あらゆる投資は"情報"がその成否をわけるカギを握っています。特に、不動産投資は、限られた情報のなかから意思決定をしなければならないため、質の良いタイムリーな情報をいかに入手できるかが、投資家として成功を左右する重要なポイントです。
不動産投資を検討し始めたばかりの方は、インターネットで情報を調べ、不動産会社に問い合わせようとしている段階かもしれませんが、投資する物件や、購入後のマンション経営に関する情報はどのようにして入手すれば良いのでしょうか。
不動産会社に物件資料を請求すると入手できるのが、「マイソク」と呼ばれる物件概要です。ただし、何となく眺めているだけでは、得られる情報は少なくなってしまいます。ポイントを明確にしたうえでマイソクの情報を確認していくことで、記載されている情報の奥行きが広がり、有益な情報源となるのです。
(本記事は2018/12/07配信のものを2021/6/27に更新しております)
そもそもマイソクとは、不動産会社が作成する簡易的な図面のことで、売買においても賃貸においても活用されています。具体的には、物件の概要、間取り図、地図など、その物件を評価・判断するために必要な基本情報が掲載されています。名前の由来としては、不動産情報等の資料を作成・配信している会社名からきているのですが、今では資料そのものをマイソクと呼ぶようになっています。
マイソクと似ているのがチラシです。土地や建物の売り出し情報など、不動産に関するチラシを自宅の郵便受けなどで目にしたことがある方も多いでしょう。マイソクとチラシの違いは、マイソクが不動産会社への周知を目的に作成されるのに対し、チラシは一般顧客への紹介を目的に作成されるという点です。
多くのマイソクは文字情報や間取り図がメインで、物件画像などが掲載されていないこともあります。そのため、物件検索サイトの掲載情報などと比べつとやや見づらいと感じることがあるかもしれません。
ただし、物件のアピールポイントを大きくしたり、外観や室内の画像を掲載したり、周辺環境を詳しく紹介したりするなど工夫している不動産会社もあります。一般顧客に紹介する資料としてマイソクをそのまま見せる不動産会社も多いため、そのようなシーンを想定してチラシの役割を兼ねたマイソクを作成するのです。
また、インターネット上に掲載されている情報のなかには「先物」、つまり他の不動産会社が情報元(「元付」)である場合があります。先物を扱う不動産会社は、元付業者が作成したマイソクの情報をもとにして掲載登録を行います。元付のマイソクに記載されている情報のほうが「一次情報」として、より信頼のおける情報といえます。
ちなみに、インターネット掲載をはじめとした不動産広告においては、「宅地建物取引業法」「景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)」「不動産の表示に関する公正競争規約」に従わなければなりませんが、もちろん情報元となるマイソクにおいても、正確な情報を法令に即した方法で記載することが求められます。
では、不動産投資を検討する方がマイソクの情報を参考にするうえで、どこに着目しておけば良いのでしょうか。また、どのような点に注意すべきなのでしょうか。その4つのポイントを見ていきます。
物件価格を見ることで、どのくらい資金を用意すべきなのかがわかります。注意したいのは、物件価格のほかに別途「諸費用」が発生することです。代表的なものに仲介手数料があります。仲介手数料は宅地建物取引業法において上限額が定められており、物件価格が400万円以上の場合には「物件価格×3%+6万円+消費税」となっています。仲介手数料のほかにも、司法書士費用、不動産取得税、印紙税などで5%~8%程度の諸費用が必要となることが一般的です。
融資を受けずに購入する場合には当然、物件価格に加えて諸費用を含めた現金が必要となります。融資を受けての購入を検討する場合、どこまでローンが組めてどれだけ自己資金を用意すべきなのかを確認することが大切です。ちなみに、最近の融資環境をみると、都心の区分マンションなどは「100%+諸費用ローン」が利用できるケースが増えており「自己資金ゼロ」で購入できる可能性もあります。
こういった融資に関する情報はマイソクに記載されていないことが多く、金利や属性審査などの融資条件も毎月のように変化しています。どの金融機関の提携ローンが利用できるのか、現在はどのような条件で利用できるのか、不動産会社に随時問い合わせてみるとよいでしょう。
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投資物件を購入する際には、賃貸状況に関する情報から収益性を判断することになります。物件の現況が「賃貸中(オーナーチェンジ)」であれば、購入後すぐに賃料収入を得られることになります。一方「空室」の物件を購入する場合、早急に入居者確保を進められるよう賃貸管理会社と連携しておく必要があります。
また、マイソクには現況賃料や年間想定収入が記載されていることもありますが、相場と照らし合わせて著しくかけ離れていないか確認しておくことが大切です。たとえば、新築後同じ入居者がずっと入居している場合には、新築プレミアムの賃料である可能性に注意が必要です。購入後、大幅に賃料が下がるようなことがあれば、安定したマンション経営を行うことはできなくなります。
区分所有マンションのマイソクには、管理費・修繕積立金が記載されています。管理費・修繕積立金とは、区分マンションの所有者が管理組合に対し毎月納めるもので、管理費は共用部分の清掃など日常的なメンテナンスの費用として、修繕積立金は定期的に行う建物全体の大規模修繕における資金として使われます。
一棟物件の場合には、マイソクに管理費・修繕積立金に関する記載がありませんが、たとえ記載されていなくても発生しないと考えるのは適切とはいえないでしょう。当然、一棟物件であっても管理費・修繕積立金に相当する金額を加味したうえで収益性を見極めなければなりません。とくに、大規模修繕を行うための費用は非常に高額となります。計画的に準備しておかなければ資金不足で大規模修繕を実施できなくなり、結果として賃料収入を維持できないという失敗につながる恐れがあります。
