マンション投資を検討していろいろと調べているうちに「新築プレミアム」という言葉に遭遇したことはないでしょうか。「これって何?」と感じた方は、「不動産の価格がどうやって決まるのか」という部分にも興味を持っているかもしれません。不動産価格には厳然とした相場や価格決定プロセスがあり、ここで解説する新築プレミアムも不動産の価格を決める重要な要素のひとつです。
新築プレミアムのことが理解できると、新築マンションだけでなく、築浅・中古マンションも視野に入れて投資物件を検討できます。そうすれば、素晴らしいマンション経営に繋がる可能性が高まりますので、その方法も含めて解説します。
(本記事は2019/02/20配信のものを2020/05/22に更新しております)
そもそも「新築」とは、建物が完成してから1年を経過しておらず、かつ誰もまだ使用していない状態の物件のことです。完成後1年未満であっても、その物件に誰かが入居すれば「中古」扱いとなります。また、完成してから誰も住んでいなかったとしても、完成後1年を経過すれば新築ではなく「未入居」として扱われます。
新築マンションが分譲されたときの価格と、その新築マンションに誰かが入居して「中古」になった瞬間以降の価格を想像してみてください。いくら築年数が浅いマンションであるとしても、「すでに中古となった物件が新築分譲時の価格で売れるとは考えにくい」と感じるのではないでしょうか。
仮に、3,000万円で買った新築マンションをすぐに中古マンションとして売却して、その価格が2,700万円だったとします。この場合、価格差300万円が新築プレミアムです。
これと同じことを、自動車でもイメージしてみましょう。買ったばかりのピカピカで不具合のない新車であっても、それを誰かが一度購入して再び売りに出すときには中古車市場での流通となります。高年式なので売買価格は高くなりますが、それでも新車時の価格と同じにはなりません。これは言わば、中古車市場における「新車プレミアム」です。
私たち日本人の国民性として、新しいもの(特に新品)に価値を見出す傾向があります。賃貸住宅の情報を見ても新築マンション物件はそのことが大きくアピールされていますし、築浅物件であっても同様です。「新品=良いもの≒希少性」「まだ誰も使っていない=処女性」という価値観が「新築時はその分価格が高くても仕方ない」という考えにつながり、それが新築プレミアムという形になっていると考えられます。
「新品=良いもの」という価値観を不動産投資に投影すると、「新築マンションのほうが入居者も集まりやすく投資価値が高いのではないか」というロジックになります。確かに「新築」と記載できればそれだけで印象が良くなりますし、「SUUMO」「LIFULL HOME'S」などの賃貸物件検索ポータルサイトでも「新築」の項目で絞り込むことができます。
理論的には、新築の物件は賃貸マーケットにおいて、多少高めの家賃でも入居者が付くという特徴があります。一見、ポジティブなことですが、このような新築プレミアムは数年の内に剥がれることになります。つまり、新築で購入した場合、数年間の内に新築ならではのプレミアムな家賃設定が低下する懸念があります。
一時的に高い「新築プレミアム」の賃料で入居者に貸し出しているとするならば、入居者が退去した後は同じ賃料で貸し出せない可能性が高まります。すると、所有した後の「マンション経営」という視点で考えたときに、安定性が失われてしまいます。
特に、将来に備える資産形成を目的に、中長期を前提としたマンション経営を検討する際には「安定性」が重要です。新築にしろ中古にしろ「賃貸管理会社がどのように賃料設定を行っているか」という点を加味して投資判断を行わなければなりません。
また、購入時の価格も「新築プレミアム」で高いケースが多く、もし新築時と築1年で入居者が入れ替わらず、同じ賃料収入なのであれば、当然利回りは低下します。新築は総じて利回りが低いといわれるのは、この新築プレミアムもおおいに関係しているというわけです。
ここでひとつ、ある考えが生まれてきませんか。それは「新築から一度売りに出され、新築プレミアムがなくなった築浅の中古マンションに投資すると良いのでは?」という考えです。
これは間違いではなく、実際にこうした新築プレミアムがそぎ落とされた築浅・中古マンションを好む不動産投資家も多くいらっしゃいます。例えば、同一の物件が売りに出された際、以下のように新築と築浅(中古)で条件が異なるとしましょう。
1つ目は新築時の条件で、2つ目は新築プレミアムがそぎ落とされた「中古」マンションとしての条件だとして、この両者の賃料収入に差がなければ、取得価格が300万円安い2つ目の条件で不動産投資に参入したほうがキャッシュフローに余裕が生まれやすいという結論になります。
これだけを見ると「新築マンションを購入するのはいったいどういう人なのか?」という疑問を持つ人もいるかもしれません。もちろん、新築マンションであれば、「長期間の融資を受けやすい」「設備の不具合が当面発生しにくい」「品確法における主要構造部等の10年保証」などのメリットがあるため、新築を選択する方もいらっしゃいます。
ちなみに、新築から年数が5年~10年、さらには20年、30年と経過しても、それほど築浅・中古マンションの資産価値や収益性が下がっているとは限りません。入居者目線で考えたときに、最新の設備よりも立地に関する項目が重視される傾向にあり、築年数や設備、専有面積などは妥協されやすいという調査結果が出ています。
また、全国賃貸住宅新聞が毎年発表している「入居者に人気の設備ランキング」2018年版において、5位以内に下記の設備がランクインしています。
【参考記事】入居付けに有利!入居者が選ぶ設備10選(シングル版)
2019年現在で築20年以内、つまり2000年以降に建てられたワンルームマンションであれば、これらの設備はほとんど整っている物件が多い状況です。また、入居者の入れ替わりで温水洗浄便座を設置するなど、後から付け加えられる室内設備もあります。
したがって、新築だから、築浅・中古マンションだからといって入居者確保に違いはそれほどないのが実情です。むしろ、立地を重視せずに投資用マンションを購入するほうが、はるかにリスクが高いと考えられます。
このように考えると、好立地の物件という前提はあるものの、入居者確保という視点では新築マンションでも築浅・中古マンションでも、どちらでも良いことになります。どちらを選択するかは、不動産投資の目的・価値観、立地条件や設備といった築年数以外の要因、投資家の資金状況と購入に必要な資金のバランスなど、市場環境や個々人の置かれた状況によって変わってきます。
さて、これまでの中で「新築プレミアム」についてある程度ご理解いただけたのではないでしょうか。もちろん、マンションの販売業者によって新築プレミアムの乗り方も違ってくるでしょうし、物件価格や利回りだけでは判断できない、将来性、安定性、資産性といった視点も大切です。特徴を知り、自分には新築マンションが合うのか、もしくは築浅・中古マンションへの投資が合うのかを見極めると良いでしょう。
2021年10月現在、不動産投資で人気が高い東京都心の分譲ワンルームマンションに関して、築浅・中古ワンルームの販売戸数が非常に少ない状況です。一方で、金融機関の融資スタンスや、自分自身の信用力というのは変動しやすく、物件を選びすぎれば機会損失につながります。
こういった市況をふまえると、実は新築マンションも含めて検討した方が、将来の資産形成につながる物件をタイミングよく購入できる可能性が高いといえます。より良いマンション経営を実現するために「いかにして早くスタートを切るか」を心がけるようにしましょう。
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