定期借家契約は入居者対策に有効か?そのメリット・デメリット

(写真=PIXTA)
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平成11年に借地借家法の一部改正により「定期借家制度」が創設され、一般的な普通借家契約とともに定期借家契約が利用されるようになりました。オーナーにとっては建物を貸し出す期間が確定的になるため一時的な建物賃貸借が行いやすくなりました。また問題のある入居者への対策として定期借家契約を利用するケースも出てきています。

今回は定期借家契約の基本知識、そしてメリットとデメリットを解説していきましょう。

(本記事は2018/01/17配信のものを2020/09/11に更新しております)

▼目次

  1. 普通借家契約と定期借家契約の違いとは
  2. 定期借家契約を利用するメリット
  3. 定期借家契約にもデメリットがある
  4. 問題のある入居者対策には効果が見込める?
  5. 定期借家契約はオーナーと入居者の双方の目線から検討しよう

1. 普通借家契約と定期借家契約の違いとは

まず普通借家契約と定期借家契約にはどのような違いがあるのかを確かめましょう。

1-1. 普通借家契約とは

普通借家契約とは、いわゆる一般的なアパートやマンションを借りる時の賃貸借契約です。契約期間は2年間のケースが多いですが、一般的には契約期間の途中であっても借主(入居者)から解約(退去)の申し出が可能です。

一方で、貸主であるオーナーからは賃貸借契約を一方的に打ち切ることはできません。なぜなら、借地借家法で借主は保護される立場となっていて、正当事由がない限り賃貸借契約を解除することができないからです。

1-2. 定期借家契約とは

定期借家契約(定期建物賃貸借契約)とは、契約で定めた期間が満了することにより、更新されることなく確定的に賃貸借が終了する建物賃貸借のことです。例えば最初から2年しか部屋を貸さないと決まっていれば、あらかじめ2年間の定期借家契約を締結しておく方法があります。転勤や海外赴任などで自宅を使わない期間が発生するため一時的に賃貸に出したい場合や、一定期間後に建物を取り壊す予定が決まっている場合などはこの方法が向いています。

貸主の希望で期間を定めることができることに加え、借主からの中途解約が制限されます。中途解約が可能なケースとしては、転勤、療養、親族の介護等やむを得ない事情の場合、借主に不利でない中途解約の特約が定められている場合がありますが、それ以外は中途解約ができない契約形態です。

1-3. 定期借家契約締結手続きのポイント2点

もちろん、定期借家契約であることを借主に説明した上で契約しなければなりません。具体的には、定期借家契約締結の手続きとして次の2点が必要です。

  • 契約期間を定めた上で書面によって契約する。
  • 契約書とは別にあらかじめ書面を交付して、契約の更新がなく期間の満了とともに契約が終了することを説明する。

また、期間が1年以上の定期借家契約を締結した場合には、貸主は期間満了の6か月前から1年前の間に、借主へ契約終了の通知を行う必要があります。

2. 定期借家契約を利用するメリット

2-1. 定期借家契約のオーナー側のメリット

定期借家契約を結んだオーナー側の大きなメリットは、あらかじめ定期借家契約としておくことで、先々使用する予定があっても貸し出すことができるという点です。

2-2. 定期借家契約にする具体的なケース例

例えば転勤で2年間家を空けるので、その2年間だけ家を貸して家賃収入を得たい場合には有効です。また「数年後に建て替えが決まっているが、それまで部屋を貸して家賃収入を得たい」など、自分の都合に合わせて不動産を運用する時にこの契約は大変便利です。

3. 定期借家契約にもデメリットがある

3-1. 定期借家契約のデメリット

ただし定期借家契約にもデメリットはあります。最も大きなデメリットとしては、入居者確保や家賃設定の面で不利になるという点です。当然、入居者にとって定期借家契約は、不都合な契約です。部屋探しのときに入居する期間が決まっているという人は少ないでしょう。

3-2. 契約入居後の入居者側のコスト・デメリット

仮に決まっていても定期借家契約の期間と合致するケースはまれです。また短期間しか入居できないとなると、契約期間終了後の転居コストが余計にかかることが想定されます。さらに中途解約の特約条項がなければ、特段の事情がないかぎり契約期間終了まで解約ができない点も入居者にとってデメリットとなります。

このような理由から定期借家契約は入居者から敬遠されやすくなります。不利な条件をカバーするため、定期借家契約で入居者を募集する時には周辺の物件相場より1割ほど家賃を下げることが一般的です。

4. 問題のある入居者対策には効果が見込める?

4-1. 定期借家契約によって良い入居者だけを確保する方法

定期借家契約の場合であっても、契約期間満了後の再契約を可能とする特約条項を加え、普通借家契約の更新と同様に入居し続けてもらえるようにする方法もあります。例えば「借主および入居者が契約条項に違反しなかった場合に再契約が可能」といった特約内容とすることで、オーナーにとって良い入居者だけを確保していく方法が考えられます。

4-2. 問題のある入居の具体例

問題のある入居者の例としては次のようなものです。

  • 家賃を何か月も支払わない、繰り返し滞納する
  • 騒音を発生させて周囲の住人に迷惑をかけている
  • ペット飼育禁止の契約にもかかわらず、ペットを飼っている
  • 本来の目的以外の用途に使用している

4-3. 入居者の問題行為を禁止事項として契約書で明示

このような入居者の行為を禁止事項として契約内容に盛り込むとともに、さきほど述べたような特約内容で定期借家契約を締結すれば、問題のある入居者に対しては契約違反があったことを理由に「再契約しない」という選択肢が出てきます。なお普通借家契約でも、一定の信頼関係の破壊があると認められる場合には法的手続きにより明け渡しが認められるケースもあります。

4-4. 入居者募集に支障をきたさないように

もっとも再契約可能な定期借家契約であっても、入居者としては再契約できるかどうかが心配で入居希望物件の選択肢から外してしまう可能性が考えられます。定期借家契約としたために入居者がつかなくなり家賃収入が得られないという事態になってしまうと本末転倒なため、利用については慎重に検討しましょう

5. 定期借家契約はオーナーと入居者の双方の目線から検討しよう

5-1. マンション経営では入居者目線が最優先

定期借家契約は一時的な貸し出しなど、期間を限定して貸し出すことができるというメリットがある反面、入居者確保や家賃設定の面で不利になるというデメリットがあります。

また、良質な入居者を確保したいというオーナー側の目線から定期借家契約を利用する動きもありますが、家賃収入を得ることが最優先のマンション経営といった不動産投資では「入居者の目線」で入居してもらいやすい方法を検討することも大切です。

5-2. 入居者の契約違反には賃貸管理会社に任せること

なお、万が一入居者に契約条項の違反があった場合、普通借家契約、定期借家契約にかかわらず、まずは入居者に是正してもらうよう話をしていくことになります。そういった場合にオーナーだけで対応するのは難しいため、入居者対応業務を引き受けてくれる賃貸管理会社に任せておくと、万が一何かあった場合でも安心してマンション経営を継続していくことができるでしょう。

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