老後資金の確保に向けて、度々比較されることのある「個人年金保険」と「不動産投資」は、運用という側面では同一ですが、その仕組みや特徴は大きく異なります。今回は、両者の役割と違い、さらにはメリットとデメリットについて理解していきましょう。
(本記事は2017/09/13配信のものを2020/06/07に更新しております)
個人年金保険とは公的年金と同様、現役時代に保険料を支払い、高齢者になってから受け取る形式の保険です。民間保険会社が販売しており、「保険」という名がついていますが、預けたお金が60歳や65歳など契約時に定めた年齢に達した際に支払われるものであり、基本的には保証が付いているわけではありません。
公的年金との大きな違いはその積立方式です。公的年金は、納めている人がその時の高齢者の年金分を負担し、将来自分が高齢者になったときには、その時の現役世代の人に受取分を負担してもらうという「賦課(ふか)方式」を採用しています。
一方、個人年金保険は、現役時代に「将来の自分」に向けて積立てをする方式となります。運用結果で受取額が左右されることはあっても、公的年金のように少子化を原因とした受取不安が発生することはありません。つまり、個人年金保険は、積立てに近い位置付けの運用方法になります。
また個人年金保険と一概にいっても、積極的に運用していくものと、元本保証を優先して着実に貯蓄を進めていくものの2種類があります。一定年齢に達した後の受取り方法は、一括、分割どちらでも選択が可能です。
一括受取りの場合は、退職金への上乗せとして、分割受け取りの場合は、公的年金の上乗せと考えて加入される方が多いようです。
不動産投資には様々な手法、取り組みがありますが、一般的なものは不動産を購入し入居者に貸し出し家賃収入を得る投資手法です。購入する不動産はマンションの1室からアパート・マンション一棟、さらにはビルや駐車場まで多用な不動産が投資対象になります。
多くの場合は金融機関から融資を受けて購入することになり、入居者より受け取った家賃から、融資の月額返済分を差し引いた金額が粗利と考えます。
近年、単身者世帯数が増加している都心における区分所有のワンルームマンションなど、賃貸需要が高い物件を購入したマンション経営の場合、長期に渡り安定した家賃収入が期待できます。逆に想定利回りが高くとも賃貸需要の低い地方、エリアの物件を購入した場合、想定していたより入居率が低い、家賃を下げないと入居が決まらないなど、不安定な運用を強いられることにもなりかねません。
基本的に不動産投資は、融資の返済が完了した後も建物が存在する限り、家賃の増減は含みつつも、長期に渡り、家賃収入が見込めることから、老後の安定した生活資金、私的年金と比喩されることがあります。
ともに老後の生活資金として多くの人が取り組む個人年金保険と不動産投資ですが、それぞれ異なる特徴があります。
まず、個人年金保険は老後の安定した生活資金の確保を目的に加入する方が多数だと思われます。預けた資金を運用することにより資産運用としての側面もありますが、実際は自身が現役時代に積み立てたお金を一定の年齢に達した際に受け取っているにすぎません。
また、数年、長い場合は数十年先に積立てた資金を受け取ることになります。受け取る時期の物価上昇にはリンクしておりませんので、数年から数十年の間に世の中が大きくインフレになってしまった場合には実質の受け取り金額の価値は目減りしてしまいます。
一方、不動産投資の特徴ですが、まず、個人年金保険が自身のお給料や預貯金から捻出しているのに対して、資金の大部分を金融機関の融資で賄うことが可能です。返済については入居者がいる限り、その大部分を家賃収入で返済します。(つまり自身のお給料や預貯金ではなく入居者のお給料や預貯金)また、さらに融資の返済期間が終了した後も入居状況にもよりますが、家賃収入は返済にまわすことなく受け取れます。売却して現金化することも見込めます。
同じく老後資金の確保として人気のある個人年金保険と不動産投資ですが、性質は大きく異なるものです。どちらが適しているかはそれぞれの考え方かもしれませんが、特に都心のワンルームマンションを対象としたマンション経営のような不動産投資は、上述のように数多くのメリットがあったりもします。
もちろん不動産投資にリスクがない訳ではありません。しかし、長い人生の中の資産形成の1つとして、特にもし今あなたが30~40代であるならば時間的な優位性をフルに使えることからも、検討してみる価値は大いにあるのではないでしょうか。
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