不動産投資ローン活用術(5)

マイナス金利が不動産市場に与えた影響とコロナ禍での今後の行方は?

(写真=1599686sv_Shutterstock.com)
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日銀によるマイナス金利導入のニュースをなんとなく知っている人でも、マイナス金利が経済のどの部分にどのような影響を与えているのかを説明することは難しいものです。

そこで、これまで高水準な価格が続いている不動産にスポットを当てて、マイナス金利の仕組みと不動産市場との関係を見てみましょう。今後不動産に投資をする上で基礎となる知識を理解していただければと思います。

(本記事は2017/10/10配信のものを2023/01/08に更新しております)

▼目次

  1. マイナス金利の仕組みと狙い
  2. イナス金利が不動産市場へ与える影響
  3. 今後の不動産価格の行方は?
  4. 専門家のセミナーや相談で情報収集

1. マイナス金利の仕組みと狙い

1-1. 日銀によるマイナス金利政策とは

そもそも、マイナス金利はどのような政策で、どのような狙いを持っているのでしょうか?
簡単に言うと、「金融機関の預金の金利をマイナスにして、企業や個人がお金を借りやすくする政策」です。

2016年2月から、日銀は歴史上初めてマイナス金利の導入を開始しました。私たちが金融機関に預けているお金の金利がすぐマイナスになるというわけではなく、金融機関が日銀に預けているお金(日銀当座預金)の金利が-0.1%になったのです。

1-2. マイナス金利の狙い

マイナス金利の狙いは、経済に刺激を与えることです。マイナス金利だと、金融機関は日銀にお金を預けていても目減りするだけです。したがって、金融機関が企業や個人に貸し出したり、投資に回したりすることで、市場にお金が回るようになります。結果として、企業の設備投資や個人の消費が活発化するというわけです。

2. マイナス金利が不動産市場へ与える影響

2-1. 不動産市場には追い風に

マイナス金利の導入は、不動産市場にとってプラスの効果を持っていると考えられます。企業、そして個人も、不動産を購入するときに自己資金だけで賄うことはあまりありません。

企業の場合であれば銀行からの借入れや社債の発行などによってお金を調達しますし、個人の場合であれば住宅ローンを利用する人が多いことでしょう。そして、マイナス金利導入の影響によって、これらの借入金の金利も下がります。一例として、次に住宅ローンの金利の推移を見てみましょう。

2-2. 住宅ローン金利の推移

三井住友銀行の住宅ローンは、20年超35年以内のもので2016年2月前半(マイナス金利導入直前)は1.99%だったのが、マイナス金利導入から半年経過した2016年8月には1.34%まで下落しました。2017年に入って1.6%台まで戻っていますが、2019年10月時点においては1.59%とまたほんの少し下がり、2020年8月時点では1.78%でした。したがって、マイナス金利導入によって住宅ローン金利が下落したことは確かな事実といえます。
(参照:三井住友銀行ローン金利一覧

2-3. 不動産投資ローン金利への影響

住宅ローンの金利が低位に推移していることは、個人の不動産購入者にとってお金を借りやすい状況が訪れているということでもあります。つまり、マイホームの購入だけでなく不動産投資を狙う人々にとっては、願ってもないチャンスです。ちなみに、実際に不動産投資ローンの金利水準も住宅ローンと同じくマイナス金利政策導入前と比べて下がっています。

2-4. 首都圏の中古マンション成約数の推移

実際、国土交通省の「不動産市場動向マンスリーレポート」によると、2016年後半から首都圏の中古マンション成約数が増えており、2017年、2018年に入っても勢いが衰えていません。2017年9月の成約数は3,222件(前年同月比+2.3ポイント)、2018年9月の成約数は3,244件(前年同月比+0.7ポイント)となっています。また、2018年全体では37,217件と前年比-112件と微減だったものの、過去最高水準の37,000件台を維持しており、依然として不動産市場が活気づいているといえます。(※2020年8月時点での最新の不動産市場マンスリーレポートによるデータは2019年1月分まで)

3. 今後の不動産価格の行方は?

3-1. 首都圏の中古マンション成約単価の推移

不動産市場に流入する資金が増加したことで、首都圏を中心に不動産価格の上昇が続いています。公益財団法人東日本不動産流通機構の「月例マーケットウォッチ」によると、2012年から7年連続で中古マンションの成約単価(1平方メートル当たり)が上昇しています。2019年の成約単価は53.95万円と、前年比で+3.8ポイントの伸びとなっています。

直近の動きとしては、新型コロナウイルスの影響によって、2020年4月の成約単価は50.88万円(前年同月比-4.5ポイント)と下がったものの、2020年5月の成約単価は52.03万円(前年同月比+0.4ポイント)、2020年6月の成約単価は53.48万円(前年同月比+1.4ポイント)と横ばいもしくは少しの上昇と底堅く推移していることがわかります。(※月例マーケットウォッチ2020年より。また2020年4~6月の成約数は前年同月比-50~-10ポイントほどで推移。)

3-2. アベノミクス+オリンピックの効果の持続は?

コロナ禍前までは、アベノミクスによる株価上昇や東京オリンピックに向けた宿泊・観光施設などの建設推進から、不動産市場にとって追い風が吹き続けるように思われていたのは確かです。

しかし今後の不動産価格がどうなるのかは容易に予測できない中で、これまでのアベノミクス+オリンピックの効果による不動産価格上昇の持続自体は、新型コロナウイルスの影響によってほぼなくなるものと考えられます。

そこで今後は、不動産市場から資金が引きあげられる動きはないかなど、社会経済情勢の変化には常に気を配っておきましょう。最終的には自分のライフプランをよく考慮して投資の是非を判断する必要があります。

4. 専門家のセミナーや相談で情報収集

4-1. マイナス金利政策の行方

新型コロナウイルスの影響が出るまでは、2016年2月に日銀が導入したマイナス金利によって、金融機関による貸出しが刺激されて不動産市場が活気づき、住宅ローン金利は低下し、不動産の成約件数は増加および高水準維持の傾向にありました。また、コロナ禍への景気対策としての日銀の金融緩和政策の維持・拡大の方向は揺るがないものとなっており、マイナス金利はまだまだ続くものと考えられます。

4-2. コロナ禍だからこそ情報収集が大切

現状は、首都圏を中心に中古マンションといった不動産価格の高水準での推移は続いていますが、一時的には大きく成約数が下がってもいるので、今後の予測は非常に困難なものがあります。マクロ情勢と自分の人生(老後の生活像)をよく考えるとともに、今のようなコロナ禍だからこそ専門家のウェブセミナーや個別相談などを通じて情報収集をしてみましょう。

(参考記事)
老後資金について、気になる生涯年収と生涯支出の話し
早めの準備が必要です!日本の年金問題

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