不動産投資、つまり賃貸経営の規模を拡大していくと、資産管理会社を設立するとメリットが生まれることがあります。ここでは節税を中心として、コスト面での個人と法人の違いについて紹介します。
(本記事は2017/11/03配信のものを2020/04/08に更新しております)
不動産に限らず、一般的に自営業者は所得が1,000万円を超えるくらいで法人成りすると節税メリットがあるといいます。その理由は、法人税と個人にかかる所得税との違いにあります。
所得税は累進課税制をとっているため、利益が増えれば増えるほど税率も高くなります。売り上げから経費や各種控除額を引いた所得が900万円~1,800万円の場合、所得税率は33%、4,000万円を超えると45%です。
それに対して、法人税は800万円を超えると頭打ちとなります。資本金1億円以下の場合、実効税率は30%弱です。単純に税率を比べてみても、法人のほうが得なのがわかります。また、法人から役員報酬として給料をもらう形にすることで、所得を分散し低い税率のままにすることも可能です。
また、赤字になったときに個人が損失を繰り越すことのできる期間は3年間だけですが、法人の場合は9年間と長期に渡ります。
もし何らかの理由で賃貸物件を売却した場合、保有期間が5年以下の個人だと40%近い税率の短期譲渡所得となりますが、法人にはこのような制約はありません。ただし、売却益を狙って何度も取引することは宅建業法の免許が必要なので注意してください。
他にも、個人の生命保険料控除は12万円までが限度なのに対し、法人契約の生命保険は基本的に損金経理(所得から差し引くこと)できるなど、法人化することで税金がかからない処理をできる範囲は広がります。
法人設立で発生するのはメリットだけではありません。
設立時には登記費用がかかります。合名会社の場合で6万円、株式会社の場合は15万円とさらに定款の認証費用として9万円(紙認証の場合。電子認証の場合は5万円)が発生します。手続きを司法書士に依頼すれば、さらに数万円の報酬を支払うことになります。
少なくとも年に1回は、決算書を作成して申告しなければいけません。法人を運営する限り、個人よりももっと複雑な経理業務をし続けなればならないのです。税理士を雇えばまた報酬が発生します。
通期で赤字になったとき、所得税の場合は払う税金はありませんが、法人税の場合は利益が出るかどうかにかかわらず、法人事業税の均等割を納める必要があります。自治体によって異なりますが、例えば東京23区の1人会社で資本金1,000万円以下なら年間7万円です。
具体的に、法人を設立したときの資産管理方法は次の3つに分けられます。
最もオーソドックスなのは、法人名義で物件を取得することです。物件を売却した場合、その利益は法人として課税されます。
個人や家族が物件を取得し、法人にサブリースするという方法もあります。適正な管理費であれば、損金経理できるため、ここでも節税できるかもしれません。
サブリースは物件を法人に貸し付け、法人から入居者に転貸(又貸し)する契約ですが、個人名義で所有した物件を入居者と直接契約し、設立した法人を管理会社として委託管理報酬を払うことも可能です。
これまでの要点をまとめますと、個人の所得税は累進課税制であり、最高税率は45%にもなります。それに対して法人税は資本金1億円以下の場合で約30%です。一般的には、所得1,000万円が法人成りの目安となります。他にも生命保険料や物件の管理費など、法人化することで所得から差し引くことできる項目は増えます。
ただ、資産管理会社の設立費用やランニングの経理コスト、赤字でも事業税が発生するなどのデメリットもあります。税金の仕組みは複雑なので、よくメリット・デメリットを理解し、税理士と相談したうえで活用することをおすすめします。
【2020年3月度人気記事ランキングトップ7】