保険で資産運用すべきか?商品の種類や仕組みとメリット・デメリット

(写真=Monster Ztudio/Shutterstock.com)
(写真=Monster Ztudio/Shutterstock.com)

株式・債券・投資信託などさまざまな金融商品がある中、生命保険を活用して資産運用する方法もあります。例えば、銀行などの金融機関の窓口で販売されている商品もありますので、皆様の中にはご存じの方もいるかもしれません。

生命保険には解約した場合や満期のときに受け取れる解約返戻金や満期金などがない、または少ない、いわゆる「掛け捨て」の保険がある一方、解約返戻金や満期金が貯まっていく「貯蓄型」の商品もあります。

今回は、このうち貯蓄型の保険にはどのようなものがあるのか、代表的な商品の仕組みやメリット・デメリットなどについて紹介します。

(本記事は2019/01/23配信のものを2020/11/30に更新しております)

▼目次

  1. 貯蓄性のある保険商品の種類と仕組み
  2. 用途によって商品を使い分ける
  3. メリット・デメリットは?

1. 貯蓄性のある保険商品の種類と仕組み

貯蓄性のある保険商品として、以下の3つが挙げられます。

  • 「終身保険」
  • 「養老保険」
  • 「年金保険」

終身保険は一生涯の死亡保障、養老保険は一定期間の死亡保障を準備できる商品。終身保険は、契約者が解約をしない限り、保険会社が死亡保険金を受取人に支払うことが決まっている商品です。そのため、将来の保険金支払いのために「責任準備金」を積み立てていきます。

その金額の一部が「解約返戻金」となり、保険契約を解約した場合に契約者が受け取れる金額となります。保険は一定期間の死亡保障のほか、満期時に満期金が受け取れる商品です。保険会社が死亡保険金のほかに満期金を支払うために準備金を積み立てていきますので、養老保険の中にも解約返戻金が貯まっていきます。

年金保険は、一定期間保険料を積み立てて将来の決まった時期から一定期間(10年・15年など)年金が受け取れます。保険料を支払っている間の死亡保障は、死亡時までに支払った保険料相当額が戻ってくる商品が多く、保障としての機能はほとんどありません。年金を受け取っている間に死亡した場合、あらかじめ確定している受取期間のうち、受け取っていない期間部分の年金原価が遺族に支払われる商品が多くなっています。

2. 用途によって商品を使い分ける

貯蓄性のある生命保険は、用途や目的によって使い分けると効率的といえます。今回は、「貯蓄」「セカンドライフ」「相続」の3つの目的に活用できる商品の仕組みについて解説します。

(1)貯蓄

●終身保険(低解約返戻金型)

まず、一般的な終身保険とは解約するまでの死亡保障を確保しつつ、解約時には既払保険料よりも多くの解約返戻金を受け取れるように設計をした内容で加入します。同じ保障内容であれば保険料払込期間を短くすればするほど、解約時の返戻率は高くなる傾向にあります。払込期間は最低で10年から設定できる商品があり、返戻率を高くしたい場合には保険料払込期間を短く設定するのがおすすめです。

例えば、子どもが誕生してから10年間保険料を支払い、大学入学前に解約をして入学資金の一部などに充てることもできます。また、解約をする必要がない場合にはそのまま契約を継続すれば、その後の解約返戻金は徐々に増えていくでしょう。保険には学資保険のように満期がありませんので、「必要なときに解約をして資金を受け取る」「必要のない場合には据え置いて解約返戻金を増やす」といった自財性があります。

ただ近年は、予定利率の低下によって解約返戻率は低い水準となっています。予定利率が相対的に高い外貨建ての終身保険もありますが、解約時の為替によって円での受取額が変動する点は注意が必要です。外貨建ての商品の解約返戻金は円に換えて受け取るほか、外貨のまま受け取る方法もあります。そのため、解約返戻金を外貨口座に移し、「外貨のまま活用する」「必要に応じて円に換える」という選択肢もあります。

なお、「低解約返戻金型」とは、保険料払込期間中の解約返戻金を通常の終身保険よりも少なく設定する代わりに保険料を割安にしています。保険料払込期間終了後の解約返戻率を通常の終身保険よりも高く設定している仕組みの商品です。

(2)セカンドライフ

●年金保険

上記の終身保険はセカンドライフのための資金準備にも活用できますが、他に代表的なものが年金保険になります。一定期間、保険料の積み立てをして、60歳・65歳などから一定期間、決まった金額が毎年受け取れる商品です。

