケン・コーポレーションを事業協力者として再開発計画が進められてきました。その後の経緯としては、2019年4月に都市計画が決定され、2020年9月10日、東京都より市街地再開発組合の設立認可を受けました。
具体的な建設計画としては、高さ約200メートル・延べ床面積約96,000㎡の超高層棟には、約500戸の住宅をはじめ、ホテル・オフィス・商業施設が入居する予定です。また、もともと計画地にあった櫻田神社および妙善寺を再配置し、都市計画道路補助10号線(テレビ朝日通り)を拡幅、歩行者デッキ・広場・緑地を整備する計画となっています。
今後の予定としては、2021年度の権利変換計画認可を経て、2022年度に解体工事から着工を進め、2026年度の完成を目指して再開発計画が進められる見通しです。
六本木ヒルズの東側一帯、六本木と麻布十番の中間に位置する「六本木五丁目西地区」でも再開発構想があります。森ビル、住友不動産が事業構想を練っていて、六本木ヒルズのような大規模施設「第二六本木ヒルズ」が建設されるのではないかといわれています。まだ具体的な計画内容は不明ですが、実現すれば六本木エリアの価値はよりいっそう高まっていくことでしょう。
※2019年8月29日追記:最近の報道では、森ビルが手掛ける「虎ノ門・麻布台プロジェクト(虎ノ門・麻布台地区第一種市街地再開発事業)」を「第二六本木ヒルズ」と称しているケースも見受けられます。
このように、六本木・赤坂エリアは現状維持にとどまらず、さまざまな再開発が行われています。日本だけでなく世界的にも恵まれた立地の優位性を生かし、東京オリンピック後を見据えたさらなる発展が期待されます。
また、多くのビックプロジェクトを抱える虎ノ門エリアと近接し、「100年に一度の再開発」として注目される渋谷エリアと六本木通りや青山通りで繋がっているなど、大規模再開発が進む周辺エリアとの相乗効果も期待できるでしょう。今後も資産価値を維持・向上させていくエリアとして、目が離せないのではないでしょうか。
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