マイソクには必ず「取引態様」が記載されています。取引態様とは、不動産会社がどのような立場で物件の取引に参加しているかを示すもので、「売主」「媒介(仲介)」「代理」といった記載がなされます。この中でとくに注目しておきたいのが「売主」の物件です。
マイソクに記載の「取引態様」が「売主」の場合には仲介手数料がかからないため、その分を差し引いて媒介や代理の物件と比較することができます。
たとえば2,000万円の売主物件は、仲介手数料に相当する約70万円を差し引いて考えることができます。また、融資を受けて物件を購入する場合、仲介手数料に関しては自己資金から支払わなければならないケースがほとんどですが、売主物件であれば仲介手数料に相当する分の手持ち資金を温存できることもメリットです。
さらに、売主物件は「瑕疵担保責任」においてもメリットがあります。瑕疵担保責任とは、売買の対象物件に「隠れた瑕疵(見えない部分の構造上の欠陥など)」があった場合、買主が売主に対して契約解除や損害賠償の請求を主張することができ、売主はその責任を負わなければならないというものです。
宅地建物取引業法においては、不動産会社(宅地建物取引業者)が売主の場合の瑕疵担保責任についての規定があり、売主が瑕疵担保責任を負わないとする特約は「引渡しの日から2年以上」とするよう定められています。一方で、個人から委託を受け売却活動を行っている仲介物件に関しては、売主が瑕疵担保責任を負わないとする特約も可能です。このことから、一般に売主物件は買主にとって購入後の安心感が高いとされています。
2020年4月1日より施行となった改正民法では、従来の瑕疵担保責任は「契約不適合責任」として、債務不履行責任に一元化されました。一般的には民法改正により、不動産売買契約において売主に課せられる責任の範囲が広がっていると考えられます。
以上のようなメリットがあるため、投資物件選びにおいては利回りの大小より「売主物件かどうか」に注目する方も多くなっています。とくに少ない自己資金で始めたい方、不動産投資初心者で安心して始めたい方は、売主物件を中心に検討すると良いでしょう。もっとも、売主物件を購入する際には、売主の不動産会社が信頼できる会社なのかどうか見極める必要があることは言うまでもないでしょう。
【参考記事】
選んではいけない不動産会社とは?選ぶべき不動産会社とは?
マイソクは物件購入時だけでなく、購入後にも活用する機会が訪れます。それは、入居者募集を行うときです。入居者募集用のマイソクは、賃貸管理会社が作成し、物件周辺や沿線の不動産会社へ周知活動を行う際、賃貸物件を探している方へ紹介する際の物件資料として利用されます。
当然、マイソクから伝わってくる情報が魅力的であれば、入居検討者の内見や入居申込を得られる確率が高まります。反対に、マイソクから物件の魅力が伝わらなければ、たとえ条件の良い物件であっても入居者確保の確率が下がってしまいます。
入居者募集に力を入れている賃貸管理会社であれば、ほぼ間違いなくマイソクの重要性を理解しています。場合によってはオーナーの要望を取り入れながら、魅力が伝わるマイソク作りをしてくれることもあります。実際に入居者募集で利用しているマイソクを購入前に見せてもらうのも、賃貸管理会社選びの一つの判断材料となるでしょう。
【参考記事】
「客付け」に強い管理会社の見極め方!不動産投資で空室ゼロに向けて
マイソクは、購入時にも入居者募集時にも、物件に関する情報伝達ツールとして欠かせない存在です。近年ではインターネットやスマートフォンといったデジタル普及により、紙媒体の優位性が落ちていると感じる方も多いでしょう。ですが不動産業者間では、依然として紙媒体でのアナログなやりとりも多いものです。現物資産を扱っていることから、物への愛着が強いのかもしれません。
もっとも、マイソクはあくまで物件概要をまとめた資料で、物件に関する全てが記載されているわけではないことに注意しておきましょう。必要に応じて、調査報告書や修繕履歴、現況写真などをもとに不動産投資会社から説明を受け、参考にすると良いでしょう。時間が許せば現地へ足を運び、物件や周辺環境、街全体を見ておくのもおすすめです。そうすれば、マイソクやインターネットでは知ることができなかった情報を発見でき、購入判断だけでなく購入後の入居者募集にも生かせることでしょう。
不動産投資で成功する秘訣は「情報収集力(行動力)」と「情報分析力(リテラシー)」です。行動力に基づいた情報収集力があれば、有益な情報を入手することができ、チャンスも広がるでしょう。ただし、情報量が多ければ多いほど良いとは限りません。
情報を有益なものとするために要求されるのが「情報分析力」すなわち「リテラシー」です。情報分析力(リテラシー)があれば、数多くの情報から本当に必要なものだけを選別し、投資判断に活かすことが可能となります。それが結果的に、中長期的な投資結果に大きく影響を及ぼします。
そして、不動産投資に有益な情報は、インターネットやスマホアプリなどで得られる「デジタル」の情報だけではありません。セミナーや個別相談などで不動産投資会社と接点を持つからこそ、明文化・資料化されていない物件・立地の魅力、不動産投資ローンを最大限活用する方法、購入後の賃貸管理まで含めて責任を持つ姿勢・熱意など「アナログ」な情報が得られます。
デジタルが主流となった現代でも、アナログな側面まで意識できる広い視野を持っておくことが、不動産投資で成功する一つの要素と言えます。
【参考記事】
"デジタル"時代にこそ考えておきたい、不動産投資を成功に導く"アナログ"情報収集まとめ
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