愛着のある住み慣れた街や家から引っ越すことは、人生の中でそれほど多くの回数はないかもしれません。しかし、すべての物や事にはいつか終わりが来るのは必然です。不動産も同じで、どうしても売却せざるを得ない場面もあります。そこで、今回は不動産の売却理由を整理して解説します。不動産は個人で所有する場合と法人で所有する場合がありますので、それぞれに分けて見ていきます。
法人で持つ不動産は、本社や支社などの事務所、倉庫、工場、社員寮、保養所などが挙げられます。所有者である法人が業績不振に陥り、保有する必要のない不動産から売却することはよくある話です。例えば、業績の良い時代に社員の福利厚生目的で地方の観光地などに所有していた保養所を売却する例などはその典型といえるでしょう。
また、時代の変化から社員寮制度そのものが古くなり、「仕事とプライベートの時間を切り離したい」といった社員からの声で、寮を売却するといったケースも増えてきています。さらに、事業内容の変更や事業の選択と集中により、ある部門の切り離しが行われそれに付随する倉庫などが売却されたり、新しい高速道路やインターチェンジのそばに移転したりするために建て替えが行われる場合もあるでしょう。
このケースでは、取引先の銀行が業務の不振を理由に抵当権をつけている不動産を売却することで、財務内容を良く見せることがあります。財務上固定資産である土地や建物を売却し、それで入ってきたキャッシュを借入金の返済に充てるという流れです。不動産業者には、銀行や債務者から債権整理を依頼された弁護士や破産管財人から紹介される物件もあります。
中小企業の大廃業時代といわれている昨今、この種類の売却依頼は年々増加傾向にあります。後継者不在が主な要因となり、「会社を廃業するので不動産を売却する」といったケースです。この場合、不動産の売却により得たお金を老後生活資金に回すケースが多く見られます。中小企業庁の調査によると、今後10年で70歳を超える中小企業、小規模事業者の数は約245万人で、そのうちの約127万社が後継者未定と回答しています。廃業による不動産売却は、今後、さらに増えてくることが予想されます。
日本の少子高齢化に伴い、空き家問題が盛んに宣伝されています。特に地方ではその傾向が強く、「親の認知症や介護の問題で施設に入居した後の実家をどうするか」が、大きな社会問題となっています。総務省統計局は、5年ごとに「土地・家屋調査」をしています。直近の2013年10月の調査結果では、日本の空き家は820万戸でした。さらに、2018年6月の野村総研の調査では、2018年末の空き家戸数は、1,026万戸と1,000万戸の大台を超えていると予想しています。
その中には、相続した不動産も入っています。親から実家を相続したものの、不動産が手にあまり、売却したいといったケースです。売りやすいところの不動産であれば、売却先も容易に見つかりますが、地方物件の場合は、まったく買い手が現れないこともあります。首都圏でも郊外で交通の便が悪い不動産のケースでは買い手がつかない場合もあります。
相続には不動産はつきものです。むしろセットと考える必要があるでしょう。相続税の支払いのために実家を売却する必要に迫られるケースもあります。売れない不動産を多く抱えた相続人は、相続税や所有し続ける場合の固定資産税をどうするかなど、頭を悩ます問題となりがちです。
親の高齢化により、施設に入るケースが数多く出てきています。この場合、「親が今まで住んでいた不動産をどうするか」は頭の痛いところです。もし、不幸にも親が認知症になってしまった場合でも、その物件は基本的に所有者以外が処分することはできません。よくあるケースが、不動産を売却して施設に入居するお金を工面しようと考えていたが、親が認知症になってしまい、不動産が売却できず身動きが取れなくなってしまうケースです。
それを防ぐ一つの方法が、家族信託です。最近は事例も徐々に出てきていますので、今後、幅広く使う場面があるかもしれません。また、まだ元気なうちに、子どもが独立して夫婦2人になったので、郊外の広い家を処分して、より利便性の高い都心のマンションに住み替えるといった例も出てきています。
【参考記事】家族信託(民事信託)を活用しよう!「もしも」に備えるリスクヘッジ
離婚後、夫が不動産を売却して妻への慰謝料や養育費に充当するケースです。また、不動産の名義が夫婦共有になっている場合、その不動産を売却してキャッシュに変えて分割することもあります。もし住宅ローンの残債がある場合は、売却代金でローンの返済を行い、その残りを分配することとなるでしょう。
ここまで不動産の売却の代表的な例を見てきました。問題は、「いざ不動産を売りたいと思ったときに、想定していた通りの値段で売れるかどうか」です。
その実態は、自分が予想していた金額よりも低額でしか売れないケースが散見されます。その理由は、いつまでに売らなくてはならないといった、売却の期限が決まっていることが多いからです。さらに、なんとかして売却せざるを得ない理由があるからということで、買い手側に有利な値がついてしまうのです。不動産を売却する予定がある方は、なるべく早く動き始めることで、余裕を持って売却交渉に臨め、ひいては高値で売れる可能性が高まります。
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