進む東京都心の再開発(13)
東京のなかで最も都市機能が集約する地域の一つに「新宿エリア」が挙げられます。新宿駅は1日の乗降客数が350万人を超える巨大ターミナルで、利用者数世界一の駅としてギネスにも認定されるなど、海外からの認知度が高い駅です。
新宿駅の西側はビジネス街として高層ビルが立ち並ぶ先進都市の街並みとなっていて、東京都庁や都議会など都市機能の中枢もあります。一方の東側はショッピング・エンターテインメントの街としての色合いが濃く、連日多くの人々が行き交っています。さらに、近年では新宿駅周辺において大規模なタワーマンションや高級マンションの建設がいくつも行われ、居住エリアとしての顔を見せるようにもなりました。
2016年には新宿駅南口で大きな動きがありました。新宿駅周辺に点在していたバスターミナルを集約し、「バスタ新宿」が2016年4月4日に開業しました。それに先立って「JR新宿ミライナタワー」が2016年3月25日に開業、ルミネが運営する駅直結の商業施設「NEWoMan」が低層部に入居しています。
このように「世界一のターミナル」としての地位を築きながらも発展し続ける街・新宿において、注目したいのが東新宿・歌舞伎町エリアです。このエリアでは2000年以降「東新宿駅」の誕生を契機として再開発が進められ、新宿エリアの新たな魅力が生み出されています。
(本記事は2018/11/19配信のものを2020/05/06に更新しております)
東新宿駅は2000年12月、大江戸線の駅として開業されました。2008年6月には副都心線の全線開通に伴い乗換駅となりました。同時に副都心線は東武東上線および西武池袋線(西武有楽町線経由)との相互直通運転を開始し、さらに2013年3月には東急東横線との相互直通運転も開始されました。そのため、埼玉方面、横浜方面などからのアクセスが飛躍的に向上し、東新宿駅の年間乗降客数は2009年に約590万人であったのが、2014年には約1,270万人と2倍以上に増加し、2018年には約1,560万人とさらに2割以上も増加しています。
加えて、東新宿駅の発展に寄与しているのが、2012年に行われた「新宿イーストサイド」の開発です。新宿イーストサイドは東新宿駅前の約3.7ヘクタールを対象とした大規模開発プロジェクトで、駅直結のオフィス棟「新宿イーストサイドスクエア」や、総戸数761戸の高級タワーマンション「パークハビオ新宿イーストサイドタワー(現:コンフォリア新宿イーストサイドタワー)」などが建設され、大きな注目を集めました。
新宿イーストサイドスクエアは、延床面積約17万平米の大規模なオフィスビルであり、斬新な外観デザイン、CO2削減など環境にも配慮した構造となっています。また、外構の40%を緑化した回遊空間では、芝生広場、「和」テイストの広場、水辺の広場といった個性的な広場などがシームレスに繋がるとともに、建物の内と外、地上と地下が曲線的なプロムナードや階段で繋がっていて、回遊性の高いランドスケープが実現されています。
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歌舞伎町は靖国通りと職安通りの間に位置する、東京のなかでも特色溢れるエリアです。「眠らない街」として昼夜を問わず多くの人が行き交い、新宿ゴールデン街に漂う昭和の風情も感じられます。また、コリアンタウンとして有名な新大久保に近く、新宿区在住の外国人が多いこともあり、新宿区役所は国籍を問わず多様な人々に利用されています。
近年では東新宿駅の開業や、新宿区が推進する「歌舞伎町ルネッサンス」の取り組みにより、従来のダークなイメージが払拭されつつあり、訪日客をはじめ観光・行楽目的の人々が多く訪れるエリアへと変貌を遂げています。新宿区はセントラルロードやシネシティ広場の整備を行い、区立大久保公園などとともに各種のイベントを開催することで、2015年には年間約40万人を集めることに成功しました。
さらには、歌舞伎町のシンボルといえる大規模複合施設のリニューアルや、歌舞伎町を利用する人々のアクセスを助ける西武新宿駅のリニューアルが進められていて、「世界的エンターテインメントの拠点」としての魅力がよりいっそう高まると期待されます。
歌舞伎町の代表的な施設であった「新宿コマ劇場」は、長らく「演歌の殿堂」として広く認知され親しまれていましたが、跡地の再開発を見越して閉館・解体されることとなりました。そして新宿コマ劇場の跡地には2015年4月、歌舞伎町と共に生まれ変わるエンタメシティのシンボルとして「新宿東宝ビル」が誕生しています。8Fのテラス部分に「ゴジラヘッド」を設置したことも有名で、ホテル、映画館、ショップ、レストラン、アミューズメント施設が入居する複合施設として連日賑わいをみせています。
歌舞伎町で今後行われる再開発として注目されているのが、「歌舞伎町一丁目地区開発計画」です。これは2014年に閉館し解体された「新宿TOKYU MILANO」跡地を再開発するもので、約4,600平米の敷地に地上40階・地下5階、高さ約225メートル、延べ面積約85,800平米の複合ビルを建設する計画となっています。
用途としては宿泊施設をはじめ、多様な大衆娯楽文化を世界に発信するステージとなる劇場・ライブホール・映画館などの複合エンターテインメント施設、レストランなどを備えた、まちの核となる新たな都市観光拠点となる見通しです。2019年7月に着工しており、2022年度に竣工予定となっています。
※「新宿TOKYU MILANO 再開発計画」新宿区
なお、開発計画の着工までの跡地活用として、「VR ZONE SHINJUKU」が期間限定でオープンしています。最新のテクノロジーを体感できるレジャースポットとして、若年層を中心に注目を集めています。
また、「歌舞伎町一丁目地区」の向かいに位置する西武新宿駅のリニューアルも進められています。西武新宿駅はJR新宿駅から600メートルほど離れた位置にありながら、城西エリアや多摩地区、埼玉県西部から新宿の街を結ぶ交通の要所として、1日約18万人に利用されています。
このリニューアルでは、元々は2020年に開催予定であった東京オリンピック・パラリンピックを見据えて駅の美装化、訪日外国人向け観光案内所の設置、共通案内サインの整備が進められ、2019年3月に工事が完了しています。
一方、JR新宿駅において課題も残されています。現状、JR新宿駅の東西を往来するためには、新宿駅の北側もしくは南側を経由しなければなりません。この不便な状況を受け、新宿駅では2020年夏の供用開始に向けて、東西自由通路の整備が進められています。これは新宿駅構内の北通路であった部分を利用し、幅員17メートルを25メートルに拡張、改札外の東西自由通路とするものです。
この東西自由通路の整備により、新宿駅東西エリア間において往来の自由度が高まり、東側・西側ともによりいっそう活性化することが期待されます。東西自由通路の整備は、2020年夏(元々は東京オリンピック)以降の新宿エリアにおける持続的な発展にとって重要な要素の一つと言えます。
以上、東新宿・歌舞伎町エリアの再開発と、今後の新宿駅周辺における持続的な発展可能性について見てきました。「世界一のターミナル」新宿駅周辺では、東側・西側ともに特色ある街並みを形成しつつ、エリア間の往来を活性化することで、東京オリンピック後を見据えたさらなる発展を目指しています。ゆるぎない世界一の地位を武器に、新宿は今後も東京を代表する街であり続けると言っても過言ではないでしょう。
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