契約内容によって「個人年金保険料控除」も適用できます。ただし、この仕組みの商品も、予定利率の低下の影響で魅力のある商品はあまり多くはありません。一部の保険会社で外貨建ての商品が販売されていますが、こちらも受取時の為替の変動によって受取額が変動するリスクが伴います。

●一時払終身保険

まとまった資金準備ができる場合には、毎月・毎年保険料を支払うのではなく、契約時に一時金として一括で支払うことも可能です。一定期間経過後に解約をして資金を受け取ることができるのが一時払終身保険です。2018年現在は外貨建ての商品が主流で、金融機関の窓口でも多くの商品が販売されている傾向です。10年・15年など一定期間の積立利率が決まっており、円で支払った金額が外貨に換えられ、一定期間据え置かれます。

10年後・15年後の外貨での解約返戻金の額が確定している商品が多くなっています。その代わりに、一定期間内に解約をした場合には解約控除や市場価格調整率等の控除があり、加えて解約時の為替も影響してくるため、想定している金額が受け取れない可能性があります。このような商品に加入する場合には、一定期間解約をせずに据え置きができる金額から始めることが賢明だといえるでしょう。

また、契約時に支払った金額の一部をレバレッジ効果のある商品で運用し、将来の受取金額をより増やせる可能性のある商品もあります。一定期間経過後、外貨での元本は保証しつつ、運用実績によっては想定以上にお金が増やせる楽しみがある商品です。

(3)相続対策

上記の一時払終身保険は相続対策にも活用できます。商品によっては、職業の告知だけで加入することが可能です。健康状態に問題があり通常の生命保険には加入できない場合や高齢者の場合にも一時金を支払う資金準備ができれば選択肢が広がります。死亡保険金の「非課税限度額」の活用のほか、「現金を保険に換えることで受取人を指定し、渡したい人に渡したい金額を遺す」といった遺産分割対策も検討できるでしょう。運用実績によっては多くの資産を後世に残すことも可能です。

3. メリット・デメリットは?

以上、代表的な商品の概要を解説しました。株式・投資信託などと比較するとコスト面などの商品設計上、投資効率が低くなる可能性はあります。

3-1. 貯蓄型保険商品のメリット

「運用実績によって受取額が変わる商品を除き、決まった時期に決まった金額が準備できる」という点がメリットです。また、生命保険料控除・個人年金保険料控除・死亡保険金の非課税限度額などの控除枠を現状まだ活用していない場合には、メリットになるでしょう。

また、解約返戻金を一時金で受け取った場合、「既払保険料-解約返戻金-50万円」が「一時所得」となります。さらに、その2分の1の額が他の所得と合算されて税金がかかるため、「解約返戻金の額によっては税金がかからない」「実質の負担税率が低く抑えられる」といった点も大きなメリットです。

3-2. 貯蓄型保険商品のデメリット

それに対して、基本的に保険契約は長期間契約するものですので、契約から短期間で解約をした場合には想定していた金額が準備できないというデメリットがあります。

先にも紹介したとおり外貨建ての商品については為替リスクも考慮することが必要です。株式・投資信託などとは商品の仕組みそのものが違いますので、どちらが良い・悪いではありません。まずは、「いつまでにいくら位の資金準備が必要なのか」を考えることが重要です。「その必要な金額を準備するためにはどのような商品があるのか」を考えていけば、おのずとニーズに合った商品が見つかる可能性は高まるでしょう。

 

澤田 朗(さわだ あきら)

【プロフィール】
1971年生まれ、東京都出身。日本相続士協会理事・相続士・AFP。相続対策のための生命保険コンサルティングや相続財産としての土地評価のための現況調査・測量等を通じて、クライアントの遺産分割対策・税対策等のアドバイスを専門家とチームを組んで行う。設計事務所勤務の経験を活かし土地評価のための図面作成も手掛ける。個人・法人顧客のコンサルティングを行うほか、セミナー講師・執筆等も行う実務家FPとして活動中。

▲目次にもどる

eBook5冊同時ダウンロード

【2020年10月度人気記事ランキングトップ7】

NEXT 「貯蓄から投資(資産形成)へ」日米欧の資産における現金・運用割合の比較
PREV 投資前後に必須!未来の収支をみる“不動産投資シミュレーション”

関連記事