「事業計画書」が不動産投資で必要なケースと作成時の注意点を知ろう

(写真=Rawpixel.com/Shutterstock.com)
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不動産投資では大きなお金が動きます。特に対象となる不動産は、数千万円から数億円規模のものまであり、融資を受けて投資するケースがほとんどです。そう考えると、実際に投資を行う際には、慎重な判断が求められます。特にリスクに対しての配慮は欠かせません。

だからこそ、不動産投資を行う際にはシミュレーションが必要になります。見方によっては、不動産投資の成否は事前の計画、つまり「事業計画」が左右しているともいえるでしょう。「どのくらいの投資金額に対し、どのくらいのリターンが得られるのか」を現実的な数字として確認しておくことは重要です。そのような「事業主としての視点」が投資家には必要となります。

(本記事は2018/09/05配信のものを2020/08/04に更新しております)

▼目次

  1. そもそも不動産投資で「事業計画書」は必要か?
  2. 事業計画書が不要なケース・必要なケース
  3. 事業計画書の提出が不要な場合でもシミュレーションは大切
  4. 事業計画書を作成する場合の注意点:手間を最小限にする
  5. 不動産投資の精度をより高めるために

1. そもそも不動産投資で「事業計画書」は必要か?

1-1. 不動産投資での事業計画書とは

不動産投資を事業として考えると、気になるのが「事業計画書」の必要性ではないでしょうか。一般的に事業を行う場合には、あらかじめ事業計画書を作成します。事業計画書とは、各金融機関から融資を受けたり、自らの事業を俯瞰したりする目的でつくられる事業の全体像をまとめた資料のことです。

具体的には、

  • 会社プロフィール
  • 事業のコンセプト
  • ビジョン
  • 事業ドメイン
  • 社会的背景
  • 市場規模など

その事業を知るために必要な情報が網羅されています。その他にも、自社の強みや販売戦略、財務計画など、事業を成功させるために欠かせない情報が盛り込まれているため、事業をはじめる際には作成するのが基本となっているのです。

1-2. 不動産投資における事業計画書の必要性は?

インターネットで出回っている情報の中には、不動産投資でも事業計画書が必要になると書かれているものがあるため、不動産投資を始めることにハードルを感じている方もいるかもしれません。ですが実際には、不動産投資において事業計画書は不要なケースが多くなっています。

2. 事業計画書が不要なケース・必要なケース

ではなぜ、不動産投資には事業的側面があるにもかかわらず、事業計画書が必要でないケースが多いのでしょうか。不動産投資の全体像をふまえたうえで事業計画書が不要なケース、必要なケースを考えてみましょう。

2-1. ワンルームマンション投資では金融機関への事業計画書の提出は不要

不動産投資の中でも区分マンションに投資する場合であれば、金融機関に対して事業計画書を提出する必要はありません。なぜなら、区分マンションは将来にわたる収益の見通しが立てやすく、金融機関が物件概要だけでも事業性を判断できるためです。

特に、ワンルームマンションへの投資は少ない自己資金で始められ、所有した後も手間をかけずに行える投資として知られていますが、融資の審査においてもワンルームマンション投資は事業計画書を作成する手間がかからず、始めやすい投資と言えます。

2-2. アパート経営といった一棟物件などでは事業計画書の提出を求められることも

一方で、アパート経営のような一棟物件への投資では、金融機関から事業計画書の提出を求められる場合があります。なぜなら、一棟物件は区分マンションに比べて、想定されるリスク(リターン)の振れ幅が大きく、金融機関としても綿密な試算を行ったうえで融資を決定しなければならないためです。

もっとも金融機関は、地方の物件などで、リスクが高いことに加え事業性に疑問符がつくと予想される場合、事業計画書の提出を求めるケースが多いようです。仮に金融機関から事業計画書の提出を求められた場合には、購入物件を再検討するのも良いかもしれません。

3. 事業計画書の提出が不要な場合でもシミュレーションは大切

3-1. 事業計画書が不要でも「事業計画」は必要

もちろん、事業計画書の提出が不要だからといって、不動産投資において「事業計画」が不要というわけではありません。事業計画書という形でなくても、購入前には収支のシミュレーションを行うことが大切です。

3-2. 購入前の収支シミュレーションはしておこう

例えば、家賃収入や管理費・修繕積立金、管理代行手数料など月々の基本的な収支はもちろん、納税額や節税効果・還付金などを加味した年間収支、空室期間をどのくらい見込んでおくか、入居者退室時のリフォームや修繕・設備交換に関する費用はどのくらいと想定されるか、返済が進むとどのくらい残債が減りどれだけの純資産が形成されるのか、いつ・どのくらい繰り上げ返済をしておくかなど、購入前にシミュレーションしておくことで安心して不動産投資を行えます。

なお、自分で計算しなくても、不動産投資会社がシミュレーションを行ってくれる場合もありますので、利用してみるのも良いでしょう。

4. 事業計画書を作成する場合の注意点:手間を最小限にする

4-1. 事業計画書には時間を掛け過ぎない

仮に、どうしても事業計画書を作成しなければならない場合には、事業計画書の作成に時間をかけすぎないことが大切です。時間をかけすぎてしまうと、その分不動産投資のスタートが遅れ、機会損失につながります。また、事業計画書を提出したのに融資が下りなかったとなれば、作成にかけた時間が無駄になってしまいます。

4-2. テンプレートを参考にして手間を最小限に

特に、会社員・公務員といったサラリーマンなどの本業を持つ方は、不動産投資にかけられる時間が限られています。時間を有効に活用できるよう、インターネット上のテンプレート(雛形・サンプル)を参考にするなどして、手間を最小限にして作成すると良いでしょう。

なお、不動産投資における事業計画書の書き方としては、取得価格、取得経費、年間収入、年間支出といった項目がポイントになります。特に収入に関しては、空室期間リスクを加味して計算し、礼金や更新料など不確実な収入は参入しないのがセオリーです。

5. 不動産投資の精度をより高めるために

5-1. 事業計画のシミュレーションはしっかりと

このように、不動産投資を行う際には必ずしも事業計画書を作成しなくて良いのです。特に、ワンルームマンション投資では物件概要があれば事業計画書の提出は不要です。ただし「事業計画」としてのシミュレーションはしっかりと確認しておくことが大切です。

5-2. 大切なのは書類作成ではなく「事業性の見極め」

不動産投資においては書類作成に重きを置くのではなく、限られた時間で立地・物件・不動産投資会社の選定を的確に行い、不動産投資会社の協力を得ながらスピーディーなシミュレーションを行うようにしましょう。そうすることで、より良い投資判断をタイムリーに行うことができます。大切なのは書類を作成することではなく、あくまでも「事業性を見極めること」です。

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