資産形成・運用
2019/02/18

様々な負担増に備えるための資産運用

(画像=マンション経営onlineより)
(画像=マンション経営onlineより)
「貯蓄から投資へ」という言葉を聞くようになってから長い時間が経過しています。平成15年度の税制改正で証券税制が大幅に改善・優遇されたことによって、投資に対するハードルが従来よりも下がったといえますが、日本の家計の金融資産における株式・投資信託・債券等の金融商品の割合は、欧米と比較して低くなっています。

それに対して、今後は様々な負担増が家計に影響を与えることも考えられます。資産運用を行うことで、その負担増をカバーすることもできますが、今回は今後の家計にどのような負担が増えてくるのかを考えたうえで、資産運用の必要性についてあらためて考えていきたいと思います。

消費税増税、インフレ‥‥、様々な負担増が待っている?


ご承知の通り、2019年10月1日より消費税が10%に引き上げられる予定となっています。軽減税率やポイント還元、キャッシュレス制度の導入等まだ内容が不透明な部分がありますが、予定通り進めば、1年以内に世の中の多くの商品・サービスの価格が2%上がることになります。

また消費税による価格上昇以外に、物価そのものも上昇傾向にあります。政府・日本銀行が進めているいわゆる「ゼロ金利政策」は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指しています。これは「消費者物価指数(生鮮食品を除く)」が前年同月と比べて「安定的」に2%を超えるまで、ゼロ金利政策を継続するという政策になります。

実際に消費者物価指数は、2%まではいかないものの、前年と比較して上昇傾向にあります。さらに原材料費や人件費の高騰等による価格上昇も考えられますので、この2%のインフレ目標が達成すれば消費税の引き上げと合わせて、商品やサービスによっては価格が従来よりも大きく上昇することも考えられます。

社会保障については、その給付費が年々右肩上がりで増えています。医療・介護・年金・福祉等の給付費は、企業・個人等が支払う保険料の他、公費(税金)負担の割合も大きくなっています。今後、少子高齢化がさらに進み社会保障の給付費が増えれば、公費や保険料負担が増えていくとともに、医療・介護等のサービスを受ける際の負担増も考えられます。

実際に2018年8月「高額療養費制度」の見直しが行われ、70歳以上で一定の所得がある場合には限度額の上限が引き上げられ、医療機関に支払う医療費等が高額になった場合の自己負担額の上限が増えています。高齢者であっても所得が一定以上ある場合には、現役並みに費用負担を求める見直し内容となっています。

公的年金は何歳から受け取れる?受取額は‥‥


それに対して、社会保障の一つである年金制度については、将来の支給開始年齢や給付額が不透明となっています。支給開始年齢については67歳・68歳に引き上げることも財務省の「財政制度等審議会 財政制度分科会」の中で仮の話としてではありますが議論されました。また給付額は「マクロ経済スライド」という仕組みをもとに調整され、物価・賃金が下がった場合にはその下落率分給付額も減りますが、上がった場合にはその上昇率から一定の調整率を引いた率の分だけ給付額が増えることになり、今後の物価や賃金の上昇・下落率によって将来の受け取れる年金額も変わってくることになります。

男性は昭和16年4月1日以前、女性は昭和21年4月1日以前に生まれた方は、公的年金の満額支給開始年齢が60歳でした。それに合わせて退職後の生活設計を考えることができましたが、今後支給開始を迎える世代については現状では65歳からでないと満額が支給されず、場合によってはそれより先からでないと公的年金が受け取れないことも考えられます。

何もしないことがリスクになる時代に


このように民間の商品やサービスを購入する場合には、今よりも負担が増えていくことが考えられます。さらに公的な制度についても、保険料とともにサービスを利用する場合にも負担が増え、給付を受ける場合には金額が減ったり給付年齢が遅くなったりする可能性があります。

また、増税・インフレ等によって商品・サービスの価格が上昇した場合、預貯金等の低リスク資産は何もしなければその額面は減ることはありませんが、実質的な価値は下がってしまいます。日々の生活には流動性の高い資産も必要ですが、その割合は不測の事態にも対応できる緊急予備資金を含めて必要最低限にとどめ、それ以外は「貯蓄から投資へ」シフトしていくことで、様々な負担増に備えるとともに自身の資産を守ることができるのではないかと考えます。

澤田 朗(さわだ あきら)
【プロフィール】
1971年生まれ、東京都出身。日本相続士協会理事・相続士・AFP。相続対策のための生命保険コンサルティングや相続財産としての土地評価のための現況調査・測量等を通じて、クライアントの遺産分割対策・税対策等のアドバイスを専門家とチームを組んで行う。設計事務所勤務の経験を活かし土地評価のための図面作成も手掛ける。個人・法人顧客のコンサルティングを行うほか、セミナー講師・執筆等も行う実務家FPとして活動中。 

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