大切な資産を効率的に増やすのが資産運用です。安定した老後を願う人には、とりわけ関心の高いテーマでしょう。資産運用には手堅い貯蓄や国債をはじめ、株式投資、投資信託、不動産投資、FXなど、さまざまな手法があります。
その中で、近年特に注目されている新しい投資手法が「ソーシャルレンディング」です。ここではその仕組み、運用利回り、メリット、デメリットについてご紹介します。
(本記事は2019/08/09配信のものを2020/04/15に更新しております)
「ソーシャルレンディング(Social Lending)」は直訳すると「社会的融資」という意味ですが、最近は「インターネット上で、お金を借りたい人・企業と、貸したい人・企業とを結び付けるサービス」という意味で使われることが多いです。WEB上での社会的ネットワークを意味する「ソーシャルネットワーク(Social network)」から派生した言葉だと思われます。
ソーシャルレンディングと聞くと「クラウドファンディング」を思い浮かべる方もいるかもしれません。クラウドファンディング(Crowdfunding)は「群衆(Crowd)からの資金調達(Funding)」を意味し、主にWeb上で不特定多数から資金を集める仕組みのことです。資金提供者は特定の活動を支援する目的で、あるいは出資の見返りに配当や金利などを得る目的で出資します。
ソーシャルレンディングもインターネットを介した資金調達の仕組みであり、クラウドファンディングに該当します。クラウドファンディングには、寄付型・購入型・融資型・ファンド投資型・株式投資型の5つの種類があるとされ、このうちソーシャルレンディングは「融資型クラウドファンディング」に分類されます。
【参考記事】最近よく聞くクラウドファンディングの仕組みとは
国内クラウドファンディング全体の市場規模は、2015年度は379億円、2016年度は748億円、2017年度は1,700億円、2018年度は2,045億円と成長の一途をたどっております。またその中でも、融資型クラウドファンディングであるソーシャルレンディングの比率は、基本的に8~9割以上を占めています。案件種別は不動産投資、業者向け融資、宿泊ビジネス、再生エネルギー、海外債券など幅広く、参入する運営会社も続々と増えています。
出典:矢野経済研究所「国内クラウドファンディング市場の調査(2018年)」
このように注目を浴びているソーシャルレンディングですが、2008年に日本でサービスが始まった当初は、思うように普及しませんでした。すでに消費者金融やカードローンといった個人向け金融業があり、参入する余地が少なかったことなどが原因と言われています。
その後、リーマンショックを経て、再び不動産価格の上昇期を迎えるとソーシャルレンディングは不動産業界における柔軟な資金の提供元として注目されるようになります。徐々にメディアでも「新しい資産形成の手法」として取り上げられるようになり、投資商品としてメジャーな存在となってきました。
長引く超低金利や公的年金への不安などから、資産家や投資家がより運用利回りの高い金融商品を求めるようになったという社会的背景もあります。
ここで、投資手法としてのソーシャルレンディングのメリットとデメリットを簡単に整理しておきます。
ソーシャルレンディングのメリットは、一言でいうと「手軽さ」にあります。特に以下の3点がメリットで挙げられます。
1口1万円程度の少額から投資ができます。また運用期間も数か月から1年程度に設定されている案件が多く、参入のハードルが非常に低いのが特徴です。
ソーシャルレンディングの運用期間における運用利回りは年利表記で5~10%と比較的高く、中には10%を超える案件もあります。ただし「年利表記」というのが勘違いしやすいポイントです。運用期間が終了すれば配当もストップするため、1年間における利回りは、運用期間が6か月の場合では2.5%~5%、3か月の場合だと1.25%~2.5%とさらに低くなります。また数年間、まして中長期にわたり表記された利回りで運用し続けることができるとは限りません。これらの点は注意しておきましょう。
株式投資やFXで必須とされる、「定石」や為替相場の「読み」などの知識や経験はほとんど必要ありません。
ソーシャルレンディングの主なデメリットとしては、利回りの高さゆえ、それなりのリスクが伴います。具体的なデメリットとしては以下の3点です。
融資先の企業が事業の頓挫などの事情で返済能力を失った場合は「貸し倒れ」となります。そのため、事業者が何らかの担保・保証を行っているケースもあります。
融資先だけでなく、運営事業者そのものにも破綻リスクがあります。事業者の財務状況などは、必ずチェックしておきましょう。
案件ごとに設定された運用期間中は、出資金を動かしたり出資をキャンセルしたりすることは原則できません。
今回は、ソーシャルレンディングの成り立ちや仕組み・メリット・デメリットなどについて解説してきました。手軽で運用利回りの高い「新時代の投資手法」として成長を続ける一方で、2019年には業界最大手の配当遅延に対する集団訴訟が行われるなど、信頼性が揺らぐ事件も発生しています。
市場が成熟するまでの間は、しばらく玉石混交という状況が続くでしょう。より安全に、効果的に利用するためは、やはり自分自身での広範な情報収集と慎重な姿勢が大切です。
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